米国人以外で初めて米女子ツアーの賞金女王となった日本女子ゴルフのレジェンド・岡本綾子が、読者からの質問に対して自身の経験をもとに答えていく。

TEXT／M.Matsumoto

今年は西郷真央選手と同い年の山下美夢有選手が活躍し、ルーキーの19歳の川﨑春花選手も2勝しました。ステップ・アップ・ツアーでは18歳の櫻井心那がシーズン5勝していますが、この現状をどうご覧になりますか。（匿名希望　52歳　HC3）

いろいろ考えるなかで転機は2014年だったのかもしれません。

当時、高校1年の勝みなみさんがKKT杯バンテリンレディスで優勝した年。

その2年後の日本女子オープンでは、これも当時高校3年だった畑岡奈紗さんが史上初のアマチュア公式戦Vを飾って大きな話題になりました。

それ以降、日本女子ゴルフ界は一気に世代交代が進んできた感があります。

この2人は同じ1998年生まれのよく言われている黄金世代です。

コロナで変則開催となった2020-21年シーズンには、東京オリンピックで銀メダルを獲得した稲見萌寧選手が勝ち星を重ね、終盤戦に猛烈に追い上げてきた古江彩佳選手を振り切って賞金女王の座を獲得しました。

稲見さんは1999年、古江さんはその翌年の生まれで、ついに2000年世代に突入することになったわけです。

今年を開幕戦のプロ初勝利でスタートして5月までに5勝をマークした西郷真央選手は、2001年生まれの21歳。

ワールドレディスで公式戦初優勝を飾った山下美夢有選手もランク上位にいます。

ちなみに、古江さんは2019年10月に開催された富士通レディースにアマチュアで出場して優勝してプロ宣言しましたが、彼女が受験する予定だった翌月のテストを突破したのが西郷さんと山下さんでした。

コロナの影響で2021年度はテストが6月と11月の2度にわたって行われることになりました。驚かされるのは、その中からいま活躍する選手が多いことです。

その代表格は、日本女子プロ選手権に初出場初優勝した川﨑春花選手でしょう。

昨年11月のプロテストに合格。今シーズンはステップ・アップ・ツアーとレギュラーツアーを往復する形でのスタートでした。レギュラーツアーでの予選落ちを繰り返しましたが、ステップ・アップ・ツアーの5試合目でプロ初優勝。その1カ月半後に日本女子プロ選手権でツアー初優勝を挙げました。

川﨑さんは、その後、2週連続予選落ちを挟んだ1カ月後に、マスターズGCレディースで2勝目を挙げることになりました。ルーキーイヤーの複数回優勝は、昨年6月のテストで仲良く同時合格した双子姉妹の妹・岩井千怜さんに続き今年2人目です。こんなことがあるんですね。

川﨑さんの衝撃的な優勝の翌週には、同じプロテストで合格した同学年ルーキー尾関彩美悠選手もツアー初優勝を飾りました。

同期生の活躍が大きな刺激になる典型的な現象ですね。

そこで見逃せないのが、同世代の櫻井心那選手の存在です。

彼女は2004年2月13日生まれの現在18歳です。

昨年末のQTでは成績が振るわずステップ・アップ・ツアーからのスタートでしたが、6戦目で早くも優勝し9月には2週連続優勝。さらに10月にも2週連続優勝を挙げました。

ステップ・アップ・ツアーでの年間5勝は史上初の記録です。

彼女にとって今年の主戦場がレギュラーツアーかステップ・アップ・ツアーの差はあれど、それをわたしは明暗とは思いません。

5勝の勢いに乗って挑んだレギュラーツアーのマスターズGCレディースでしたが、あえなく予選落ち。

なんとなく自分で自分にプレッシャーをかけすぎていたみたい。

この試合、わたしは解説をしていたので、櫻井さんと少しだけ言葉を交わす機会がありましたが、スウィングも考え方もしっかりしているので期待できそうです。

今回はレギュラーツアーのグリーンの経験のあるなしの違いが出てパッティングが課題だったかもしれません。

しかし、ステップ・アップ・ツアーとはいえ複数回優勝を積んだことで、ほかの同期生よりも一歩先に「一打の大切さ」を身に染みて肌で感じ、学習していることは間違いありません。

世代交代の激しくなるなか、努力を重ねて続けていかないと、注目される期間が長くて5年くらい? そんな厳しい時代に突入したとわたしは思っています。

「このごろ若い選手の活躍をちょっと客観的に見すぎて、わたし普通に楽しんでるかも（笑）」（PHOTO／Ayako Okamoto）

週刊ゴルフダイジェスト2022年11月15日号より

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