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【笑顔のレシピ】Vol.109「大人と子どもの距離は知らず知らずのうちに開いていく」

メジャーチャンプ・渋野日向子を育てた青木翔が“コーチング”のこだわりを語る連載「笑顔のレシピ」。ゴルフだけでなく、仕事や育児などでも役立つヒントが満載!

TEXT/SHOTANOW

前回のお話はこちら

先日、僕のコーチングを受けたいとやって来てくれた子と話していて、ハッとしたことがありました。彼女は10代の女子で、僕はいつものように人となりを知るためにフランクな話から始めました。

でも、顔は明らかに頑張っており、よく見るとひざを震わせています。なにか嫌な思いをしてまで、僕のところに来ているのではないか。そう思いよくよく話を聞いてみると、自分でも考えられないくらい緊張していているとのこと。

ゴルフが本当に好きで上手くなりたくて、僕のところにやって来てくれていたのです。

しぶこの全英女子オープン優勝をテレビで見て、僕がコーチとしてバッグを担いだことも知っていました。ありがたいことに僕はメディアにも露出しているため、遠い存在と思い、その人といきなり話すことでなかばパニックになってしまったようでした。


これは極端な例ですが、最近はコーチを始めたころと比べ、子どもたちとの距離が開きやすいと感じています。僕が20代のときは選手との年齢差は数歳でしたが、中学1年生と今の僕では25歳も離れており、それだけでも遠い存在と認識されてしまいます。

以前は年の離れた友だちのような距離の詰め方ができましたが、これからは別の方法を取らなくてはならないでしょう。今は、「ゴルフにまったく関係のない日常の悩みも聞いてあげられる便利な大人」くらいの存在がちょうどいいのかなと思っています。

同じ年齢でも男女では精神的な年齢が違い、流行っているものもまったく異なります。ティーンの流行を追いかけるのはなかなか大変になりそうですが、相手を理解し信頼されるというのは、そういったことの積み重ねでしかないと思います。

こちらが変わっていないつもりでも、相手にとってはそうじゃない。自然と開いていきがちな距離をちゃんと詰められるようにしたいと思った出来事でした。

自分の言うことを理解してもらうためには、まず相手のことを理解することから(PHOTO/Hiroaki Arihara)

青木翔

あおきしょう。1983年生まれ。福岡県出身。渋野日向子をメジャーチャンプに導き、三ヶ島かななどツアープロや、全国トップレベルのジュニアゴルファーの育成に努めている

週刊ゴルフダイジェスト2022年1月11・18日合併号より

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