【頑固オヤジ】Vol.166 愛用のキャッシュインからネオマレットへ移行はアリ?
東京下町でゴルフ工房を営む店主がギアに関する悩みに答える連載「頑固オヤジのクラブ工房」。今回は、長らくキャッシュイン型パターを使用する読者から、やさしいモデルに替えるべきかという相談が寄せられた。
ILLUST/Kochi Hajime
Q. いまだに“キャッシュイン”を愛用。
ネオマレット型に替えたほうがいい?
ゴルフを始めたときからキャッシュイン型パターを使っていましたが、シングルの友人にもっとやさしいモデルに替えたら、と言われます。最新のネオマレット型とかのほうがいいのでしょうか?(59歳・HC12・会社員)
求めるべきは“当て心地”
6月に入ろうってところで、梅雨入りだの台風だの、暑くなったり寒くなったり、なんだか落ち着かなかったよな。体調崩さねえように、気をつけねえと。
この間、千葉のゴルフ場に行ったら青々としてたから、まあ夏場に日照り続きにでもならなけりゃ、今年は良いシーズンになりそうだけどね。
「オヤジさん、今回も読者からの相談です」
最近は常連さん、グリップ交換とかメンテナンスばかりで相談事は少ないからな。読者相談ばっかりだよ(笑)。
「ずっとキャッシュイン型パターを愛用していたそうですが、ネオマレット型など、もっとやさしいモデルに替えたほうがいいか、という内容です」
「ウン……。なあ、パターの“やさしさ”って、何だと思う?」
「多少芯を外しても方向がブレないとか、転がりがよく伸びるとか、ですかね」
「それだとキャッシュイン、いわゆるT字型はやさしくないよな、芯は狭いし。でも、根強い人気があるんだ。なぜだと思う?」
フランジやオフセットが付いていなければ重心深度ゼロ、重心距離も10ミリ以下。スイートエリアは極端に狭いが、ヘッドの動かしやすさ、打面の操作性、ソリッドな打感は、好きな人にはたまらない逸品なんだ。
「でも、ミスヒットすると方向はブレるし、大ショートとかしますよね。難しい……」
「それ、全部“芯を外すミス”が前提だろ。動かしやすい、てのがブレを生じさせやすいのも事実だが、慣れれば“わざと芯を外す”逃がし方も使えたりするんだよ」
想定内ならブレも保険に
手首を固めたショルダーパット、いわゆる振り子式ストロークが主流になってから、ヘッドの重量や慣性モーメントを重く、大きくしてミスヒットに強くするパターを“やさしい”とする風潮になったけど、オイラはちょっと違うんじゃねえかと思っている。
「パッティングの大命題は、狙った所にちょうどいいタッチで打球を転がせることだろ。だがな、キッチリ芯に当ててカップからボール1個分右に打ち出す、なんてのは入れごろ外しごろぐらいが一番難しい。強すぎちゃいけないし、狙いにフェースを向けて構えても、つい気持ちが負けてカップのほうに打っちまう、てのはよくあること。
そんな場面で、ちょっとトウ寄りに当てたら、ちょっとフェースが当たり負けて右に出て、強く転がりすぎない、なんてパターがちょうどよかったりするんだよ」
少しビビる場面を、腕を磨いて克服するか、道具に頼ってラクに逃げるか。一般アマは後者でいいと思うんだけどね、オイラは。
「それなら、最近流行りのセンターシャフト型はどうですか? 操作性と寛容性のバランス、良さそうですが」
「あれはオススメしないかな。重心距離が全然ないと、打面の向きを感じにくいから打ち出し方向を整えにくいと思うんだ。使ってるプロは、その辺の感覚が優れているんだろうけどね」
「では、相談者は替えないほうがいい、ということで?」
「まあ、多少のチューンなら試していいかもな。ヘッドに鉛を貼るとか、グリップの太さを変えてみるとか」
鉛をソールに貼って、重量を数グラム変えるだけでも当たり負け感やブレにくさは結構変わるからな。すぐ元にも戻せるし。
結局、パターは自分のクセに合わせて選ぶのが一番。カップの左右、前後に外しやすい傾向をカバーするようなロフト、オフセット、重心位置とかでカバーすればいい。理屈は難しいから、試打して確かめるのが近道だけどね。
月刊ゴルフダイジェスト2023年8月号より