【ゴルフ野性塾】Vol.1691「ゴルフとは一夜漬けのゲーム」
古閑美保、上田桃子など数多くの名選手を輩出してきた坂田塾・塾長の坂田信弘が、読者の悩みに独自の視点から答える。
晴れている。今日6月24日、
白き雲がギラつく梅雨明けの空ではないが、東の山の上に浮かぶ雲に少しのギラつき生じて来た様な気がする。
昨日は浮かばないが、フッと10年前を想う事がある。
昨日の夕食、何を食べたかを考える時、少しの時間必要となるが、10年前のあのきつねうどん旨かったな、との想い生じるは瞬時だ。
私は食堂のテーブルで原稿を書くが、東と南の街と山を時折、眺めながら執筆を続ける。
西と北は見えない。
大きな雲、浮んでいる時、この景色、どこかで見た景色と思う事がある。
沖縄、那覇の景色が重なった。
現在時、午後1時31分。
東のビル、南寄りの日射しを受けて輝く。
赤と白のビル建築のクレーン機が東の街に4台立っている。
3週間前は3台だったと思うが勘違いか。
飛行機過ぎる音が聞える。
しかし、機の姿は見えない。
見えたッ。南から北へ向って着陸態勢の飛行機一機、ゆっくりと降りて行く。
ただ、この機は3分以上前に私の住むマンション上空を通り過ぎし機である。まだ、上空から音が聞えて来る。
1年半前の日々、戻り始めたのかと思う。
空向くクレーンが美しい。
梅雨の最中の晴れの一日。
女房殿、洗濯で忙しそうだ。
でも、腹減った。
体調良好です。
高いティーアップで安定度が増す。
ゴルフを始めてからスライス、フェード系で、いままでは練習場の右寄りの打席からフェードを打っていましたが、2年かけて持ち球をドローに変えました。いまは左端の打席から右に打ち出して戻すような球を練習しています。コースラウンドで、アイアンのこすり球は出なくなりましたが、ドライバーでときどき左に引っかけます。このままドロー打ちの練習を続けていいでしょうか。(宮城県 後藤宏樹・48歳・ゴルフ歴16年・平均スコア86)
スウィング型か、振りの感覚を変えればスウィング改造となり、スウィング改造の後に球質、球筋、飛距離の変化が生まれる筈だ。
それは型の変化であり、感覚の変化でもある。
逆に球質、球筋を求めて球を叩き続ければスウィングの型と振りの大きさ、そして新たな振りの感覚が生れ、結果はスウィング改造と同じ地点に達するであろう。
スウィング型を変え、振りの感覚に新たなものを求めるか、球質、球筋を求め行くかなれど、いずれを求めるにしても変化の先に進化在りの結果が生じると思う。
問題はいずれを求めるか、いずれの手段が己の体・技・心に合うかであろう。
多くの方が変化を求めた。
プロ、アマ含めてだ。
しかし、優先順位が明確でなかった。
そして、変化の先に戻ろうとした。
人間の体・技・心、過去に戻る事は出来ぬと思う。
ならば目指すは明日だ。
特に50歳過ぎれば明日を目指すが最善と考える。
若い頃はの一言、昔はの一言は郷愁であり、悔いであり、未練であり、無いものねだりである様な気はする。
誰にでも若い頃はある。
老いを自覚する時も訪れる。
稽古事、鍛錬事、修行事、継続事、付き合い事に、若い頃はと昔はの一言を口に出さぬ我慢と自覚は必要と思う。
私にはスウィングの変化を求めた時があった。
球質、球筋の変化を求めた時もあった。
結果を申せばスウィングの変化を求めた時の方が短い期間で新たな球質、球筋を得る事が出来た。
球質、球筋を求めた時は球質と球筋の安定度に不安を覚えた。
スウィング型、変えた時の方が安心して打てた記憶を持つ。
貴兄は体・技・心の心を利用しての球質と球筋の変化を求めて来られたと推察するが、その努力、立派なものと思う。
間違ってはいない。
遠回り、結果を見れば近回りの努力が明確な結果を生んでいる様に感じる。
練習に於てもコースラウンドに於ても集中と根気は要るが、その集中と執着を生むは体力である。
プロの試合、最終日のスコア伸ばせるか否かは集中力と執着力次第と考えるが、体力ないと集中と執着の力は続かぬものだ。
闘争力を生むのも体力である。
だから、稽古事も修行事も体・技・心から始まって、途中、技・心・体、あるいは心・体・技、心・技・体への優先順位の変化はあっても最後は体・技・心に辿り着くと思うが、貴兄はバランスに長けたる体・技・心の方と思う。
今のままでいい。
練習場の打席位置を変えての球筋と球質の変化、集中と執着の花、咲き始めたと推察する。
ドライバーのヒッカケ球への不安と悩みなれど、ティーの高さを変えてみてはどうか。
ティーの高さを変えて最初に変るのは呼吸の深さである。
人は吸う息、吐く息の呼吸を意識して一日を過しはしないと思う。自然のまま、然さり気ないまま、無意識の呼吸で過しておられる筈。
私は昭和58年11月にスポーツニッポンでペンを持ち、昭和59年5月に本誌に宇部ペプシトーナメントの自戦記を書き、そして8月に特集「OB論」を書き、その2週間後、連載「過激ラウンド」の執筆を始めたが、今日、貴兄の質問稿を書く途中、気付いた事が一つあった。
それ迄の38年間の執筆期間中、気付かぬ事だった。
マス落して書き始め、マル止めでその行数を書き終えた時、ハーッと深い息を吐いていた。
そして、改行して次の行に移った時、浅い吸う息で次の行を書き始めていたのです。
熊本、テレビ熊本の収録、呼吸で球質、球筋の変化作れるかを試した。
鼻で吸う息、口で吸う息、口の左側で吸う息、右側で吸う息と試みた。
結果は出た。
呼吸で球質、球筋、飛距離変る事が分った。
呼吸はやっぱし大切だった。
ドライバーの練習、高いティーで打つとバックスウィング始動時の吸う息は深くなる。
低いティーだと浅くなった。
深く吸う息でスウィング始動すると、10球中7球は右へ出た。
浅く吸う息で打つと10球中6球はドローした。残り4球は微妙な違いはあってもストレート球質で飛んでいた。
ドロー打ちの私が日頃よりも高いティーの高さで打つと右へ飛んでいた。スライスも出れば右へのスッポ抜け球も出た。
貴兄へのアドバイスである。
高いティーで打て。
それで変るもの、あると思う。
再びの葉書を待つ。
基本、ゴルフは一夜漬けのゲームと思う。
1年先、2年先の変化と結果と成功を期待して練習される方、おられるのだろうか。
私は明日を期待した。
体作りには時間が要る。
しかし、球を叩くスウィング、感性、いずれもすぐなる変化生む事、出来ると思う。今日の練習は明日の成功の為と思って来たから練習続ける事が出来た。
1年先、2年先の成功の為の練習なんて考えなかった。
10年先の為にこの練習が要ると言う人の言葉とレッスンを私は信じない。
球1球で変える事の出来るのがレッスンだと思っている。
あとは練習の積み重ねから生れる自信と安心感を掴みに行くだけだ。
然れば安定感も生れよう。
高いティーで打て。
それで貴兄のドライバーの安定度は変ると思う。
坂田信弘
昭和22年熊本生まれ。京大中退。50年プロ合格
週刊ゴルフダイジェスト2021年7月13日号より