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マンチェスターを襲った豪雨。身を挺して洪水から住民を守ったのは「ゴルフ場」

2月中旬から下旬にかけてイギリス・マンチェスターを襲った豪雨。洪水の危機を救ったのは、ゴルフコースと公園だった。

日本でもゴルフ場が避難場所に設定される例は少なくないが、マンチェスターの公園「フレッチャーモスパーク」と「ウィジントンGC」は、隣接するマージー川が氾濫する恐れがある場合、緊急用の水門を開いて故意に水没させる計画のもと造られた。公園とゴルフコースで75万立方メートルの水を逃がすことができ、ディズベリー地区の3000軒の家を洪水被害から守るという大役を担っていたわけだ。

今回の豪雨では夜の7時にサイレンを鳴らし、水門を開放。念のために、地区の役人が約400世帯を回って、避難勧告をしたというが、結局はこの地域では人的被害もなく大事に至ることはなかった。

しかし公園のほうは水深数メートルに達し、ゴルフコースも18番ティーはじめ、低い場所にあるところが水没してしまったと報告されている。

イギリスのゴルフコースやゴルフクラブは、一部の名門コースやリゾートを除いて、基本は近隣住民の利用によって成り立っている。コロナ禍でゴルフ場の営業が許されたときも、「自宅から5マイル(8km)以内でのコースに限りプレー可能」という注記がなされたこともあった。それくらい近場にゴルフコースがあるのだ。災害で近隣住民が大きな被害を受ければ、ゴルフコースの経営も成り立たなくなるからこそ防災に協力し、コースを水没させてでも住民を守るといった意識が生まれるのだろう。

もっとも、この緊急水門が開かれたのは、昨年の1月に続いて2度目。地元の環境局員に言わせれば、「この緊急貯水池が満杯になれば、それ以上私たちには何も手が打てない」と、昨今の集中豪雨を危惧する声も聞こえてくる。やはり根本的な解決には、異常気象を食い止めるということなのだろうか。

イギリスでは町とゴルフ場が一体化していることが多い

週刊ゴルフダイジェスト2022年3月22日号より

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