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最新ウェッジ6モデル、止まるのはどれ? スピン性能を徹底テスト

各メーカーから最新ウェッジが続々と発売。ニューモデルはどう進化したのか? ウェッジの要といえるスピン性能に着目し、新旧モデルで比較。キュキュッと止まるウェッジのスピン力はスコアメイクのカギを握る。ギアに詳しいプロによる弾道計測&試打で最新モデルの実力を探っていこう。

PHOTO/Yasuo Masuda THANKS/明治ゴルフセンター

解説・試打/横田英治

ツアー経験に基づく、理論的なアドバイスには定評がある。ドライバーからパターまで試打経験も豊富で最新のスウィング理論にも精通。女子プロの岸部桃子を指導している

スピンを利かせたいなら
新しいモデルのほうがいい

ドライバーなら飛距離性能が注目されるが、ウェッジで気になるのはやはりスピン性能。試打経験が豊富な横田英治プロによると

「ウェッジはフェースの溝の影響が大きいので、新しいモデルほどスピンはかかりやすいです。シーズン中でも新しいモデルに替えるプロが多いのはそのためです」

グリーンを狙うショットやアプローチでは、ボールを止めることが求められるが、横田プロは

「ボールが止まる理屈は大きく2つあります。ひとつはボールの重さで止まる。つまり落下角度です。理想は40~45度と言われています。プロの高弾道は落下角度を稼ぐ意味でもあるんです。もうひとつがスピン量です。アプローチなど、落下角度を作れない場合、スピンで止めることになるので、スピン性能が重要なんです」

ウェッジのスピン性能を左右する要素には何があるのか?

「クラブの機能で考えるとヘッドの重心位置とフェースの加工(溝)になります。基本的にウェッジはホーゼルが長く、高重心に設計されています。芯の下でヒットすることでスピンがかかりやすくなるからです。フェース加工についてもスコアライン規制はありますが、そのなかで各メーカーの工夫が随所に表れています。またゴルファーの技術的な要素も影響します。それがヘッドの入射角とバウンスです。最新のウェッジはドライバー並みにさまざまな技術開発が進んでいるので、スピンで止めたいと思うのなら最新モデルは要チェックでしょう」

新旧モデルのスピン量を比較

30Yのアプローチでスピン量を計測

フルショットではスピン性能の差が出にくいので、30Yのアプローチでスピン量を比較。計測にはトラックマンを、ボールはタイトリスト「プロV1x」を使用した


今回は最新ウェッジと同系の旧モデルをピックアップし、スピン性能を比較した。まずは2大ブランドの「ボーケイ」と「クリーブランド」からだ。

ボーケイの最新モデル「フォージド」は、日本専用の軟鉄鍛造ウェッジ。試打した横田プロは、

「旧モデルと比較するとバックフェースに違いは見られますが、構えたときの見た目は、ほとんど違いがありません。それなのに打ってみると、2021年モデルのほうがボールの食いつきがいいです。スピン量も200回転以上アップしています。スピン性能は打ち出し角にも表れていて、より低くボールが飛び出していました」

高い球のほうがスピンが利いているイメージがあるが?

「みなさんが誤解しがちなのがこの打ち出し角です。スピンがかかるのは、ボールがフェースの溝に食いついたとき。フェースに長く食いつくことで、打ち出しは低くなるのです。逆にボールが高く打ち出された場合は、フェースに食いつかず、ボールの下を抜けたような状態といえます」

一方、クリーブランドの最新モデルはどうか? こちらは見た目から一新し、全面溝のモデルに。

「昨年登場した『RTXジップコア』に近い形状ですが、全面溝(フルフェース)になったことで、よりフェースが開きやすいです。また、ソールのヒール側が狭く削られていることで、開いても閉じても構えやすくなっています。ふわっと浮かせて止めたり、意図的に芯を外して球の勢いを弱めたりなど、いろいろな技が使えそうです」

タイトリスト ボーケイフォージド

ボーケイ フォージド(新)

