【江連忠のPROJECT E】Vol.235 トム・ワトソン「大胆なフットワークとアッパーブローが生む高弾道ボール」
片山晋呉や上田桃子など、数多くのトッププロを世に送り出してきた江連忠が、自身の経験をもとに、レジェンドのスウィングに宿った“本質”を語る!
TEXT/Yumiko Shigetomi PHOTO/Hiroyuki Okazawa、小社写真部
●今月のレジェンド●
トム・ワトソン
1949年米国生まれ。PGA38勝(メジャー8勝)の“新帝王”。59歳で全英オープンのプレーオフに残る(結果2位)など長く活躍した
ハイボールで飛ばすために
必要な動きだった
ワトソンの師匠はバイロン・ネルソンでしたが、帝王ニクラスのアッパーブローのハイボールヒッターという遺伝子も受け継いでいてまさに「アメリカン打法の申し子」という印象でした。
当時のクラブとボールで高弾道かつ飛距離の出る球を打つには、ヘッドを下から上に振り上げるように振る必要がありました。
そのためにハイトップ、ハイフィニッシュのタテ振りでアッパーブローという動きになるわけですが、ワトソンはさらに大きなフットワークも特徴的。トップでは左ひざをボールの右側まで入れて、インパクトからフォローでは右ひざをボールの左側に入れていくニーアクションを入れることで、下半身の強いパワーを引き出しています。そしてトップでのヒールアップから切り返しでのヒールダウンは再現性の高いリズムを生むという側面もあります。
現代の選手はここまで大きなフットワークを使う人は少なくなりましたが、脚でリズムを刻むことで上体の無駄な力みが取れるので、リズムが安定しないアマチュアにはとても参考になる部分です。
ワトソン’s Swing
頭を動かさずに右ひざを送る
インパクト以降に右ひざをターゲット方向に送り込むことでフォローが大きくなって弾道は高くなる。ただしこのときに頭はボール後方に残しておくことが大事。頭が残らず左に動いてしまうと球は上がりにくい
ワトソンの系譜を継ぐのはこの選手
池田勇太
大きなフットワークでリズムを取る
トップで左ひざが右ひざに寄りながらヒールアップし、フォローでは右ひざが左ひざに寄っていく。フットワークが大きくて上半身の動きがなめらかな部分がワトソンと共通している。力みがなくてリズムがいいため、好不調の波が少なく選手生命も長くなる。
江連忠
1968年生まれ。東京都出身。高校を卒業して渡米し、ミニツアーを転戦しながらジム・マクリーンに師事したのち帰国。日本のプロコーチ第一人者となり、片山晋呉や上田桃子を賞金王に育て上げた
月刊ゴルフダイジェスト2023年5月号より