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【クラブ駆け込み寺】Vol.2 球がグリーンに止まりにくい。それならクラブよりも「ボール」を見直してみては?

“頑固オヤジ”が勇退し、あとを継いだのが練習場で小さな工房を営む通称“アニキ”。今回は「5番アイアンでグリーンに止まらなくなった」という相談が寄せられた。

ILLUST/Kochi Hajime

前回のお話はこちら

Q. 5番アイアンでグリーンに止まらなくなった
パーオンが狙えるチューンは?


5番アイアンを抜いてUTに替えたら、6番も打球が低くなって止まりにくい感じに。飛距離と高さを確保するには、シャフト交換がベストチューンでしょうか?


理想の「高さ」を具体的にイメージしよう

先日“頑固オヤジ”さんと常連さんたちの、店じまいコンペがありまして。

「もうジジイなんだから、ボギーオン狙いでOK。だからシニアティーなんて必要ないのさ。フロントでもレギュラーでも、常連さんたちと同じティーからプレーして、90切れたら御の字だよ」

とか言っていましたが、もう少しでエージシュートの「82」。いや、相変わらず上手でしたね。

でも、ウチの相談者は、まだまだパーオン狙いのためのチューン希望がメインです。

「5番でグリーンに止まらなくなったからUTに替えたんだけど、今度は6番も怪しくなってきて。ヘッドスピードが落ちてきたせいか、球が上がらない感じなんですよ。でもロフトを増やすと飛ばなくなるから、シャフトで上がるようにする、とかがいいんですかね?」

還暦を迎えたシングルさん、ベテランらしくギアにも詳しいので、たとえば『NSプロ950GHneo』にリシャフトはどうか、というチューン相談でした。

「上がるシャフト選択の前に、まずどのくらい上げたいか。イメージはありますか?」

「え? まあ、1番手分ぐらい高くしたいかな……」

「そういうのはダメです。球を止めるには、エイペックス、つまり弾道の頂点をどこまで持ち上げたいか、が大事なんですよ」

意外と知られていないようですが、ショット力のあるプロはアイアン全番手の頂点を揃えようとイメージしています。結果、ランディングの角度がついて、止まりやすい弾道になるんです。

「ウェッジでも6番でも、同じ頂点に向かって上がるようにする。だから、頂点の高さの具体的なイメージが欲しいんです。たとえば“ビルの4階の高さ”とか」

ボールで高さを変えるという手も

最近は弾道計測器でこの頂点の高さも数値で捉えられるようにはなっていますが、地上から“高さ25ヤード”とか言われてもピンと来ないはず。日常で見かける光景で、具体的にイメージできるものを目安にするほうがいいんです。

「ツアー仕様のグリーンなら5、6階まで打ち上げる必要があるかもしれませんが、通常営業のグリーンなら4階ぐらいで止まるでしょう。問題は、長い番手でそれができるかどうかですが、シャフトに頼ると、フルショットとコントロールショットでパフォーマンスが変わりすぎる危険性があるんですよ」

シャフトのしなり戻りの挙動を生かして弾道を高くするものは、フルショットが基準。少し抑えて打つと、ライナー性の当たりになって逆に飛びすぎてしまう、なんてこともあります。

「提案として、まずボールを替えてみませんか?」

ボールは構造、カバーとコアの硬さ、ディンプルなどの違いで、同じように打っても高さが変わります。

ここ数年、ツアー仕様でもタイトリスト『プロV1』よりテーラーメイド『TP5』のほうが上がりやすい設計になっていたり、差別化が進んでいます。また、ディスタンス系でも高さを生かして止まりやすくなっているものもあります。

昔の糸巻きバラタとは違い、スピン量を増やして止める、という考え方はもはや通用しません。その分、ボールのモデル違いを打ち比べて、高さを知ることのほうが有効なんです。

今回の相談者さんは、早速ウチで6種類ほど選んで購入。後日、ホームコースで打ち比べたところ、テーラーメイド『ツアーレスポンス』が良かったようです。

「『TP5』は硬い感じだけど、これは若干ソフト。今まで使っていたものに近い打感で、確かに上がりやすくて、止まります」とのこと。

2打目で使う番手の高さを求めてボールを選び直す、というのが今回の“正解”だったようです。UTと置き替える場合も“高さ”を目安にするといいですよ。

月刊ゴルフダイジェスト2024年1月号より