【笑顔のレシピ】Vol.99 比較すべき相手は、ライバルではなく1年前の自分
メジャーチャンプ・渋野日向子を育てた青木翔が“コーチング”のこだわりを語る連載「笑顔のレシピ」。ゴルフだけでなく、仕事や育児などでも役立つヒントが満載!
TEXT/SHOTANOW
最近、「比較する」ということが、悪いニュアンスで使われるようになっているなと感じます。
スポーツに限らず、「周りと自分を比較しているうちは、本質に気づけない」とか、「幸せを見つけられない」などなど。でも、比べちゃいますよね?
それは選手も同じで、比べるなというのは無理。ただ、僕はコーチとして「何を比べるか」と「誰と比べるか」をしっかり話すようにしています。
まず、「何を比べるか」について。ゴルフはスポーツである以上、結果の差は出ます。でも、その結果を比べて、取り組んできたことの良し悪しの判断をしてほしくはありません。
なぜなら、結果は自分でコントロールできないからです。たとえば、しっかりと準備して臨んだショットでもミスは起こるし、曲げても傾斜でフェアウェイまで戻ることもある。試合結果もこれと同じです。ベストを尽くしても上手くいかないこともあれば、いろんなラッキーが重なることもあります。もし比べるなら、何をやってきたかという過程の部分に目を向けてほしいと思います。
そして比べる対象もとても大事。ゴルフは個人競技ですが、アカデミーでは同じくらいのレベルの選手と接する機会が増えます。大会に出れば、顔なじみもできるでしょう。こういった存在はよきライバルにもなりますが、時として、尻ごみをしてしまう比較対象にもなります。自分の調子が悪い時ほど「あの子は上手」、「いつも上位にいる」と考えてしまうのです。
そんな時は、目線を自分に向けてほしい。半年前、1年前の自分と比べて今はどうか。停滞してしまっている部分もあるでしょうが、子どもは成長のスピードが早いので、できるようになったことは必ずあるでしょう。
親御さんやコーチは、応援してあげる気持ちが強いほど、結果に対して一喜一憂して周りと比べがちです。そこは、頑張ってきた過程に目を向け、少し前の本人と比べることで、成長を実感してほしいと思います。
青木翔
あおきしょう。1983年生まれ。福岡県出身。渋野日向子をメジャーチャンプに導き、三ヶ島かななどツアープロや、全国トップレベルのジュニアゴルファーの育成に努めている
週刊ゴルフダイジェスト2021年11月2日号より