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【ゴルフはつづくよどこまでも】Vol.66「沈黙は金なり」

高松志門の一番弟子として、感性を重んじるゴルフで長く活躍を続ける奥田靖己。今週もゴルフの奥深い世界へと足を踏み入れていく。

PHOTO / Masaaki Nishimoto

前回のお話はこちら

あるプロアマでトップクラスのアマチュアとまわったときの話です。「ゴルフダイジェスト、いつも読んでます」とスタート前に僕のところに挨拶に来ました。それで「プロの足を引っ張らないように気をつけます」と言うので、「いやいや、応援してますから、ええスコアでまわってください」と言ってスタートしました。

年のころは50歳前後ぐらいで、ドライバーは僕より飛ぶし、ゴルフの腕はたいしたもので、いわゆるスクラッチプレーヤーです。

スタートホールこそちょっとしたミスでボギーでしたが、すぐにバーディで取り戻すという腕前です。せやから、途中でそのシングルさんがオナーになることもありました。

ティーショットでポジションを取っていかなあかん難しいホールで、彼のボールが林のなかに飛んでいき、コン、コンと何度か木に当たる音がして、ホール側に出て来たのです。


「ウワ~よかったな、キャディさん。危なかったわ」とボールが出てきた途端にはしゃいでおるのです。次は僕が打つ番です。僕自身も「このホールはちょっとヤバイな」と思っておるところで、声に出して言われてしまうと、ほんまに打ちにくくなってしまいます。

それからも、「わっ、切れた」とか「メンバーやのに3パットや」とか、いろいろ言うので、しまいには僕も「ナイス」なんていう言葉も出なくなってしまいました。

翌日も組み合わせが変わってプロアマ続行です。朝、そのシングルさんがまた挨拶に来て「昨日はありがとうございました」と言うので、僕は「お疲れ様でした。ええゴルフしてはりましたね」と言うたら、「何か、どっか悪いところはありませんでしたでしょうか」と言うので、「ここで言うたったほうが彼のためかな」と思って言いました。

「いや、悪くはないのですけど、ゴルフはええですよ。せやけど、何番ホールかで球が曲がったときに『ウワ~よかった』とか声を出しておりましたよね。あれ、4番バッターならええのですけど、トップバッターではあかんのです。次は僕の番です。ものすごく打ちにくくなります。これからゴルフの勉強をしはるなら、黙ってまわり」と言ったのです。

そのシングルさんは「ありがとうございました。これからは気をつけます」と言っておったので、僕が言いたかったことを理解してくれたと思います。きっと、ええゴルファーになるでしょう。

スウィングの「間」と同じくらい声を出す間も大事

奥田靖己

おくだせいき。1960年、大阪生まれ。93年日本オープンなど6勝。シニアで2勝。ゴルフの侘び寂び、温故知新を追求する

週刊ゴルフダイジェスト2022年2月1日号より