【笑顔のレシピ】Vol.100「とにかくやれ!」では今の子たちには伝わりません
メジャーチャンプ・渋野日向子を育てた青木翔が“コーチング”のこだわりを語る連載「笑顔のレシピ」。ゴルフだけでなく、仕事や育児などでも役立つヒントが満載!
TEXT/SHOTANOW PHOTO/Hiroyuki Okazawa
昔からある格言やことわざには、いつの時代も変わらない真理が宿っているもの。ただし、現代の子どもは「ちゃんと理屈まで説明しないと、納得して取り組まない」という特徴があります。先人のありがたい言葉を聞いても、昔の人はそうかもしれないけど、自分とは考えが違うし……、と受け入れない可能性があるんです。
以前なら、「“継続は力なり”という言葉があるように、続けることは大切だからとにかく毎日やれ!」という一言で済んだコミュニケーションも、今はそう簡単にはいきません。継続するとどんなことが起きるかを、ちゃんと説明する必要があります。
例えばアプローチの練習を毎日続けていれば、スウィングの再現性が高くなります。さらに同じ動きを繰り返すことで、ミスショットが出るときの原因も分かるようになるでしょう。加えて、これだけやったんだからという自信がついたり、やり続けると決めることでゴルフに対する覚悟も備わってくるはず。
このように、やったほうがいいことにはそれなりの理由が詰まっています。ただ、「とにかくやれ!」と言われて育った昭和世代の僕らは、その理由を深く考えたり、相手に説明したりする癖がついていません。
だからジュニア選手に伝えるときは、改めてなぜやるべきなのかを考えてメリットを説明する。これは教える側のトレーニングにもなります。感覚でやったほうがいいと勧めていたことに裏づけがあれば、アドバイスも的確になります。
慣れてくるとそのメリットを、どんな順番や方法で説明したら相手に一番伝わりやすいかまで、考えられるようになるでしょう。
この連載はおかげさまで今回で100回目を迎えました。自分の考えをアウトプットし続けることで、僕自身の頭の整理にもなっています。
こんなふうに、自分の体験を交えて伝えてあげるのも、相手の納得度を上げる方法のひとつです。
青木翔
あおきしょう。1983年生まれ。福岡県出身。渋野日向子をメジャーチャンプに導き、三ヶ島かななどツアープロや、全国トップレベルのジュニアゴルファーの育成に努めている
週刊ゴルフダイジェスト2021年11月2日号より