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車中泊で全国制覇!<前編>「ゴルフで日本一にはなれない。でもゴルフ場制覇なら…」

KEYWORD ゴルフ場

今回は、愛すべき“とんでもゴルファー”をご紹介しよう。“下道”だけを使い、車中泊をしながら全国のゴルフ場制覇を目指す木村公一さん、62歳。すでに983コースを回り(1月28日現在)、『釣りバカ日誌』ならぬ『ゴルフバカ日誌』の主人公のようである。いったいなぜ彼はここまでやるのか……。

TEXT/Kenji Takahashi PHOTO/Takanori Miki THANKS/箱根湯の花ゴルフ場

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全国のゴルフ場を制覇する。ゴルファーなら誰もが一度は抱く夢だろう。それに現役のサラリーマンが挑戦している。それも下道を使い、道の駅に車中泊しながらだ。

木村公一。62歳。愛知県在住で、中日総合サービス専務の肩書を持つ。中日新聞の折り込み広告を扱う会社で、仕事はかなり忙しい。にもかかわらず全国2100余のゴルフ場制覇を目指している。すでに47都道府県のゴルフ場を各1カ所以上回り、制覇したゴルフ場の数は983カ所に達した。

「ゴルフダイジェスト社のゴルファーズダイアリーの巻末に国内のゴルフ場全コースが載っていて、それを1つずつ塗りつぶしていくのが快感になっています(笑)」

『ゴルファーズダイアリー』を愛用。“陣取りゲーム”が好き。群馬県内の温泉165カ所を全部制覇し、焼き肉屋も「旨い」と評判の店を片っ端から400店回った。映画のチラシは1万枚集めている

全国のゴルフ場制覇を目指すゴルファーはほかにもいるが、高速道路を使わず、すべて下道で、車中泊しながら挑戦し続けているのは、おそらく木村だけだろう。

金がないわけではない。前述したように現役の会社役員だ。当然、平日は勤めがあるので、ゴルフ場巡りは連休を除けば週末のみ。金曜日の夜に自宅を出て、途中の道の駅で車中泊し、土曜と日曜はラウンドして下道で帰宅。月曜日には普段通りに出社して勤務する。すでに自宅のある愛知県や周辺の岐阜県、三重県、静岡県などはほぼ制覇し、現在は、西は岡山や広島、東は東京周辺へと遠征中だ。

「この年末年始は12月29日から1月8日まで10泊11日で岡山県と広島県のゴルフ場を10コース回る予定でした。普段は土日しかラウンドできないので、年末年始やゴールデンウィークの連休は、全国制覇を加速させる絶好のチャンス。正月も家でのんびり寝ているわけにはいかないのです」

計画は、病気で伏せっていた実母が3日に急逝したため中断して帰宅したが、それまでは大晦日も元日もなく5連チャンしている。

木村は、なぜ全国制覇を目指すようになったのだろうか?

冬は頭が寒いので毛糸の帽子を防寒用に使っている。家族は呆れているという。妻がうるさく言うときは「病気になったとか、寝たきりになったと思ってくれ」と言うようにしている

食事は“コンビニ飯”を車中にて。なるべく体にいいものも選ぶ。これも全国制覇という大きな目標のためだ

陣取りゲームが好き
目指すは日本一

「ゴルフは35歳のとき、会社の接待に必要だからと始めて、メンバーコースも3つ持ち、月例にも出てシングルを目指したのですが、ハンディは10で止まったまま。もともと同じコースばかり回ってもつまらないので、同じ金を払うのならいろんなコースを回りたいと。それで52歳のとき、愛知と岐阜のゴルフ場210カ所を3年間で制覇。そこから火が付いて全国制覇を目指すようになったのです」

若い頃から“陣取りゲーム”のような遊びが好きで、東京勤務の際には群馬県を担当して同県内の温泉165カ所を制覇。また旨いと評判の焼き肉店を400店以上食べ歩くなど、凝り性でもあった。

「普通の人はゴルフが上手くなりたいと思うでしょ。私は違った。どんなに上手くなってもサラリーマンの身で日本オープンに出て日本一になれるか、絶対に無理だ。だけど全国のゴルフ場制覇ならサラリーマンでもできる。それをやって日本一になろうと考えたのです」

もとは中日新聞の販売部門に勤めていたので、販売店対応や新聞拡張員対策などの仕事絡みで社内ゴルフコンペや付き合いゴルフにはしょっちゅう誘われた。

「でも全国制覇を目指してからは、上司や先輩の誘いも断って、未経験のゴルフ場をプレーするようになったので、会社では変わり者扱いでした。それでもとにかく全国制覇を目指したかった」

同調圧力に弱い日本のサラリーマンには珍しいタイプ。根底にあるのは“人のやらないことをやりたい”というオンリーワンのアイデンティティだ。それが「下道」「車中泊」という途方もない発想を生んだ。

走る距離は1日に200から300キロ。居眠り運転の事故を避けるため、それ以上は走らず24時には寝る

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週刊ゴルフダイジェスト2024年2月20日号より