「日米レディス交流戦を開催したい!」日系女性ゴルフ同好会からの挑戦状
編集部に一通のEメールが届いた。以前ご紹介した、91歳、魅惑の女性ゴルファー、小林良子さんの記事を読んで「会いたいんです!」。そして、自分のチームと日米女性対抗戦をしたいというのだが――。
THANKS/西熱海GC
「実は、ゴルフダイジェストの記事を読み、お便りを差し上げております。記事の内容は90歳の女性ゴルファー、小林良子さん。ぜひ彼女にお会いしたくご連絡申し上げています。日本で、日本の女性たちとゴルフを通して交流がしたいと願っております」
エアメールでも同様の手紙を送ってくれた真田和子さんは、「パサデナ2世女子ゴルフクラブ」に所属している。恒例の夏休みの帰国に合わせて、“良子さん”に会いたいという。
- 今回の主人公、小林良子さんは現在90歳と6カ月。ゴルフ歴は60年にもなる。激動の時代を、力強くチャーミングに生きて、プレーしてきた。「良子ワールド」にしばし耳を傾けようではないか。 PHOTO/Yasuo Masuda THANKS/太平洋C軽井沢R 今年4月、良子さん90歳のお祝いコンペが太平洋クラブ御殿場ウエストで行われた。「88歳のときはお祝いだ……
このロサンゼルスのゴルフ同好会、現在メンバーは45人、8割が日本人。「メンバー全員が日本でゴルフをしたことがない。昨夏に帰国していたときに、人間ドックの待合室で記事を読んで、これだ! って(笑)」
思い立ったらすぐ動く真田さん。すでに私の目の前にいる。
「年会費は80ドル。ラウンドは月1回、全部違うコース、パブリックでプレーします。ファンシーなゴルフ場じゃないですよ(笑)。プライベートコースだとグリーンフィーが高いでしょ。働いている人が半数以上だから、だいたい日曜日が多いですね。プレーフィーは個人で支払いますが、皆ネットバンキングのようなもので処理しますよ。カードも使わないんです」
最高齢は92歳。それでも高速を運転して、デジタルも使いこなす。ハンディも自ら入力する。真田さんもiPad片手に、スイスイ説明してくれる。
「一番上手な人がHC10、最高44なんて方も。私なんか32くらい。ゲームの仕方も工夫してます。ABCの3グループを作って、それぞれで戦う。ハンディキャップみたいな感じです。隠しホールだとか、ニアピンも『Cグループは2オンでOK』とか、いろいろルールも作って。本当にすごいですよ。費やす労力がすごい(笑)」
そうして見せてくれた黄色いミニブック「2022 PNWGCROSTER BOOK」には、年間スケジュールからコースの地図、そしてルールまでびっしりだ。
「アメリカって今はレディスティーは使わないんです。ジェンダー差別の問題もあるから、わざと色を意識的に変えています。グリーンとか黄色とかシルバーとかね」
自由の国アメリカで、ゴルフ好き日系女子が集まり、楽しい時間を過ごしているのだ。
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真田さんは、1974年に渡米し、立教大学同窓生のご主人と結婚、自分たちの手で起業した。
「自分たちでお金を作らないとならないから。手っ取り早いのが日本食レストラン。その前にチェーンのサンドイッチ屋さんで働いてお金を貯め、ダラスに移ったんです。まあまあ流行りましたよ。現在はそのお店を貸して家賃収入で生活。ダラスは30年住んでましたね。今はオレンジカウンティです。うちの主人もゴルフが大好きです。彼は上手いんだけど、私は下手で、100を切るか切らないか……全然飛ばなくなったし。ここのメンバーは、旦那さんが日系人とか、三世とか、厳密ではないんですよ。最初は20人くらいからパサデナの地でスタートして、その名前をそのまま使っているんです」
常にきびきび話す真田さん。それもそのはず、ダラスで教員を30年間勤めあげた。
「平日はダラスの高校で日本語をアメリカ人に教えて、土曜日は日本人に高校の数学を教えてました。今は定年したけど、オンラインで麻雀教室をやってるんですよ。私、ジムフリークなの。アメリカのジムは大規模でマシンが100台くらい、プールもホテルのように大きいし、スタジオもたくさんあって100クラスくらいある。私は起きてすぐに8時からヨガスタジオに行き、9時半からは筋トレやジョギングをしたりして、シャワーやサウナに入って、家に帰って録画した朝ドラを観ながら昼ご飯を食べるの」
娘さんもいる日本への夏の帰国は、同窓会参加も兼ねている。でも今年は一味違った。
「この夏はゴルフにかけよう! ってね」
いつもより少し長い3カ月の滞在。ゴルフしかしてないと笑う。
「ライザップに週2回、通ってたんです。歳をとったらちまちまできないから一気に習いたい。今年は短歌も将棋も諦めて、ゴルフ1本! ほら、良子さんたちに会えるのは、神様がゴルフにしなさいと言ってるんですよ。ドライバーを30ヤード、最低20ヤードは伸ばしたい、そうしたら価値を認めると言ったら、最後に最高155ヤード飛んだんです。キャリーで15ヤードは伸びました。ひたすら練習しましたよ。娘のマンションの下に、1時間300円の共有の鳥かご練習場があって、そこにも毎日通った。習ったことはすぐに体に沁み込ませる。円安の恩恵でクラブも買いました。ゴルフの夏です(笑)」
何事にも全力投球なのだ。
「でもフォームを自分のものにするまでには時間がかかるから、2、3カ月後にアメリカで定着すると思う。最後に理想のスウィングを映像に残したいからと全部撮影してもらいました。それにわかったんです。いかにあばら骨と肩甲骨を動かせるか。クラブは上下運動、体は左右運動。私はヨガをしているから体は回るんですよ、でもタイガーみたいに70%の感じで振らないと。とにかく100を切りたい」
パワフル×パワフル
人生最後は輝きたい!