【スピン量】4996rpm

●ロフト/56度 ●バウンス/12度 ●ヘッド/軟鉄鍛造 ●価格/3万3000円

マスタークラフトマン、ボブ・ボーケイ氏が日本専用モデルとして開発。日本のコースに対応するため、グラインド形状やバウンスを最適化

ボーケイ フォージド(旧)

【スピン量】4784rpm

●ロフト/56度 ●バウンス/12度 ●ヘッド/軟鉄鍛造

初代は2011年に発売され、当初から日本専用として開発された。2019年のグラインド形状はF、S、M、Kの4種類だったが、2021年モデルはワイドソールのBグラインドが追加された

食いつきが向上し打感がさらに軟らかくなった
「構えたときの印象はほぼ変わらないですが、打ってみるとボールの食いつきがいいです。それがグニュッとした打感の軟らかさにつながっています。アマチュアでもフェースに乗る感触が感じられるはずです。浅重心設計のため、芯に近い打点になることでパワーがしっかり伝わります」(横田・以下同)

クリーブランド RTX

RTXフルフェース(新)

【スピン量】4936rpm

●ロフト/56度 ●バウンス/9度 ●ヘッド/軟鉄鋳造 ●価格/2万900円

重心位置(芯)を実打点に近づけるためにトウ側へ移動した「RTXジップコア」テクノロジーを搭載した「ハイ・トウ」デザインの全面溝モデル

RTX4フォージド(旧)

【スピン量】4830rpm

●ロフト/56度 ●バウンス/11度 ●ヘッド/軟鉄鍛造

2019年発売モデル。日本特有のボールが浮く状態を想定し、上下方向の慣性モーメントを向上させている。インパクトの安定とスピン性能が高く、軟鉄鍛造で打感もいい

フェースが開きやすい形状で全面溝が生きる
「昨年の『RTXジップコア』よりヒールが低く、トウが高いデザインなので、フェースがとても開きやすいです。ソール形状もヒール側が削られていて抜けがよく、スピンがしっかりかかってくれます。新旧ともバウンスの当たり方がよく、ヘッドが前に滑ってくれるのでスピンがよりかかってくれる感じです」

キャロウェイ JAWS

ジョーズ フルトウ(新)

【スピン量】5041rpm

●ロフト/56度 ●バウンス/12度 ●ヘッド/軟鉄鋳造 ●価格/2万2770円

2015年、P・ミケルソンのフルフェース「PMグラインド」が流行したが、その要素とジョーズが融合したのが今回のモデル。フェースはノーメッキ

ジョーズ フォージド(旧)

【スピン量】4908rpm

●ロフト/56度 ●バウンス/12度 ●ヘッド/軟鉄鍛造

2019年に発売した「ジョーズウェッジ」の軟鉄鍛造モデル。鋭さを持つ37Vグルーブを搭載し、ボールの食いつき感、スピン性能は飛躍的に向上した

バウンスは同じだが抜けのよさが格段に進化
「『ジョーズフォージド』は丸みのある形状ですが、『ジョーズフルトウ』はトウが高く、三角形に近い形状です。同じバウンス角ですが、最新モデルはヒール側が薄く削られていて、開くことで抜けのよさが引き出されます。開いて使うほど、スピン性能が向上する感じで、バウンスの当たり方も引っかかりがないです」

ブリヂストン BRM

Bリミテッド BRMフルミルド(新)

【スピン量】5222rpm

●ロフト/58度 ●バウンス/10度 ●ヘッド/軟鉄鍛造 ●価格/10万7800円

カスタム専用モデル。1/1000ミリ台まで見直し、ルール限界まで近づけた溝設計でスピン性能を大幅に強化。ノーメッキ仕上げ

ツアーB BRM(旧)

