【世界基準を追いかけろ!】Vol.72 パターのネックは意外としなる。ネックがしっかりしたモデルがオススメ
目澤秀憲と黒宮幹仁。新進気鋭の2人のコーチが、ゴルフの最先端を語る当連載。今回のテーマは、前回に引き続き「入りやすいパター」を作る方法について。
TEXT/Masaaki Furuya ILLUST/Koji Watanabe
GD 「入りやすいパター」の条件として、今回はネックに注目ということですが。
黒宮 パターのネックというのは、思っている以上に、ストローク中にしなるものなんですよ。
GD ショットに比べてパッティングはストロークの速度が遅いので、感じないですけれどね。
黒宮 グリーン上でパターを突っかい棒のようにして、体重を掛けて立っている人がいますよね。あれはネックが曲がるから絶対にやるなと学生のときに言われたのを覚えています。
目澤 真っすぐだったネックが知らないうちにミッドスラント(※1)になっていたなんてことになりかねないですからね。
GD パターのネックにしなりが出ると、どういった悪影響が生まれるんですか。
黒宮 シャフトとネックの硬さに差が出てくると、どうしてもタイムラグが生じるので、インパクトでズレますよね。
目澤 そうですね。ネックがシャフトに比べて軟らかいと、シャフトがマイナス方向(振り遅れ方向)に動いているのに、ロフトだけプラス方向(ロフトがつく方向)に動くということが起こりうる。想像するだけでも、それでインパクトのタイミングを合わせるのはなかなか難しいですよね。またシャフトも軟らかくてネックも軟らかいパターなども難しく、さらにフェースにミーリングがなくて表面がつるつるになっているとかなり難しいと言えると思います。
黒宮 昨年全米女子オープンに行ったときに、現地でベティナルディ(※2)のパターを試してみたんですけれど、シャフトもネックも硬くて、ねじれが少なくて凄く良かったんですよ。
GD ネックが硬くてしならないパターというと、ほかにどんなものがありますか。
黒宮 やはりトラスパター(※)はネックに剛性があって、しならないです。
目澤 データでもネックは硬いほうが良いというのが出ています。クインテック(パッティング計測器)で計測したデータを見ると、トラスパターの結果が一番良かったです。ピンタイプのトラスパターでロフト角2度、ライ角を72.5度にしたパターを打ってみたんですけど、すごくデータが良かったです。とにかく、シャフトもネックも硬いからブレが少なくて球がスコーンと出てくれる。だからちょっと右を向いて構えやすくなります。
GD 前号では、8、9割のゴルファーがパッティングで左を向いて打っているので球がつかまらないという話がありました。
黒宮 パッティングが上手い人はたいてい右を向きますね。
目澤 あと、トラスパターのマレットのセンターシャフト(TPコレクションハイドロブラストバンドンTM2 トラスセンター)は、よりネックが硬く感じるので、クロスハンドにして構えるとストロークが簡単になりますよね。
GD パターのネックのしなりを抑えることで、さまざまな好影響が出てくるわけですね。
※1. ヘッドから若干傾斜しているネック形状で、構えやすい。ロングタイプは微妙にたわむことが分かってきたのでミッドスラントネックが主流に。タイガー・ウッズもミッドスラントネックを使用していた。※2. ロバート・J・ベティナルディのデザインによる米国製パター。OEMパターの製造を経て、自身のブラン ドを立ち上げた。※3. テーラメイド「トラスパター」。三角形のネック形状によりヘッドがブレにくくミスヒットに強い。「トラスTB1トラスヒールパター」を使った稲見萌寧は2020-21シーズン8勝を挙げ賞金女王になった
目澤秀憲
めざわひでのり。1991年2月17日生まれ。13歳からゴルフを始め、日大ゴルフ部を経てプロコーチに。TPIレベル3を取得。2021年1月より松山英樹のコーチに就任
黒宮幹仁
くろみやみきひと。1991年4月25日生まれ。10歳からゴルフを始める。09年中部ジュニア優勝。12年関東学生優勝。日大ゴルフ部出身。松田鈴英、梅山知宏らを指導
週刊ゴルフダイジェスト2022年2月1日号より