【ゴルフ野性塾】Vol.1734「練習不足の時はグリーン手前から寄せ」
古閑美保、上田桃子など数多くの名選手を輩出してきた坂田塾・塾長の坂田信弘が、読者の悩みに独自の視点から答える。
今日5月19日、木曜日。
現在時、午前7時5分。
福岡の空は今日も晴れ。
昼の気温25度との予報を聞く。
長く籠り過ぎたとの想いを持つ。
福岡市中央区赤坂けやき通り15階のマンションに籠りて2年と4カ月。
体重が5キロ落ちた。
女房殿の作る糖尿病食が減量成功の原因であったと推察する。
そして運動不足だ。
「親父、そろそろゴルフ始めようぜ」と雅樹が言って来た。
何をするにも面倒の想いは持つ。
まずは大濠公園への毎日の散策を日課とすべきか。
片道1キロ、公園1周すれば2キロ。行きて戻りて4キロ。
5月26日と27日、6月2日と3日、テレビ熊本の収録が待つ。
変りなく過しております。
それでは来週。
第2打をダフれ。
何かが変る。
ラウンドとラウンドの間があくと、前半のハーフはまったく球が当たらない状態になってしまいます。場合によっては、18ホールまったく感じがつかめないこともあります。スタートホールからエンジン全開とは言わないまでも、せめて3ホールくらいで調子が出るようにするにはどうすればいいのでしょうか。(愛知県・北島剛樹・38歳・ゴルフ歴8年・平均スコア90)
貴兄と同じ経験を私もしている。
24歳でゴルフを始め、始めた時からプロを目指す研修生とゆう怖れを知らぬ図々しき鹿沼の研修生ではあった。
鹿沼の研修生の仕事はキャディ、朝夕のクローク、雑用の3つ。手引きキャディカートのタイヤ修理もやった。
土曜、日曜、祭日はスターター勤務であり、その時にゴルフ理論を考えていた。
平日でも来場者多き日は、朝は玄関からキャディマスター室迄のバッグ運び、そしてキャディ、終えて玄関でのバッグ手渡しで練習する時間はなかった。
一週間、ラウンドの出来ない日もあった。
その時、貴兄と同じ経験をした訳である。
理想はどこにでも転がっている。
研修生の理想は朝から晩迄の練習時間の確保だった。
それで給料貰って試合経費も出して貰うのが理想だった。
夢は見た。
朝、起きる30分前の夢だった。今日は3ラウンド回れるぞ、の夢だった。だが起きれば現実が待っていた。
毎日、何一つ変らぬ研修生の仕事。
7時には玄関に立ち、お客さんの車からバッグを取り出し、大きな運搬カートでキャディさんの待つキャディマスター室前に運ぶクローク業務。
夢も理想も眼が醒めれば姿を消す日々であった。
プライドとか、好き嫌い言ってたんじゃ研修生は無理だ。
命じられた仕事に忠実でなければ研修生稼業は続かなかった。
私は不平不満を持たぬ研修生だった。ゴルフ始めて3カ月の身である。
それでも週3回、仕事を終えて9ホール回れる日はあった。
来場者少なければクローク業務も早く終る。
曲り幅の少ないラウンドが出来た。
これが一週間、コースラウンド出来ないと球は大きく曲った。
何故、と考えた。
気持ちの持ち様か、練習不足か、と考えた。
練習不足は慢性的なものだった。
練習球打てるのは朝6時50分迄であり、週休日は朝から晩迄打てたが、それだけでは不充分だった。
研修生になって3カ月過ぎた時と記憶する。
1月正月明けの暇な時だった。
夕刻の南1番ホール、ティーショットは右ラフだった。
サンドウェッジの第2打をダフった。大ダフリだった。
第3打のアプローチは30ヤード残っていたと記憶するが、このアプローチがピン手前にベタ寄りした。
2番パー5の第3打もダフった。
練習が出来ていないと私はダフった。
ドライバーはダフってもテンプラボールになって飛んで行くから痛くはないし、悔いも反省も必要なかったが、アイアンのダフリは痛かった。
ダフリを警戒してもダフった。
20ヤードの第4打が残った。
その第4打、簡単に打った様な想いを持つ。
寄った。
ピン手前のベタ寄りだった。
3番のショットもダフった。
第3打が寄った。
4番も5番の第2打もダフった。5番ホールは砲台グリーンであり、鹿沼36ホール中、5本の指に入る難しいグリーンだったが、これもベタ寄りした。
そして気付いた。
練習不足、アイアンの距離不足の時はグリーン手前の寄せ有効となるのでは、と。
6番はパーオンした。
2パットパーで収まった。
7番、8番、9番とパーオンを外した。
グリーン手前からの寄せが上手く行った。
パーオンしたのは1ホールだけでパープレーで回っていた。
1週間後、キャディさんが言って来た。
「坂田君、ゴルフ急に上手くなったんだって? ゴルフ始めて4カ月経ってないのに昨日の従業員コンペで2オーバーで回るなんて凄いじゃない。上手くなるコツ教えてよ」
「マグレです。イヤな距離が入っただけです」
前の週は忙しい週だった。
練習出来ていなかった。
ピン迄150ヤードの第2打、ダフった。
それがペタッ子、ペタッ子と寄った。
ゴルフクラブ14本の中で一番自信を与えてくれるのはアプローチだと思う。
私はささやかな自信を得ていた。
貴兄へのアドバイスだ。
ラウンドの時間取れない時、そしてラウンドの機会、訪れた時、グリーン手前に打って行くのもいいのではと思う。
その時は簡単に打て。
何としてでも寄せてやるの気構えはプレッシャーを強め、体の動き、不調和を抱くと思う。
アドレス時、顎を引いてはいけない。
頭の前傾強くするのも駄目だ。
顎を引けば両の腕の前腕に硬化が生じる。
顎は浮かせ、気道を広げるべきである。
確かにパーオン狙える処からグリーン手前に打って行くのは勇気要るが、私は偶然が与えてくれたアプローチでパープレーで回った者である。
そしてゴルフ始めて10カ月で栃木県アシスタントプロ研修会に出して貰い、その時は88・76の164で後ろから3番目の順位だったが、次の月の研修会で優勝し、ゴルフ始めて3年と11カ月でプロテストに通った。
偶然も必然も理想も現実も転がっているものと思う。
ゴルフ始めたのも偶然ならば、物書き稼業、ジュニア塾開塾、大手前大学ゴルフ部創設も偶然の出会いが生みしものであった。
ただ、偶然を偶然と取るか、必然と取るかは人それぞれであろう。私は偶然と取って来た。
貴兄は第2打をダフれ。
思いっ切りダフって行け。
それで変るものがあると思う。
ダフるは勇気だ。
己を変える時である。
怖れるな。
坂田信弘
昭和22年熊本生まれ。京大中退。50年プロ合格
週刊ゴルフダイジェスト2022年6月7日号より