【スピン量】5024rpm

●ロフト/58度 ●バウンス/12度 ●ヘッド/軟鉄鋳造

BRM(バイディングレールミルド)は溝の間に6本のミーリングを配置、1本1本にギザギザな凸部を設けた新しい溝加工。スピン性能がアップ

ボールが溝に“入る”感触がある
「比較したロフトが58度ということもありますが、ボールの食いつき感ではいちばん強烈です。フェースの溝にボールが入る感触が伝わるくらいの軟らかい打感がありました。ノーメッキもありますが、溝の仕上がりは素晴らしいです」

テーラーメイド ミルドグラインド

ミルドグラインド3(新)

【スピン量】5072rpm

●ロフト/58度 ●バウンス/11度 ●ヘッド/軟鉄鋳造 ●価格/2万5300円

ノーメッキフェースはそのままに、溝間にバー状の突起を設けた新開発の「レイズドマイクロリブ」を搭載。スピン量がアップ

ミルドグラインド2(旧)

【スピン量】4904rpm

●ロフト/58度 ●バウンス/11度 ●ヘッド/軟鉄鋳造

フェース面のメッキ加工をなくし、溝の間に無数の細かな溝を配置。この鋭利な溝が高いスピン性能を発揮する

トウが高い形状でつかまりやすさが向上
「『ミルドグラインド3』はトウが少し起きた形状でフェースが開きやすく、さらにつかまりがいいです。トウ寄りにボリュームがあるので右に逃げるイメージが湧かないです。開いて使うとヒール側の抜けがよく、ボールがフェースにしっかり乗ってくれます」

ピン グライド

グライド フォージド プロ(新)

【スピン量】5171rpm

●ロフト/56度  ●バウンス/10度 ●ヘッド/軟鉄鍛造 ●価格/3万250円

ツアープロの要望から生まれた操作性に優れたコンパクトモデル。重心が約6%高くなり、操作性が向上。溝も1本増えた

グライド フォージド(旧)

【スピン量】4967rpm

●ロフト/56度 ●バウンス/10度 ●ヘッド/軟鉄鍛造

2018年モデル。ロブショットしやすいオフセット、丸いリーディングエッジ、抜けのよいソール幅など、プロの要望によって開発

丸いソールが利いて強くスピンが入る
「『グライドフォージドプロ』はソールに丸み(写真右)が出たことでバウンスの当たりやソールの抜けがよくなっています。その影響でボールが食いつき、スピンも強く入ります。軟鉄鍛造モデルなので打感も非常に軟らかいです」

キャロウェイの「フルトウ」は
いろいろな技を使いたくなる

全6モデルを試打した横田プロに総評を聞いてみた。

「まず全面溝のモデルが2種出てきたことに注目です。実はプロによってトウ寄りで打ちたいという要望があるんです。理由は2つ考えられます。ひとつはトウ寄りで打つほうがフェース面を長く使えること。もうひとつは芯を少し外すことでボールの勢いを殺すことができることです。この2つをカバーできるのが全面溝なのです。フェースを広く使いつつ、溝によるスピンも入るのは、プロにとって武器になりますし、アマチュアにはオフセンターヒットでもスピンがかかる可能性もあります。

とくにキャロウェイの『ジョーズ フルトウ』は、トウ側がより高い形状になっています。比較した旧モデルの『ジョーズ フォージド』は、丸みのある形状ですから、まったく新しいモデルに生まれ変わっている印象です。スピン量は5000回転を超えていますし、開いても閉じてもフェースに乗る感触があります」

そもそもウェッジはホーゼルを長くするなどして高重心化するのが基本。だが、この高重心化はスイートエリアがネック寄りになってしまうデメリットがある。そこで各メーカーは素材や構造を工夫することで、重心位置を適正化(実打点に近づける)し、スピン性能の強化を図っている。

「今回のモデルは重心設計もそうですが、フェース面の工夫が随所に感じられました。『ミルドグラインド3』、『BリミテッドBRMフルミルド』はノーメッキ仕上げのため、心理的にもスピンが入る印象があり、実際にスピンもかかっていました。『グライドフォージドプロ』は摩擦力が向上した新溝が採用され、旧モデルと比べ、スピンのかかりがよくなっています」

週刊ゴルフダイジェスト2021年10月5日号より

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