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島民しか知らない幻のコースとの出合いも! 奄美群島ゴルフ旅

世界中をラウンドしてきたゴルフトラベラー、芝鳥のぶあま氏が、たった1本のクラブを携え、奄美群島をゴルフ旅。道中、島民しか知らない幻のコースとの邂逅も。旅の模様をレポートしてもらった。

写真・文/芝鳥のぶあま
72年京都生まれ。日本ゴルフジャーナリスト協会会員。ゴルフトラベラーとして、国内で600コース近く、海外で300コース近くをラウンド。そうした経験を自身のブログ「ゴルフバカの気まぐれブログ」などで発信。平均スコア95、ゴルフ歴14年

島には素晴らしいショートコースがいっぱい!

私はゴルフ旅が好きで今まで世界中を旅してきた。そのなかでも島ゴルフが好きであちこちの離島に行ったが、この2年間はコロナ禍でなかなか旅に出ることが難しくなり大好きな沖縄に移住して沖縄での島ゴルフを楽しんでいた。

そして移住したらしたいことがあった。それは沖縄からフェリーで奄美群島を縦断するゴルフ旅に出ることだった。
昨年の9月末、緊急事態宣言が全国同時に解除されたのでそのタイミングで旅に出ることにした。今回はフェリーで那覇港を出発して与論島、沖永良部島、徳之島、奄美大島、喜界島と移動し、それぞれの島にあるショートコースのみに焦点を当てラウンドする旅だ。

島と島の間はフェリーで移動。奄美大島と喜界島間だけフェリーの乗り継ぎ時間の関係上、飛行機での移動にした。島内での移動は那覇で原付バイクをレンタルして島の風を感じながら移動することにした。

旅のお供は「スーパースティック」

離島ゴルフを楽しむ際の相棒。「1970年代に発売された1本で17通りのロフトになるクラブ。原付バイクでも問題なく移動できます」

那覇港を出発して4時間50分で与論港に到着。与論島では1泊の予定。ゴルフの前に行っておきたい場所があった。それは百合ヶ浜という大金久海岸の沖合に春から夏にかけて大潮の干潮時だけに姿を現す真っ白な砂浜。ちょうどこの日がその大潮の日だったのでぜひ見ておきたいと思い原付バイクを飛ばした。今年は砂浜が顔を出すことはないコンディションだと聞いたが、それでも美しかった。

そして、いよいよゴルフだ。事前にゴルフコースのことをヨロン島観光協会に電話して確認すると、以前は観光客もゴルフができたが現在は縮小されて一般には開放されていないということだったので、場所を探してとにかく行ってみることにした。

島の南にあるハキビナ海岸の東側に向かうと、狭い敷地に交差するようにレイアウトされた9ホールのパー3コースがあった。かつてはヨロンシーサイドゴルフ場というコースだったが現在はNABINBUパークというコース名に。海外の僻地のゴルフコースに行くとよく見られるオネスティボックスと呼ばれる料金箱が設置されていたので、ノートに名前を記入して1000円札を箱に入れてラウンド開始。誰もいないコースを独り占めしながら、のんびりとゴルフを楽しめた。


美しい百合ヶ浜からスタート(左上)/NABINBUパーク。バイクを止めて(左下)/「オネスティボックス」に料金を!(右)

ラウンドを終えるころ、アプローチの練習に来られていた島のゴルファーの方と少しお話をさせていただいた。昔は今の面積の3倍ぐらいの広さで9ホールあり、2番ホールは海越えのホールだったらしい。

与論島では、島の炊き込みご飯の「みしじまい」をぜひ食べることをお勧めする。島のスーパー「オーシャンマーケット」で購入できる。

魅惑の郷土料理に舌鼓を打ちながら

沖永良部島には、島の東側に高千穂カントリークラブ(霧島市にある高千穂カントリー倶楽部とは別)と西側に沖永良部ゴルフクラブの2つのコースがある。まずは島に上陸して高千穂CCをラウンド。18ホール・パー57で、給水塔の上から打ち下ろす7番パー4が面白く、遠くには海が見えて爽快なホールだった。そして10番パー3はスコットランドのロイヤルトゥルーンで有名なポステージスタンプのような小さなグリーンでこれも楽しめた。

沖永良部には2泊して初日は和泊の町に宿泊。居酒屋「海幸」で食べた「もずくのかき揚げ」は絶品だったし、「エスポワール」というバーも、離島にこんな素敵なバーがあるのか! と感動した。

翌日は西に移動して沖永良部GCに。ドライビングレンジの用地をそのままコースにした数万辻コースと、車で数分移動して山の中に造った平田山コースの18ホールのショートコースだった。

ハーフラウンド後、ゴルフ場のフロントの方と常連のゴルファーさんがテラス席でお茶をされていたので少し話をさせていただいた。その後、その方がもう1つのコースまで道案内してくれラウンドすることができた。こちらのコースはホール間のインターバルがジャングルの中を歩くような感じで冒険している感覚になり楽しめた。

そして2泊目は知名町に宿泊。漁師が経営する海邦丸でいただいた「伊勢海老の味噌汁」の活締めの伊勢海老の火入れは完璧でプリプリしていて絶品だった。

大将と旅の話をしていると、ゴルフに詳しい店主がやっているお店を教えてくれたので2軒目はそちらに。2コースをラウンドした話をすると「実は沖永良部にはもう1つコースがあるんですよ」という情報が! 明日のフェリーの出発まで時間があるので探してみることにした。

昨夜、教えていただいた昇竜洞の近くをバイクで走りながら探し出すと確かにゴルフコースがあった。見つけただけで心が躍る。バードヒルという看板が立てかけられていて一緒にオネスティボックスが。9ホールのショートコースだが手づくりで広々としていて気持ちのよいコース。沖永良部島の3コースの中で一番気に入った。

