【ゴルフ野性塾】Vol.1736「インパクトの音に拘って打ちたい」
古閑美保、上田桃子など数多くの名選手を輩出してきた坂田塾・塾長の坂田信弘が、読者の悩みに独自の視点から答える。
薄晴れの朝が続く。
75歳へと向う日々に変りはない。
真東を向くベランダの左端、7時過ぎると一羽のカラスがベランダに止まる。
東には福岡空港。朝の太陽は空港の先の山向うから上がる。
東の街に体を向け、動かずに5分弱。そして去って行く。
最初に気付いたのは女房殿だった。
几帳面なカラスである。
同じ時刻、同じ時間過ぎればいなくなる。
女房が手を振った。
窓ガラスを叩いて注意を向け、右手を振った。無視された。
可愛くないと女房、呟いた。
可愛いカラスなんているのかいと問うた。
女房は返事しなかった。
もうすぐカラスの来る頃だ。
現在時6月2日午前6時55分。
腹、減った。
今日の朝一番のお茶は私が淹れた。
女房よりは濃いお茶になっている。ティーバッグ2つ入れたから当り前か。
然り気なく過す日々。
今日も然り気なく過ぎ行く中で一日を終えると思う。
まだカラスは来ない。
追い払いはしない。
干渉せず、だ。
15階のベランダに止まり始めて3カ月。
若いカラスなのか老いたカラスなのか分らないままの3カ月である。
雨の日も止っていた。
体調良好です。
音だ。
音を意識すれば速度が上がる。
若い頃は250ヤードくらい飛ばしていましたが、40代の後半くらいから徐々に飛距離が落ち、60歳を過ぎてからガクッと飛ばなくなりました。現在の飛距離は200ヤードです。秋に定年を迎えますが、定年後はこれまで以上にゴルフに精進したいと思っています。塾長、あと10ヤード、飛距離を取り戻す方法はありませんか。(東京都・匿名希望・64歳・ゴルフ歴37年・HC16・ドライバー飛距離200ヤード)
飛距離への気持ちは切実さを増すばかりと思う。
私の経験で申すが、65歳過ぎてからのキャリー飛距離への願望は強まり行くばかりだった。
人それぞれの飛距離の変化なれど、やはりキャリー飛距離への執着はどなたもお持ちの筈。
飛んでいる時は全体の飛距離を見る。
ティーから250ヤード地点で第2打を打つか、260ヤード地点からが己のゴルフの判断であったと思う。
しかし、飛距離落ちた時、キャリー飛距離は気になるものだ。
クラブを買い替えようと考えるのは何時か、シャフト交換を考えるのは何時が一番多いのか。
多くの方はキャリー飛距離落ち始めた時の様な気はする。
そして順調に飛距離落ちて現在となる訳だ。
挑戦する時、己の飛距離への目安は一番飛んでいた時と思うが、14ホール中一番飛んでいた時を目安とするか、14ホール中の平均を見るか、14ホール中一番飛んでいなかった距離を目安とするかで飛距離挑戦への手段も意識も変って行くであろう。
私は失敗した者である。
気持ちの持ち方で失敗した。
一番飛んでいた時を挑戦目的とした。
だから飛距離出ていた時のスウィング、スタンス幅、振りの感覚を求めた。
大雑把ではあるが、14ホールの平均飛距離と14ホール中一番飛ばなかった飛距離の間を目安とすれば過去への執着は少なかった筈だ。
挑戦力と手段は過去への執着次第で異なるもの生れると思う。
己を変えて行くのだから過去への執着は少ない方がいい。
過去への執着強く持って己を変えるのは困難が付きまとう。
人は単純ではない。
しかし、単純な時、多く持つ方が望む結果、出て来る様な気はする。
己の過去の中に生きるスウィング、スタンス幅、振りのスピード、フィニッシュ位置、スウィング感覚への執着が単純さを生む事はないと思う。
何かを変える時、日々、新た、今が新たの始まりの意識は必要だ。
貴兄は謙虚過ぎる。
10ヤード欲しければ20ヤードを欲すべきだ。
私は74歳を過ぎて75歳へ向う途中の者なれど、振りのスピード上げて振ったつもりでも変化なく、いつもと変らずの日々は続く。
ただ、小さな変化を得る事は出来た。
平成5年8月から今も続くテレビ熊本の土曜日夕刻の「坂田信弘のゴルフ理論」で、インパクトの音の高さを意識して打った時、スウィングスピードが上がっていたのです。
事前の打ち合せなし、リハーサルなし、打ち直しなしの一発勝負で29年間続けて来たが、インパクトの音を意識して打ったのはいつ以来だったか。
今年5月27日の収録の時だった。
収録コースは熊本空港CC。
正面カメラマンに問うた。
「今のスウィングスピード、いつもと一緒だったか」と。
「速くなってました。特にインパクト後のスピードが変ってました」
ゴルフやるカメラマンだ。
20年以上、私の正面で私のスウィングと語りを撮り続けて来た男である。
私のスウィングの型もスピードも知る男である。
インパクトの音か、と思った。
今日6月2日。本稿書き上げた後、熊本へ移動し、今日と明日の2日間で8月と9月放送分の収録を行うが、インパクトの音に拘ってドライバーを打つつもりです。
週1度の5分間番組である。29年間、テーマはいつも1つ。
8月と9月放送はインパクトの音に徹して行こうと思う。
音でスウィングスピード変るのであれば幸いなる事。
やれば変化出来ると分っていてもやらないのが人の常。
簡単であれば出来るが、簡単でないのが変化の手段。そうなると面倒臭さが先に立つ。
しかし、音であれば簡単だ。
インパクト時の耳の位置を変えるか、集中を音に向けるか、インパクト直前直後の右肩の動きを少し変えるだけで聞える音は変って来よう。
それでスウィングスピード上って行くのなら幸いだ。
そして9月下旬収録予定の10月11月放送分ではグリーン上の眼の癖を語るつもりだ。
癖は人それぞれが持つ。
その事に気付いたのは3年前と記憶するが、やっと己の癖、他人の癖の整理は出来ました。
多くの方の協力を得た。
両の指、親指と人差し指を丸めて作った覗き輪で焦点位置の確認から始めた。
人は癖を持つ。
一律同じの癖ではない。
眼も上下左右焦点位置の癖を持つ事を知った。
その癖を生かせばパッティングラインは読み易くなる筈だ。
癖は生かすべきだ。
貴兄は1週間待て。
熊本の収録で分った事を来週稿でお伝え出来ると思う。
坂田信弘
昭和22年熊本生まれ。京大中退。50年プロ合格
週刊ゴルフダイジェスト2022年6月21日号より