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【世界基準を追いかけろ!】Vol.47 コーチがいないのはバッバぐらい? 米ツアーのコーチング事情

TEXT/Masaaki Furuya ILLUST/Koji Watanabe

松山英樹のコーチを務める目澤秀憲、松田鈴英のコーチを務める黒宮幹仁。新進気鋭の2人のコーチが、ゴルフの最先端を語る当連載。今回はPGAツアーの事情について話してくれた。

前回のお話はこちら

GD マスターズ優勝を境にして、周囲の見方なども含めて、何か動きや変化はありましたか。

目澤 僕もいろんな人から声を掛けられるようになりました。コーチのショーン・フォーリーからは、「ヒデキはスウィングがすごく良くなったね」と言われましたし、あと選手でいえばJ・トーマスとかR・マキロイ、B・デシャンボーらが握手をしながら「本当に凄いことやったね」と声を掛けてくれました。松山選手が達成したことではありますが、すごく嬉しかったですね。

GD 松山英樹のコーチとして認められたわけですよね。実際に、PGAという世界の最高峰の舞台でのコーチ業には慣れましたか。

目澤 まだまだこっちに来て半年ですから、慣れたとは言えないですよ。勉強することはいっぱいですし、日々、松山選手とのやり取りだけで精いっぱいで、なかなか自分に余裕はありません(笑)。でもPGAツアーの他のコーチを見ていると、なかには何人もの選手を抱えているコーチもいます。そういうコーチたちは、各選手とそれぞれ時間を決めて時間を分けて仕事をしている。売れっ子のコーチだと、選手がコーチに時間を合わせている人もいます。そのやり方が新鮮でした。

GD ビジネスライクといってしまうと何か否定的な感じを受けますが、情を挟まずに仕事に向き合っているとみれば合理的な感じがします。PGAではやはりコーチをつける選手が多いのですか。

目澤
 ランキング上位でコーチをつけていない選手ってバッバ・ワトソンくらいじゃないですかね。みんなコーチがついています。上位選手でも、ちょっと気を抜くと落ちていく競争が激しい世界ですからね。R・ファウラーも、調子を落として、ワールドランクトップ50を外れました。そこからなかなか上位に上がってこられず苦労していますよね。5月あたりから度付きサングラスをかけて、視力低下で見えにくかったボールが見えやすくなったといいます。

GD そういうときに、コーチや周囲の手助けが必要になってくるわけですね。

目澤 輝かしい世界に見えますが、こちらの選手もやっぱり苦労しているんです。あれだけ強かったJ・スピースも2年ぐらい低迷していましたからね。でも、コーチのキャメロン・マコーミックと地道に練習を重ねて、見事に復活しました。PGAツアーは本当に層が厚くて、ランキング80位とか90位あたりにいる選手もレベルが高い。毎度のごとく上位に入ってくるケビン・キズナー(※1)とかジェイソン・コクラック(※2)らは、練習場でスーパースピードゴルフのスティックを振って、地道にヘッドスピードを上げようとしていました。やっている練習が明確で、自分の弱いところをひたすら強くしようとしています。

GD マスターズ以降の松山プロのモチベーションはどうですか。

目澤 スウィング面やパッティングなど、やることはシーズン前半と基本的に変わっていません。モチべーションに関しては、相変わらず高いですよ。

(※1)ケビン・キズナー =98年米カリフォルニア州生まれ。06年プロ転向。PGAツアー3勝。世界ランキング48位、FedExCupランキング60位。(※2)ジェイソン・コクラック =85年カナダ生まれ。08年プロ転向。PGAツアー2勝。193センチ、108キロ。世界ランキング24位、FedExCupランキング9位。(※3)スーパースピードゴルフ=クラブ状のスティックの先端にそれぞれ3つの重さの異なる重りを装着。軽いクラブから順番に重いクラブへと素振りの強度を段階的に上げていくことでスウィングスピードを向上させる練習器具

目澤秀憲

めざわひでのり。1991年2月17日生まれ。13歳からゴルフを始め、日大ゴルフ部を経てプロコーチに。TPIレベル3を取得。2021年1月より松山英樹のコーチに就任

黒宮幹仁

くろみやみきひと。1991年4月25日生まれ。10歳からゴルフを始める。09年中部ジュニア優勝。12年関東学生優勝。日大ゴルフ部出身。松田鈴英、梅山知宏らを指導

週刊ゴルフダイジェスト2021年7月27日号より