【笑顔のレシピ】Vol.131「日常生活がプレーに出る」
メジャーチャンプ・渋野日向子を育てた青木翔が“コーチング”のこだわりを語る連載「笑顔のレシピ」。ゴルフだけでなく、仕事や育児などでも役立つヒントが満載!
TEXT/SHOTANOW
今も昔も、ゴルフはビジネスで関係を深めるためにいいツールだと言われています。日中の長い時間を一緒に過ごし、即席で組んだ4人1組のチームとして18ホールを完走すれば、お互いに嘘偽りのない人間性が見えてくるもの。これは大人でもジュニアでも同じだと思います。
個人のパフォーマンスを重視するのか、はたまたチームの和を大事にするのか。感情を表に出さずに淡々と進行する人もいれば、アグレッシブにプレーをする人もいるでしょう。それらは6時間近く一緒にいて隠し切れるものではありません。
僕の生徒の大半は学生なので、“仕事関係の人”とラウンドすることはありません。なので、状況を逆にして伝えています。つまり「普段の生活が、ゴルフに出るぞ」ということ。
例えば、次の日の予定を確認して学校の支度をしていない子は、先を見通してプランを立てる癖がついていないので、コースマネジメントがおろそかになりがちです。また、授業で最後まで集中し切れない子は、最終ホールまで集中し切れないということにもつながるでしょう。
これはラウンドだけのことではありません。勉強や日常生活の態度を注意されたとき「自分はやっているつもりだ」と言い訳が先に出るような子は、コーチのアドバイスも素直に聞き入れることができず、なかなか成長がしにくかったりします。つまり“一事が万事”ということなのですが、子どもにはなかなか伝わりづらいもの。
そこで僕は、選手が失敗をしたとき「それって普段の生活からできてる?」と聞くようにしています。時間換算をすると、ゴルフをしているよりそれ以外のほうが圧倒的に長い。そこで習慣化ができれば、プレーにも必ず生きてくるからです。
もっと上手くなりたいと思う子ほどゴルフに没頭しがちですが、目線を変えて「自分は人間として上手くなる土台を作れているのか」という部分から見つめ直してもらう。遠回りのようで、これが着実な方法なのです。
青木翔
あおきしょう。1983年生まれ。福岡県出身。渋野日向子をメジャーチャンプに導き、三ヶ島かななどツアープロや、全国トップレベルのジュニアゴルファーの育成に努めている
週刊ゴルフダイジェスト2022年7月19日号より