そうして、良子さんとご対面の日。場所は良子さんの現・ホームコース、西熱海GC。今日もピンクのウェアに身を包んだ良子さんにお土産のピンクのキラキラボールをプレゼント。つかみはオッケー! 灼熱の太陽の下、パワフルレディ2人のラウンドだ。
「私、カート道や日陰に打ちますからね。足らぬ足らぬは工夫が足らぬですよ。傾斜も、あるものは使わないと」(良子)
「オーシャンブリーズって、海からの芝目のことです。ここは、カリフォルニアのコースに似てます。カタリーナアイランド、海が見えて山もあって。ぜひロサンゼルスに来てください」(真田)
「行きたいわね。今日の空はスカイクリーン、私の心みたい」(良子)
「来春か来秋、仲間と来るので、ぜひ回ってくださいね」(真田)
「面白いわね。でも早くしないと私も時間はないわよ」(良子)
「良子さんなら大丈夫。びっくりしたのは背筋がスッとしていること。普通曲がるのに」(真田)
「リウマチなのにね、歯を食いしばってやってる。毎朝、自分で背中は伸ばしてるの。姿勢だけは自分で作れるからね。年寄り臭くないように」(良子)
「後ろ姿が老人じゃない。動作がきびきびして感動的、素振りもしないし、プレーも速い」(真田)
「素振りしてたら疲れるから。皆さん、損なことばかりしてるわよ」(良子)
「とにかく明るいし、予想通り、記事通りの人。私も目指します! 90歳のときにエージシュート出しますね(笑)」(真田)
こうして、太平洋C御殿場ウエストでも太平洋C成田でも良子さんとのラウンドを堪能した。
実は真田さん、日本で“若い男性”にも会っていたのだという。サイトを使い、メールしてつながった。
「38歳で脱サラして、お友達と若者向けの会員制の打ちっ放しを立ち上げた若者に会ったんです。私もゴルフ人口を増やしたいし、若者も応援したいですからね。英語とゴルフで、アメリカで親子サマーキャップをやろうって話で盛り上がったりね」
もっと上手くなりたい! ゴルフ三昧の夏休み。つながる出会いがありました
類は友を呼ぶ。こうしてまた、つながっていく――。
「今回、古い友達と会ってません。ゴルフ関係でつながった新しい人たちだけ。常に前を向いていると何かがあるんです。それに私、老後は日本で何かに貢献したい。40年アメリカにいて、1000人以上に英語を教えたけど、今度は日本で英語で英語を教えようと。日本人は資格に弱いから、自分の英語力をもっと上げたいのもあってESAC(認定英語学習アドバイザー)の資格を取っています」
人生、整理する時期があると笑う真田さん。
「やっぱり70代になると先が見えてくるから、ここ10年で何ができるかって。自分にできることを。せっかく生きてきたのにね、いいことしたいと思うんですよ。良子さんとも、自分の人生の終わりは輝いていたいよねって話をしました。皆さん考えて追ってると思うのよね」
できることはなんでもやるつもりだ。千葉の廃校で、いろんな人を巻き込んだり、外国人を怖がらない子を育てるため、日本の英語教育に一石を投じたい。
ハードルも壁もない人だ。
「こういうことをしたらこの人たちが喜ぶんじゃないか、そういう感じがある。私が労力を使えば、本当にいいことってみんな賛成してくれて広がっていきますよ」
さて、当初の目標、日米レディス交流戦計画は?
「来年の春か秋、桜か紅葉が綺麗な時期に。とりあえず第1回目は8人くらいで来て、良子さんたちのグループと、他のグループと3カ所くらいでゴルフしたいです。チームで合計500歳とか、男性のアメリカ大好きな方なんかとも、ぜひ! そして翌年は日本からロスに来てもらって、1年おきに日米交互にできればいいなって。帰ってさっそく皆に話をしないと」
こんな真田さんたちに挑戦したい方々がいれは、ぜひ、ご一報ください。海の向こうで、首を長くして待ってますよ!
エベレストやキリマンジャロに登ったり、ニュージーランドでヘリスキーをしたりする真田さん。「私もびっくりのパワフルぶり。仲間たちも面白がっています」という良子さんも、陸上単発小型機の免許、持っていましたよね!
週刊ゴルフダイジェスト2022年10月11日号より