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【クラブ選びの新基準】#3 浅重心や小ぶりヘッドが必ずしも難しいとは限らない

コースで結果を出すためのクラブ選びについて、敏腕クラブフィッターの吉田智さんに話を聞いた。ヘッドを選ぶ際には、いわゆる“やさしい”と言われるスペックが必ずしも万人にとってやさしいわけではないことを理解しておく必要があるという。

TEXT/Kousuke Suzuki ILLUST/Hideki Kamekawa PHOTO/Takanori Miki

解説/吉田 智

「プレミアムゴルフスタジオ」主宰。プロ、アマ問わず幅広いゴルファーのフィッティングを行っている敏腕フィッターで、YouTubeなどでも活躍中

浅重心のほうが実は上がりやすい?

シャフト選びの次はヘッド選び。この点に関しては単純に、試打して「いい結果が出るもの」を選べばいい。もちろん前述のようにキャリー距離をベースに考えること、きちんと平均値をとることが基本となる。

アマチュアにとっては、球が上がりやすいこと、つかまりやすいことが重要だが、これも試打データを見れば自ずとわかってくる。トータルでなくキャリー距離を重視するなら低弾道よりも中・高弾道が求められ、曲がり幅を考えればアマチュアの多くを占めるスライサーにとっては球がつかまることは重要。

しかし実戦的な意味での「上がりやすい」「つかまりがいい」とはどういうことなのか。ヘッド選びにコツはあるのか、引き続き吉田さんに教わった。

「球の高さを考える際に、やさしいアベレージ向けヘッドを選ぶべきか、ハードなアスリート向けヘッドを選ぶべきかという問題があります。これはもちろん前者のほうがスイートエリアが広くミスヒットへの寛容性が高い場合が多いということが前提ですが、球の高さという点だけを見れば(ロフトが同じならば)実は後者のほうが球は上がりやすいという実態があります。なぜなら、ボールを打つのは機械ではなく人間なので、インパクト時のヘッドの挙動に反応して、“当て方”を調整する現象が起こるんです」


具体的には、深重心なぶんスウィング中にヘッドのお尻が下がりロフトが増える動きが生じやすいアベレージ向けのヘッドでスウィングすると、それに逆らってロフトを立てながら当てようとする。その結果、打ち出し角は低めになり、ギア効果によってバックスピンが増えるため、低打ち出し・高スピンになりやすい場合がある。重心が浅くフェース側の重さでロフトが立って当たろうとするアスリート向けモデルはその逆だ。

■浅重心のクラブ=高打ち出し・低スピン
ロフトが立とうとする挙動に反応してロフトを増やしながらインパクトしやすいため、スピンが多くなりがちなスライサーなどはこちらのほうが合いやすい。

①浅重心で前が下がる=ロフトが減ろうとする
②逆らってロフトを増やしながら当てようとする
③ギア効果でスピン減

■深重心のクラブ=低打ち出し・高スピン
ロフトが増えようとする挙動に逆らってロフトを立てながらインパクトしやすいため、スピンが不足しがちなドローヒッターに合いやすい

①深重心でお尻が下がる=ロフトが増えようとする
②逆らってロフトを立てながら当てようとする
③ギア効果でスピン増

打つのは人間だから無意識のうちに調整してしまう
重心位置とインパクト時のヘッド挙動の関係は、スウィングマシーンで打った場合と人間が打つ場合とでは異なる。人間はスウィング中のヘッドの動きを感じて、無意識にそれに逆らおうとすることを考慮する必要がある。

“つかまるヘッド”は人によって変わる

人間相手のフィッティングでは、こういった“反応”を無視して理論だけで考えると間違いが起こりがちなので注意が必要だ。

「球のつかまりに関しては、重心距離の短い小ぶりヘッドも、重心距離の長い大型ヘッドのフックフェースも、どちらも『つかまる』と言われるんですが、これはスウィングタイプによって相性が大きく出ます。フェースローテーションが大きいタイプの人は前者を『つかまる』と感じますし、フェースの開閉量が少ない人は後者のほうが『つかまる』と感じます。ヘッド選びはこういう点も注意してほしいですね」

またクラブ選びに関しては、「現状で最高の結果が出るクラブ」を選ぶのか「上達を見込んで上達後にいい結果が出るクラブ」を選ぶのかをハッキリさせることが重要だと吉田さん。

「この考え方が変わると、最適なクラブも変わります。あいまいなまま選ぶと何もかも中途半端になるので、必ず明確にしておきましょう」

ローテーションが大きい人は小ぶりヘッドがつまかる

フェースローテション量が多いスウィングタイプの人は、フェースの開閉がスムーズに行える、重心距離が短く小ぶりなヘッドのクラブを「つかまる」と感じやすい

■ローテーションが小さい人は大型ヘッドがつかまる

フェースのローテーション量が少ないタイプのスウィングの人は、重心距離が長めで慣性モーメントが大きく、ややフックフェースのクラブのほうが「つかまる」と感じやすい

いまの技術でスコアを出すのか上達を前提とするのか
いまの自分のスウィングで最大の結果が出るクラブは、自分の問題点を補う機能を備えたクラブ。しかしこれは上達すればジャマになる機能でもある。練習してスウィングの向上を目指し、その際にマッチするクラブを求めるのであれば選ぶクラブは変わるはずだ。

月刊ゴルフダイジェスト2023年3月号より