【ゴルフ初物語】Vol.50 「キャディバッグが〇個積める」謳い文句の先駆けはホンダ?
車の荷室容量の大きさを表すとき、「キャディバッグが〇個積める」と表現することが多いが、そうした表現はいつごろ、どのメーカーから始まったのだろうか。そのヒントは1965年の週刊ゴルフダイジェスト創刊号にあった。
キャディバッグが2個積めた“エスロク”
1946年に本田技術研究所を開設し、48年に本田技研工業を設立した本田宗一郎。自転車用の原動機、次いでスクーター、そしてオートバイの生産に進出すると、オートバイの世界レースに参戦。3年目で並み居る世界の強豪たちを破って初優勝し、“世界のホンダ”として認められるようになる。58年からは四輪車の開発も始め、ホンダ初の市販乗用車として63年に発売されたのが「S500」だった。
二輪メーカーがあえて四輪へ参入するには、“世界一”のものを作らなければ意味がないと、二輪で世界の頂点を極めたレーシングテクノロジーを投入し、当時では世界的にも珍しいDOHC・4キャブレターエンジンを搭載。45万9000円という破格の安さもあり、世界的に注目を集める。だが、小排気量ゆえのトルクの細さは否めず、デビューしてからわずか半年で、531 ccから606 ccへの排気量アップを図った「S600」を発売。最高出力57馬力で最高速度は約145キロ。これは倍近い排気量を持つ1200 ccクラスに匹敵するスピードで、その年の5月の第2回日本グランプリでは1〜6位を独占するという圧倒的な勝利を収めた。
コースまでの移動やキャディバッグを持ち運ぶ必要から、ゴルフと自動車は切っても切り離せない。65年5月の週刊ゴルフダイジェスト創刊号に掲載された「S600」の広告では「高速でも安定した走行」と走行性能の高さだけでなく、「広いトランク、ゴルフバッグが2個入ります」とトランクの広さも強調。現在でもホンダのホームページでは「Honda GOLF」というサイトがあり、そのなかでホンダ車各モデルにキャディバッグが何個載せられるか、効率のよい積み方を検証している。
「S600」の広告が掲載されていた1965年5月10日発行の「別冊ゴルフダイジェスト」5月臨時増刊号。これが週刊ゴルフダイジェストの創刊号とされている。表紙は女優の鰐淵晴子だった
週刊ゴルフダイジェスト2021年8月17日号より