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【陳さんとまわろう!】Vol.235「グリーンオーバーして逆目の芝。ここでもランニングの出番です」

日本ゴルフ界のレジェンド、陳清波さんが自身のゴルフ観を語る当連載。「ランニングアプローチが一番安全な寄せ方」と語る陳さん。前回の基本に続き、今回はランニングアプローチのさらなる活用術を教えてくれた。

TEXT/Ken Tsukada ILLUST/Takashi Matsumoto PHOTO/Tadashi Anezaki THANKS/河口湖CC、久我山ゴルフ

前回のお話はこちら

8番や7番アイアンでまずは転がしに慣れてみる

――ランニングアプローチの基本はハンドファーストに構えてハンドファーストの状態でインパクトすることだというのが前回の肝でした。

陳さん はい。クラブヘッドより手が先(飛球方向)にあったほうがボールを打ちやすいんですよ。手よりヘッドを先に出したらダフったりトップしたりね。ヘッドの真上に手があっても危ない。だからハンドファーストを必ず意識することが大事よ。

――使用クラブはピンまでの距離が遠いか近いか、上っているか下っているかなど状況によって替えて。


陳さん そうです。でもクラブを替えられるのは、ふだんからランニングで寄せていて、転がしに慣れている人。発展途上の人はクラブを8番とか7番に固定して、ボールの転がる距離を覚えるようにしておくことが大事ですよ。で、慣れて覚えてきたらクラブを固定しないで9番も使う、6番も5番も使うという具合に幅を広げて、応用編をつくっていくとスコアもよくなっていくはずよ。転がした結果、それまで2パットで収めていたのが寄せワンが利くようになったり、またときどき直接入ったりするわけね。そうなったらプロはだしじゃない?(笑)

――ですねえ。グリーン周りにもさまざまな状況がありますが、ランニングはそれに対応できますか?

陳さん 実戦で使っていると、たぶんこういうことにも気が付いてくるはずよ。グリーンオーバーして、逆目の芝の中にボールが入っている状況があるでしょ。こういう状況ではたぶんロフトのあるクラブを持って、ボールを上げて寄せようとする人がほとんどだと思うの。ランニングで転がして寄せようなんて考える人はとても少ないはずよ。ワザ師なんて呼ばれるような人ぐらいでしょ。しかし逆目の状態からウェッジでボールを打ったら、たぶんヘッドが芝に突っかかって失敗するか、それを考えすぎて打ちすぎて、グリーンの反対側までオーバーさせることが多いと思うんだね。

――おっかなびっくり打つことが多いと思います。

陳さん だからそういう状況ではランニングでボールを転がせばいいんですよ。7番でも6番でも使って、パターのストロークと同じようにしてボールを薄く打つと上手くいくんだよ。ウェッジを使ってヘッドを上から打ち込むと、ヘッドが芝の硬い茎の部分に邪魔されて突っかかりますからね。

――ドスンと打ち込まずに、パッティングと同じように横にサッとスイープすれば突っかからない、というのは納得です。

陳さん それから、ランニングは、ウェッジでボールを上げて寄せる場合と比べて、アイアンのロフトを立ててランを利用する打ち方ですから、テークバックが小さくて済むわけね。この小さいストロークというだけで安心感が生まれてミスがうんと減るの。そこでひとつ覚えてもらいたいのは、クラブフェースを返しながら打つ方法なんだね。インパクトでフェースのトウ側を左に回すようにリストターンを入れて打つと、ボールが落ちてから足が伸びるんだ。たとえばピンまで上っている状況では転がりが少ないですから、いつもよりスウィングを大きくすると思いますがね、フェースを返しながら打つことでストローク幅を大きくする必要がなくなるわけよ。こういう技もランニングの面白いところなんだね。

陳清波

ちん・せいは。1931年生まれ。台湾出身。マスターズ6回連続出場など60年代に世界で日本で大活躍。「陳清波のモダンゴルフ」で多くのファンを生み出し、日本のゴルフ界をリードしてきた

月刊ゴルフダイジェスト2023年4月号より