【笑顔のレシピ】Vol.135「“約束事”は伝え方とタイミングが重要」
メジャーチャンプ・渋野日向子を育てた青木翔が“コーチング”のこだわりを語る連載「笑顔のレシピ」。ゴルフだけでなく、仕事や育児などでも役立つヒントが満載!
TEXT/SHOTANOW
僕が行っているコーチングは、端的に言うと「教えすぎない」というもの。能力というのは、与えられるよりも獲得するほうが定着すると考えているからです。だから生徒がどのレベルでも、基本的には「聞きたいことがあるなら聞いてきてね」というスタンスでいます。いわば僕のアカデミーでのお約束です。
社会に出ればコミュニティごとに、このお約束は変わります。例えば僕のアカデミーに入る前にレッスンを受けていた場合、そんな約束事はなかったかもしれません。だから新しく入ってくれた子には必ずこの約束事について話します。しかもかなり丁寧に。
「分からないことがあったら聞いてね」というトーンでは伝わりません。「質問というのは君の成長にとってすごく大事で、そのために何をコーチから引き出せばいいか真剣に考えてほしい」くらいの重みを持って伝えます。場合によっては「球を打つことよりも大事だよ」とも。
もちろん年齢によって重要性が伝わらない選手もいますが、約束事は変えません。言い方やタイミングを変えて何度も伝えます。それでも自分から質問ができない子は多くいますが、そこは根気が必要ですね。
親御さんから、教えすぎずに課題を引き出すようなコミュニケーションを取り入れたけれど、まったく子どもに変化がといという相談を受けることがあります。「まだ変わるタイミングではない」ということも考えられますが、大事な約束事として認識されていない可能性もあります。
そんなときは同じ言葉をかけるにしても、例えば手を握ってみたり、声色を変えてみたりして「あ、ちょっと大事な話かも」と思わせる演出をすることで伝わり方が変わってきます。
逆に約束事が伝わっているにもかかわらず、久しく質問をしてこない子には「何で聞かないの? もったいないな~」と軽く伝えたりもしています。約束事を伝えるタイミングと伝え方を見直すと、お子さんが一気に変わっていくかもしれません。
青木翔
あおきしょう。1983年生まれ。福岡県出身。渋野日向子をメジャーチャンプに導き、三ヶ島かななどツアープロや、全国トップレベルのジュニアゴルファーの育成に努めている
週刊ゴルフダイジェスト2022年8月16日号より