【笑顔のレシピ】Vol.106「毎日続けることも大事ですが、時には“勇気ある休み”も重要です」
メジャーチャンプ・渋野日向子を育てた青木翔が“コーチング”のこだわりを語る連載「笑顔のレシピ」。ゴルフだけでなく、仕事や育児などでも役立つヒントが満載!
TEXT/SHOTANOW
子どもは気分屋です。火が付くのも早いけれど、冷めるのもまた早い。体も脳みそも、まだまだ持久力が備わっていないので仕方ありません。
そのため僕は、心身どちらとも疲れて集中できなくなっているなと感じたら、無理に練習を強いることはしないようにしています。
無理強いをしても、高いパフォーマンスは出ませんし、ゴルフがつまらなくなってしまい熱が入ることはありません。冷める前のように夢中になってもらいたいなら、急がば回れ。本人がまたやりたいと思うまで待つのが最善なのです。
これは成人したプロでも同じ。子どもほど、気分やモチベーションの波は激しくないものの、アップダウンは確実にあります。
どんなに技術レベルが高くても、心身ともに落ちているときに強引に上向きにしようとハードな練習をすると、長く停滞してしまうことにもつながります。
だから僕は、本人がハードワークを望んでいても、あえてゴルフから離れる提案をすることもある。離れるときは徹底的にやることを勧めます。中途半端に練習量を減らすくらいなら、クラブを握らないほうがいい。
そうすることで、またゴルフの楽しさや、上手くなりたいという渇望が生まれてきます。自分が作り出した上向きの気持ちのエネルギーは、低迷期に強引にやる練習の何倍も強いのです。
少し前も教え子の梶谷翼に、2、3日ゴルフから離れることを勧めました。彼女はこれまで、数日続けてクラブを握らなかったことがなかったようで、初めての“ゴルフ離れ”。この経験がキャリアにどのように影響するのかわかりませんが、貴重な経験として生かしてもらいたいと思います。
一生懸命になってきたものだからこそ、そこから離れる期間を作るのはとても怖いことだと思います。ただ、長い人生の中の数日は、ほんの砂粒みたいなもの。時には選手以上に勇気をもって、ゴルフから離す提案をするのもコーチの役割なのです。
青木翔
あおきしょう。1983年生まれ。福岡県出身。渋野日向子をメジャーチャンプに導き、三ヶ島かななどツアープロや、全国トップレベルのジュニアゴルファーの育成に努めている
週刊ゴルフダイジェスト2021年12月21日号より