Myゴルフダイジェスト

  • ホーム
  • ギア
  • 【ミニドライバー完全解剖】<前編>元々はPGAツアー選手のための“飛びすぎない”ドライバーとして開発された

【ミニドライバー完全解剖】<前編>元々はPGAツアー選手のための“飛びすぎない”ドライバーとして開発された

何かと話題のヘッド体積300㏄前後のミニドライバー、通称「ミニドラ」。今は4メーカーから発売されるほどの人気で新ジャンルのクラブとして市民権を得つつあるが、まだ「よくわからない」という人も多いはず。その本質はどんなクラブなのか、誰にとってどんなメリットがあるのかを徹底検証!

TEXT/Kosuke Suzuki PHOTO/Hiroaki Arihara ILLUST/Takaaki Okuda THANKS/ユニオンGC

解説/松尾好員

1957年生まれ。月刊ゴルフダイジェスト連載「こちら東灘区ギア研究所」でもおなじみのクラブ設計家。住友ゴム工業(現ダンロップ)で多くの名器を生み出した実績を持つ。ジャイロスポーツ主宰

>>後編はこちら

もともとは“飛ばさない”
ためのクラブだった

近年モデル数も増え、急速に市民権を得つつあるミニドライバー。この流れは2019年にテーラーメイドが発売した「オリジナルワン ミニドライバー」に端を発する。

当初「オリジナルワン」は、往年の名器をオマージュしたデザインが注目されたものの、ある種「イロモノ」的な扱いで、実用的なドライバーのバリエーションとして評価されることは少なかった。しかしテーラーメイドがその後も「300 MINI」「BRNR」と粘り強く後継モデルを発売し続けたことで、新しいジャンルのクラブとしての認知度が高まっていき、ついに昨年はキャロウェイが追従してミニドライバーを発売。今年はさらにタイトリストとPXGもが発売するに至った。

しかしそもそもミニドライバーとはどういったニーズで生まれたクラブなのだろうか。クラブデザイナーの松尾好員さんに話を聞いた。

「実はミニドライバーは、PGA選手の要望によって生まれた『飛ばしすぎないため』のクラブなんです。近年のPGA選手たちはドライバーでキャリー300Yを優に超える飛距離を出すため、コースによっては290~300Y前後の距離でフェアウェイをキープしたほうがスコアメイクしやすいという場面が出てきました。ミニドライバーは、そんなときにドライバーよりも15~20Yほど飛距離を抑え、3Wよりもやさしくティーショットできるクラブとして開発されたものなんです」

そのため長さが43~43.5インチ前後とされ、その長さで構えやすく、扱いやすい300~350㏄程度のヘッドサイズとなった。

近年のドライバーは、ヘッドを大型化してフェースの反発性能や慣性モーメントを大きくするとともに、長さも長くしてひたすらに飛距離を追い求めてきた。その進化と逆行する存在であるミニドライバーは、まさに「飛ばさない」ためのクラブだったというわけだ。

人気のきっかけはPGA選手

ミニドライバーはトミー・フリートウッドやアダム・スコット、マックス・ホーマなどPGAのトッププレーヤーが使い始めて認知度が高まった。彼らにとっては300Y先のフェアウェイに「置きにいける」クラブだ

通常のドライバーと比較すると…

●ヘッド体積は約2/3
一般的なドライバーのヘッド体積が460㏄なのに対して、ミニドライバーは300~350ccと約2/3。43.5インチ前後の長さのティーショット用クラブとして構えやすいサイズだ

●重さは約15g重い
総重量は、同じ「エリート」シリーズで比較するとドライバーより約15gも重く、3Wと比べても6gも重い。PGA選手の要望で生まれたアスリート向けモデルである証拠と言えるだろう

●約2インチ短い
クラブの長さはドライバーよりも2インチ短く、3Wよりも0.5インチほど長い43.5インチ。ドライバーよりも飛距離を抑えるための最大のポイントはここにある

データ比較
まさに1Wと3Wの中間的な存在

ドライバー、ミニドライバー、3Wを比較すると、ミニドライバーの長さは3Wに近く、ヘッドサイズや各種重心位置、慣性モーメントなどは両者の中間的な数値。一方で重量はかなり重めなのが特徴だ ※データは実測値

>>後編はこちら

月刊ゴルフダイジェスト2025年10月号より