【笑顔のレシピ】最終回「コーチングも子育ても“これさえ言えば大丈夫”という正解はない」
メジャーチャンプ・渋野日向子を育てた青木翔が“コーチング”のこだわりを語る連載「笑顔のレシピ」。ゴルフだけでなく、仕事や育児などでも役立つヒントが満載!
TEXT/SHOTANOW
最近は指導する立場にあるコーチや管理職の人、また子育てをする親御さんが「自分はこうだったから」という経験論ではなく、熱心に外部から情報を取り入れようとしていると思います。そこで頭を悩ませているのが、どんなふうに考え方をアップデートするかということではないでしょうか。
もちろん、変化をすることだけが正解ではありません。ただ、モノやテクノロジー、それに伴って人々の考え方が速いスピードで変化しているので、人を導く側の頭の中もマイナーチェンジは必要かと思います。
難しいのは正解がないことです。相手は子どもでも部下でも“人”ですから、これをやって(言って)おけば間違いないということはありません。
育児書や指導書で、「絶対〇〇になる」とか「すぐ××になる」という謳い文句のものを目にすることがありますが、「一つの方法として取り入れてみる」くらいがいいでしょう。それが絶対的な正解だと思うと、自分や目の前の子どもに合わなかったときに、悩みの種がまた一つ増えてしまいます。
僕もこれまでたくさんの子どもたちを見てきたので、この子はこういうタイプだなという傾向のようなものは何となくつかめます。ただ、かける言葉やタイミングといった細かい部分はやはり本人と信頼関係をつくり、合わせていくしかありません。
もちろん僕も本を読んだり人の話を聞いて外側の情報を取りにいくようにはしていますが、時間のかけ方は生徒と向き合うほうをできる限り多くしたいと思っています。時間の配分でいうと8:2くらいの割合。
親御さん、上司、コーチと立場の違いこそあれ、最終的な目標は、目の前の人をどう導いていくかです。
「世の中がこうだから」と目の前の人を型にはめて変えてしまうのではなく、その人を通して世の中の変化を感じ取るくらいのほうが、お互いに考え方を上手にアップデートできると思います。
さらにパワーアップして帰ってきます!
約2年やらせていただいたこの連載『笑顔のレシピ』は、いったん今回で最後となります。この連載を通じて、自分の考えを改めて頭の中で整理でき、そして言語化するという作業は、僕にとって大変貴重な体験でした。大変な部分もありましたが(笑)。さらに初めての書籍となる『打ち方は教えない。』も発刊することができて、本当にうれしくもありみなさんには感謝の気持ちでいっぱいです。年明けにはパワーアップしてまたお会いできると思いますので、期待していてください。次世代のゴルファーたちのサポートを全力でできるようこれからもがんばっていきます!
青木翔
あおきしょう。1983年生まれ。福岡県出身。渋野日向子をメジャーチャンプに導き、三ヶ島かななどツアープロや、全国トップレベルのジュニアゴルファーの育成に努めている
週刊ゴルフダイジェスト2022年8月23・30日合併号より