ゴルフ好きとの出会いも旅の醍醐味

3つ目の島、徳之島に夕方に上陸。徳之島でのゴルフは翌日以降にすることにし初日は情報収集。「A House」というバーで今回の旅の話をマスターにしていると、息子さんがゴルフ部だったそうで、いろいろと徳之島のゴルフ事情を教えていただいた。徳之島にはかつて大原カントリークラブ、サンガーデンゴルフ、天城ゴルフクラブ、一本松ゴルフセンターと4つのコースがあったのだが、このうち天城と一本松は閉鎖されてしまい、今は大原CCと、サンガーデンから名前を変えた兼久ゴルフコース、どちらも9ホールのショートコースとして2コースのみ営業しているのだとか。そんな話をしていると常連さんが来店。

私が「沖永良部島には島民しか知らないポストにお金を入れてゴルフするコースがあったんです」と話すと、常連さんが「徳之島にも木之香という場所にあったはずです」とまたまた嬉しい情報が。徳之島には2泊する予定なので、最終日にゆっくりとその場所を調べることにした。

2日目の朝、大原CCと兼久GCをラウンド。大原CCはこの旅で一番コースが広くのびのびとゴルフができた。ゴルフを終えて島の西側の天城町の食堂でランチを食べているとき、隣のテーブルの島民の方の会話から明日のフェリーの欠航が決まったという情報が耳に入った。この情報を知らずにいたら、そのままこの日は観光を続けていて明日の朝にフェリーの欠航を知り、この後の旅程が大幅に狂うところだったのでラッキーだった。急いで夕方のフェリーを確保して一日早く奄美大島に移動することにした。

大原CC。この旅で一番広いコース

奄美大島に移動する前にどうしても、昨夜聞いた徳之島の秘密のゴルフ場を探してラウンドしたいので、残りの時間で探してみることにした。兼久GCをラウンドしたときにゴルフ場の方に聞いてみたが、確かにあるようだ。ゴルフ場までの道を教えてもらい、苦労したが何とか発見。沖永良部島のコースのときもそうだったが、見つけたときの感動は癖になる。考古学者が遺跡を発見したときの気持ちはこんな感じなのだろうなと思ったりもした。

そこには「西部ゴルフ」という看板とこちらにもオネスティボックスが。フェリーまでの時間がないので急いでプレー。コース内に案内がないのでルーティングを想像しながらラウンド。おそらく2番ホールだと思われるパー3は、素晴らしいホールだった。

世界のTOP100以上に記憶に残る旅に!

フェリーの欠航を回避するために一日早く奄美大島に到着。奄美大島は私の祖母が生まれた地で、今回で三度目の訪問になる。18ホール・パー72の奄美CC以外に龍郷ゴルフクラブと古仁屋ゴルフ場のショートコースがある。かつては名瀬と大和村にもショートコースがあったようだが現在は閉鎖されている。今回は龍郷と古仁屋をラウンドする予定だ。

夕食は奄美の郷土料理がいただける「かずみ」でボリュームある料理を堪能しながら喜界島に行く話をすると、「喜界島の山羊は浜辺に生えている長命草を食べているので臭みがなく美味しいから食べてくるように」と教えていただいた。翌日は奄美大島の南側の町の古仁屋にある古仁屋ゴルフ場をラウンドしてきた。山の頂に造られたコースで1番ホールから見える山並みが気持ちよかった。

飛行機で喜界島へ移動してすぐにゴルフ。喜界ガーデンゴルフという9ホールのショートコースが空港と海の間の土地にあった。今回の旅で一番メンテナンスがよく、気持ちよくラウンドできた。

そして楽しみにしていた喜界島の山羊である。皮付きの刺身も全く臭みがなく美味しかったが一番インパクトがあったのは喜界島独自の「山羊カラジュウリ(山羊の内臓を血で炒めたもの)」。「絶対に臭いはず。どうだろう……」と思いながら食べたらこれまた美味。ほんのりと山羊の風味がしたが、黒糖焼酎がすすむ一品だった。

喜界島で1泊して飛行機で奄美大島に戻ってきた。旅の最後のラウンドは龍郷ゴルフクラブ。奄美大島酒造が経営している。龍郷湾の海沿いに造られていて、海越えの1番パー4と、右サイドが海の7番パー4が記憶に残るホールだった。

海に吸い込まれそう。龍郷GC・7番

すべてのゴルフの予定を終えて、旅の締めくくりは大好きな黒糖焼酎「龍宮」を製造している「富田酒造場」の富田さんとの久しぶりの再会。富田さんの手料理と秘蔵の黒糖焼酎をご馳走になり、朝の3時まで楽しい宴は続いた。那覇港行きのフェリーは一日一便で出港時間は朝の5時50分。心地よい日差しで目を覚ますと朝の8時で、“延泊”が決定してしまったのも楽しい旅の思い出だ。

振り返ると、与論島、沖永良部島、徳之島、奄美大島、喜界島と原付バイクで走り、その島の風を感じ、島ごとに違う自然の美しさも楽しむことができ、なにより島の人々との交流から今まで島外に知られていなかったゴルフ場を知ることができたのが一番興奮した。

これまでゴルフ旅を150回ほどしてきていて世界TOP100 コースも数多くラウンドしてきたが、今回ラウンドしたのはどれもショートコースで、TOP100とは対極にあるコースばかり。

しかし、一番記憶に残る最高の旅になった。

●奄美群島ラウンドMAP●

週刊ゴルフダイジェスト2022年5月10・17日合併号より