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【ツアーレップのお仕事】#3 キャロウェイ・島田研二さん「選手とのコミュニケーションが最も重要」

試合会場でプロの要望を聞いてクラブの調整などを行うメーカーの用具担当者を“ツアーレップ”と呼ぶ。「Tour Representative」の略で、ツアー会場でメーカーを代表(Representative)する存在だからだ。では具体的にどんなことをしているのか? 最後は、長年石川遼の専属を務めるなど、ツアーレップ歴16年のキャロウェイゴルフ・島田研二さん。

PHOTO/Norimoto Asada

島田研二 しまだ・けんじ。キャロウェイゴルフシニアツアーレプレゼンタティブ。キャロウェイのツアーレップとして長年、石川遼の専属を務め、昨年から女子ツアー担当に。上田桃子とはデビュー以来の付き合い

入社以来、ツアーの現場が夢だった

「キャロウェイゴルフに入社して25年になります。営業やフィッティングなど、いろいろ経験しましたが、プロの現場に行きたいとずっと思っていたんです。なかなか叶わなかったのですが、チャンスが来てツアーレップになれました。今年で16年目です」と島田研二氏。

「国内ツアーには男女各1チームあって、責任者が1名。その下にシニアレップがいて、その下にレップ、パターレップ、クラブテック(クラブテクニシャン)、さらに専属のトレーラー運転手がいます。同じメーカーなので、男子が活躍するのはもちろんうれしいのですが、女子が活躍すると心のなかで『よしっ!』って思ったりします。

トレーラーは男子、女子それぞれ1台あり、女子では去年の全38試合すべてにトレーラーを出した唯一のメーカーになりました。これはフェリーだけでなく、陸路はどれくらい走ってとか、スケジュールをしっかり組まないとできないことで、あれだけ大きい車で計器もたくさん積んでいるので、メンテナンスの日を設けるなど、すべてを運転手さんが考えて運行してくれます。

クラブテックはクラブ作りのプロ。僕なんかよりも数十倍細かくて上手い人間なので安心して任せられます。なので僕の仕事は選手と話をすること。選手の好みに合わせたクラブを作り上げるだけでなく、逆にこちらから『こういうクラブを試してみない?』と提案できないと意味がない。でも、選手から信頼してもらわないと、本音を話してもらえない。だからコミュニケーションを取るのが大事な仕事だと思います」

使用者が多いからこそ、仕事量が多い

「ありがたいことにオデッセイのパターを含めて、契約外の選手にも多くのクラブを使ってもらっています。またレギュラーツアーだけでなく下部ツアーもあれば、シニアやジュニアもいるので、この限られた人数で、そのすべてをサポートするにはメモ帳が欠かせません。年間で10冊は使います。そこに日付、言われたこと、スペックなど、すべて書き込まないと覚え切れないんです。

よく『地方に行って楽しそう』とか言われますが、正直そんな余裕はありません。朝はどこよりも早く6時にコースに来て、20時ごろ一番最後に会場を後にします。もちろん選手と食事に行くこともありますが、帰り際に手早く済ませて、ホテルに戻ってデータを打ち込むことがほとんど。あっという間に深夜になって、4時間くらい寝たらもう朝。体力があることと、朝に強いのがこの仕事をやる条件です(笑)。僕の自慢はツアー担当になってから一度も寝坊したことがないこと。それはやっぱり緊張しているからで、15年やっても変わらないんです」

全国を走り回るオフのほうが大変

「シーズン中は試合会場に選手が集まっているので、宿題を持って帰っても次の週の会場に行けば会える。でもオフは選手それぞれいる場所が違うし、トレーラーを持っていくこともできません。だから、全国を飛び回って選手のところに行って、フィードバックを持ち帰ってクラブテックに作ってもらって、それを選手に送って……の繰り返し。毎年新しいクラブが出るので、それを使ってもらうのが申し訳なく思うときもあります。でも前作を上回っていると信じて作っているし、実際に使ってくれているということはそうだと思っています。選手に新しいクラブを渡すときは、ものすごくドキドキします。これは永遠にするんじゃないですかね。

上田桃子プロとか、石川遼プロとか、感性でゴルフをやる選手はクラブ作りでウソをつけない。もちろんウソをつこうと思って仕事をしたことはないですが、自分でも気付かなかったミスを指摘されることも。ライ角0.5度とか重さ1グラムだったり。ちゃんと測ってたつもりでも、選手から言われて測り直してみると、『あ~、確かに』というのは何度もありました。石川プロのグリップはずっと僕が入れてましたが、たまたま他の人が入れたら、『コレ、島田さんが入れてないですよね』って言われたんです。その時はさすがに『マジか!』って思いました。何が違うのか分からないのですが、彼らに『違いますよね?』ってにらまれたら、もう『僕が間違えました!』と謝るしかないんです(笑)」

上田桃子の練習に密着し、クラブのフィードバックや「こうしたい」という意見を吸い上げる。「意見を交わすだけではなく、笑顔と会話で選手の気持ちを盛り上げるのもレップの仕事」と島田氏。練習終わりの上田桃子の顔には、普段以上の笑顔が。「島田さんを信頼しているか? もちのろんです!」(上田)

クラブは我々レップに任せてほしい

「一緒にツアーを転戦しているので、選手とは戦友のような感覚があります。だから、『クラブのことは俺たちに任せろ』と。調子悪いときは『クラブのせいにしてもらっていいよ』って、たまに言うんです。何かに原因を求めることで、少しでも楽な気持ちになるならそれでいいと思っています。その分、選手が結果を出してくれたときはやっぱりうれしい。優勝はもちろん、日々新しいものを提案しているので、その週に作ったクラブを使って活躍したらうれしいし、逆に結果が出なかったら申し訳ない気持ちになる。結果が出たときに、『このクラブよかったです。ありがとうございます』と言われるのは、ツアーレップ冥利に尽きます。

これからも選手のために結果が出るものを提供していきたい。それはクラブだけでなく、試合の前に僕らと話すことで気楽になって本番に臨めるというメンタル面も含めて、選手が喜んでくれれば。最終的に結果が出れば、会社としてもそれによって製品が売れてハッピーになれると思っています」

キャロウェイのツアートレーラーにいる女子チームスタッフたち。それぞれの役割を理解して、互いに信頼することで、多くの選手を抱えながらも、選手ひとりひとりの要望を叶えていく

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週刊ゴルフダイジェスト2024年5月7・14日合併号より