Dr.クォンの反力打法 Vol.33 骨盤の自然なスライドを押さえつけないで!
今回のテーマは「骨盤の運動」について。スウィング中の骨盤の動きには、水平回転・前後・左右への傾き運動と、上下・左右の動きの2種類があり、それが体の回転にリンクスしているとクォン教授。さっそく詳しく聞いてみた。
【語り手/クォン教授】
ヤン・フー・クォン。テキサス女子大学教授。専門はバイオメカニクス。生体力学的に理に適ったスウィングを研究。教え子にタイガーの元コーチ、クリス・コモらがいる
【聞き手/吉田洋一郎プロ】
よしだ・ひろいちろう。D・レッドベターをはじめ、世界の名だたるコーチのもとを訪れ、最新理論を直接吸収。日々探究・研鑽に余念がないゴルフスウィング研究家
クォン 現代のゴルフの教えでは、骨盤の動き、とくに上下の動きを抑える傾向にあるね。
吉田 たしかに、骨盤の動きを最小限にするように教える理論は多いです。
クォン だが、エリートゴルファーの骨盤の動きを分析してみると、骨盤の上下の運動はとても重要であることがわかった。実際、骨盤の動きのなかで、上下の動きだけが唯一ヘッドスピードと明確な相関関係があることがわかっている。そして前回も言ったように、骨盤の上下の動きはひざの曲げ伸ばしによって生じる。
吉田 スウィングにおいてひざの曲げ伸ばしが重要だと言っていたのはそのためだったんですね。骨盤の左右への動きについてはどうですか。
クォン 左右への動き、すなわちスライドは、骨盤の水平回転などの角運動の結果、“自然”に生じるものにすぎない。
吉田 骨盤が右に回ると同時に右に、左に回ると同時に左へ、わずかに動くという感じでしょうか。
クォン そう。その自然な範囲のスライドが、左右への体重移動を可能にし、十分な地面反力を生む手助けとなる。だが、骨盤のスライドが過度になると、いわゆる「スウェイ」になってしまう。とくに現代のスウィングでは、ダウンスウィング中の骨盤の左へのスライドが過度になるケースが多く見られる。そうなると、上半身の動きが遅れやすくなるんだ。
過度なスライドはNGだけど……
吉田 下半身に対して上半身の回転が遅くなる、いわゆる「振り遅れ」ですね。
クォン もちろん、バックスウィング中の右への過度なスライドもNGだ。ただそれも、完全に抑制してしまうと、脚のスムーズな運動を妨げる。結果、地面と脚との相互作用で生まれる地面反力が弱まってしまう。
吉田 骨盤が、脚を介して地面とつながっている以上、脚の動きに伴う自然な回転&スライドは不可欠だと。
クォン その動きを無理に抑制するような教え方はしてほしくないね。
Dr. クォン&吉田洋一郎
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