【笑顔のレシピ】Vol.108 「子どもへの質問に親がカットイン。その行動が、成長を阻害しているのかも」
メジャーチャンプ・渋野日向子を育てた青木翔が“コーチング”のこだわりを語る連載「笑顔のレシピ」。ゴルフだけでなく、仕事や育児などでも役立つヒントが満載!
TEXT/SHOTANOW
僕はアカデミーに新たに入りたいという子とは、できるだけ時間を作って話し合い、お互いを理解するようにしています。ただ技術を教えるだけなら必要のないことかもしれませんが、僕は選手本人の考え方であったり、その子が夢をかなえる道のりをサポートしたいので、この過程はとても大切にしています。
話すのは「ゴルフ好き?」とか、「どんな選手になりたい?」とか、「今、困ってることってなんだろう?」のような話です。最初から技術的な難しい話は、あまりしないかもしれません。
それは、答えの内容よりも、どんな言葉や表情で僕に伝えようとしているのかを見るためです。そこから人となりを理解して、接し方をなんとなく決めていくということをしています。
最初のコミュニケーションで困るのは、僕がした質問に対して、親御さんが答えてしまうこと。「この子は今、かくかくしかじかで……。そうよね、〇〇くん?」のようなお母さまがけっこういらっしゃる。僕も最初なので気長に本人の答えを待ちますが、質問をするたびに親御さんがカットインして答えてしまっては、何の情報も得られません。
そういうときは「お母さんはちょっとお外で」と、速やかにご退席をいただくようにしています。ご本人にはまったく悪気はないでしょう。そればかりか、少しでも我が子のことを理解してほしいという親心ゆえの行動なのはわかっています。
ただ、これを繰り返してしまうと、いつまでも自分の言葉や行動で想いを伝えることができません。たとえ内容が間違っていたり曖昧でもいいので、自分の気持ちがどうしたら伝わるか考えることが大切なのです。
親御さんにとっては、子どもに深く関わっていたほうが安心感があるでしょう。ただ、子どもの成長というのは、大人の関わりが減っていくことでもあります。
僕自身もコーチをしていて、手離れはうれしくもあり寂しく感じることもありますが、そこはこらえて本人の選択を尊重してあげてほしいと思います。
青木翔
あおきしょう。1983年生まれ。福岡県出身。渋野日向子をメジャーチャンプに導き、三ヶ島かななどツアープロや、全国トップレベルのジュニアゴルファーの育成に努めている
週刊ゴルフダイジェスト2022年1月4日号より