低スピンの強い球が手に入る! 玄人好みのドライバー『エピックスピード』
多くのクラブを手掛けてきた設計家・松尾好員氏が最新クラブを徹底的に計測・分析する「ヘッドデータは嘘つかない」。今回はキャロウェイの「エピックスピード」を取り上げる。
AIが設計した4本の梁状構造が構造が肝
21年1月に最新モデルとして発表された『エピック スピード』『エピック MAX』『エピック MAX LS』。そのなかでメーカー側が「オールゴルファーに向けたシリーズの中心モデル」としているのが今回紹介する『エピック スピード』だ。
17年の『GBB エピック』から採用されている2本の柱「ジェイルブレイクテクノロジー」がAI設計で進化。4本の梁状の構造になった「ジェイルブレイクAIスピードフレーム」が最大の特徴だ。
さて、クラブ計測に移っていく。いつもどおり数値はすべて実測値。クラブ重量が298.2gと標準的で、クラブ長さも45.25インチと長すぎない。クラブの振りやすさの目安となるクラブ慣性モーメントが287万g・cm2に抑えられ、この数値だとドライバーのヘッドスピードが43m/sくらいのゴルファーがタイミング良く振れる設計になっている。標準シャフトであるディアマナ 50 for キャロウェイ(フレックスS)は、かなり軟らかい設計になっているため、ヘッドスピードが40m/sくらいのゴルファーが扱いやすいだろう。
Point1.クラブ長さが45.25インチと長すぎない
Point2.ネック軸周り慣性モーメントが7118g・cm2と標準的
Point3.クラブ慣性モーメントが287万g・cm2とやや大きい
構えやすく球筋を操作しやすい
細部を見ていこう。ヘッドは横幅が広すぎないオーソドックスな形状で、公表の体積は460㏄だが、計測してみると448㏄でやや小ぶり感がある。米国モデルらしくアドレスではオープンフェースで、まったくかぶっていないのも特徴。そして、『マーベリック』のようなヘッド後方が高いハイバック形状で、アッパーブロースウィングをイメージさせないデザインだ。
実際に試打したところ、アドレスでは前述のようにオーソドックスな輪郭形状とやや小ぶりなヘッド、かつオープンフェース&ハイバック形状で素直に構えやすいイメージが出ている。
試打クラブのロフト角は9度だが、浅い重心深度により、似た雰囲気を持つ『マーベリック』よりもネック軸周り慣性モーメントが小さめに抑えられ、結果、インテンショナルにドロー、フェードと弾道を操作しやすい。また、ヘッドの浅い重心深度とハイバック形状でレベルにスウィングすると分厚いインパクトになりやすく、スイートスポット高さも標準的で、適度なスピンが入り、強い中弾道で飛んでいった。
クラブが長すぎず、確かにヘッドスピード40~42m/sくらいのゴルファーが振りやすいとはいえ、ロフト角が9度では難度が高い。そのため、同ヘッドスピード帯のゴルファーはロフト角10.5度を選んだほうがいいだろう。逆にヘッドスピードが速い上級者だと、より重くしっかりしたカスタムシャフトに替えるとヘッドの性能を引き出せるはずだ。
<試打クラブスペック>
●ロフト/9度 ●シャフト/ディアマナ 50 for キャロウェイ(S)
キャロウェイ
エピックスピード
●ヘッド素材/鍛造 FS2S チタン(フェース)、8ー1ー1チタン(ボディ)、トライアクシャル・カーボン(クラウン)
●ロフト角/9度
●ライ角/58度
●長さ/45.75インチ
●シャフト/ディアマナ 50 for キャロウェイ(S)
●総重量/約302g(S)
●価格/8万4700円
クラブ&ヘッドデータ(実測値)
クラブ長さ | 45.25インチ |
クラブ重量 | 298.2g |
スウィングウェート | D2.0 |
クラブ慣性モーメント | 287万g・cm2 |
ヘッド重量 | 198.4g |
ヘッド体積 | 448cc |
リアルロフト角 | 9.5度 |
ライ角 | 58.0度 |
フェース角 | オープン1.5度 |
重心距離 | 40.1mm |
重心深度 | 34.7mm |
フェース高さ | 55.7mm |
スイートスポット高さ | 35.2mm |
低重心率 | 63.2% |
ヘッド慣性モーメント(左右方向) | 4540g・cm2 |
ネック軸周り慣性モーメント | 7118g・cm2 |
松尾好員
まつおよしかず。往年の名手、S・バレステロス、I・ウーズナム、青木功、加瀬秀樹らのクラブ設計を担当。近年のクラブを知る“現代の知匠”。ジャイロスポーツ主宰
週刊ゴルフダイジェスト2021年3月2日号より
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