【ゴルフせんとや生まれけむ】松崎しげる<中編>「バンカーが好きなのは林由郎先生のおかげ」
ゴルフをこよなく愛する著名人に、ゴルフとの出合いや現在のゴルフライフについて語ってもらうリレー連載「ゴルフせんとや生まれけむ」。今回の語り手は、前回に続き歌手の松崎しげる氏。
若くしてゴルフにハマったころ、同時に仕事が忙しくなってきて、ドラマの海外ロケやコンサートツアーなどで世界中を飛び回るようになりました。23~24歳の頃だったかな。その頃は本当ならゴルフをやる時間なんて取れそうになかったんだけど、時間がないからこそ余計にゴルフをやりたくてスケジュールをやり繰りして週に何度もラウンドしてたなあ。
特にコンサートで全国を回っていたときは、ゴルフ、コンサート、ゴルフと、コンサートの合間にゴルフをやっていたというよりもゴルフの合間にコンサートをやっていたという感じ(笑)。北海道から沖縄まで、やっていないところはないくらい回っています。若くて体力もあったからだろうけど、今思うと、よくそんなにできたもんだと我ながら感心しますね。
海外もアメリカ本土、ハワイ、イギリス、カナダ、スペイン、それに同じ高校(日大一高)の出身ということもあって可愛がってもらっていた大橋巨泉さんの別荘がオーストラリアのケアンズにあったから、そこでもしょっちゅうやらせてもらいました。もちろん国内にもいいゴルフ場はたくさんあるけど、やっぱり海外のコースは雄大でロケーションが素晴らしく日本とは違った魅力がありますよね。
なかでも自慢はスコットランドのセントアンドリュースオールドコースでプレーしたこと。その年の全英オープンの会場になっていて、柴俊夫さんと一緒にテレビ朝日のナビゲーターを務めたんです。
現地に着いたのは夕方の4時ですが、夜の9時くらいまでは十分明るいんですよ。しかも運がいいことに「今からならプレーできますよ」というじゃない。もちろん喜び勇んで回ったよ。僕も柴さんも92といういつものラウンドと比べれば喜べるようなスコアじゃなかったけど、あのセントアンドリュースでプレーできたというだけで大感激。一生の思い出になったね。
そうそう、この日、僕はこれでもかというくらいバンカーにつかまりました。あの有名な17番の“トミーズバンカー”もしっかり経験済み(笑)。でも、バンカーショットが得意なボクはバンカーが大好きだから、とにかく楽しかった。
僕がバンカーショットを好きになったのは実は林由郎先生のおかげなんです。林先生といえば、ジャンボ尾崎さんや青木功さんにゴルフのイロハを教えたレジェンドともいえる人。若い頃、ある人の紹介で知り合い、何度となくプライベートで回ってバンカーショットを徹底的に教えてもらいました。
「バンカーショットはな、足をグッと構えて動いちゃダメなんだあ。それでパーンと打ちゃ出るんだよ。オレはよお、青木にもジャンボにもこうやって教えたんだあ。あいつらがバンカーがうめえのはオレのおかげなんだぞ」。先生はトレードマークともいえるべらんめえ口調で話していらっしゃいましたね。
オヤジに「林先生に教えてもらった」といったら驚いて「お前、神様みたいな人と一緒にやっているんだな。普通は林先生とはできないぞ。芸能人になってよかったなあ」と羨ましそうな顔で言っていたけど、僕も心の底からそう思いました。
(つづく)
松崎しげる
1949年、東京都江戸川区生まれ。歌手として「愛のメモリー」、俳優としても「噂の刑事トミーとマツ」などヒット作多数。こんがり肌がトレードマーク。ベストスコア71
週刊ゴルフダイジェスト2021年11月9日号より