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【ゴルフ野性塾】Vol.1686「怒りの球を打て、と塾生に教えた」

古閑美保、上田桃子など数多くの名選手を輩出してきた坂田塾・塾長の坂田信弘が、読者の悩みに独自の視点から答える。

プロゴルファーのドライバー

飛距離が280ヤード超えるのは当り前。
150ヤードのアイアンショットがピンに向って飛んで行くのも当り前。
グリーン中央に切られたピン位置への18ホールのパーオン率が70%超えるのも当然であるし、バンカーからは一度の脱出でピン3メートル以内に寄せて来るのも当り前の話だ。
そんなゴルフを見てラウンド80を切れぬ人は思う。
「上手い。だけどどうして試合に出られないの? 出てもどうして予選通らないの? 予選通ってもどうして上に来られないの?」
そのプロを応援する人は呟く。
「性格が優し過ぎるのさ。人1人か2人しか通れない道に100人のゴルフを生業とする人間が集うんだ。押し合い、蹴っ飛ばし合い、殴り合いの出来る者でなけりゃ道の真ん中を歩くのは無理だ。気の弱い者は、自分の腕力に自信持たなきゃ相手と戦う気にもなれないだろう。優しい性格の者には無理なんだよ」
私も言われた。
坂田は人が善過ぎる。
あの性格はプロ向きじゃないと。

怒りが最後のひと山を越える力になる。 

プロになった者は持つ。
負けず嫌い、自分の長所と短所を認識する冷静さと向上心、そしてゴルフ好きとゆう気持ちを。
だが、その三つの気持ちにもう一つ必要なものある事に私は気付かなかった。
今は分る。
四つ目に必要なる気持ちが。
それは怒りである。
小学、中学、高校とお互いが周りから期待されていた。
だがプロになった後、一人はツアー参戦に成功し、一人はツアー参戦に失敗した。
原因は何か?
優しい性格が失敗の原因ではなかった。
負けず嫌いは優しい性格を隠す。
でも、私の知る限り、優しい性格持つ者の方が成功している。
きつい、我儘な性格持つ者の方が成功の確率は低かった。
優しい性格が成功しない理由、それは怒りを持っていたか否かであった。
周りは気を遣う。
予選落ちを続けたり、予選通っても上位に入れない成績には寄らず触らずの距離と会話が生じる。
気を遣ってくれているのが分る。私も経験した事なれど、それって結構辛い事だった。
どうして自分は下手なんだ、どうして同じミスの繰り返し続けているのだ、自分の実力、過去の実績はこんなんじゃなかった、その内、必ず勝てる時が来ると思う。
しかし、上手く行かない時が続けば気持ち穏やかになるか、試合に出ているだけとゆう惰性が生れるか、同じミスの繰り返しを恐れる気持ちが生じる。
変化を生むのは、変化の先の進化を生むのは怒りだと思う。
俺は下手じゃないと叫ぶ。
もっと上手かった筈だと叫ぶ。
18ホール、バーディ3つのゴルフじゃない、7つ取れるゴルファーなんだと叫ぶ。その叫び、己への怒りの叫びである。
やる気、負けん気、へこたれん気には怒りが要る。
怒りなきやる気、負けん気、へこたれん気は飾りものと思う。
過去、熊本、札幌、福岡、東海、神戸、船橋の6塾を開塾し、今は神戸塾、一つ残る坂田塾なれど、己への怒り持つ者は成功した。
6塾から95名がプロテストに通り、シード得し者は12名。
皆、怒りを持っていた。
ゴルフの才能、最も輝かせていたのは熊本塾一期生の大川優だったが、大川は怒りを持つ子じゃなかった。
そして、高校1年で退塾した。
同期でプロになったのは吉﨑千晃、松村瞳、古閑美保、紫垣綾花、成田いづみ、佐藤祐樹、深堀昌之、中内剛の8人なれど、己への怒り強く持っていたのは古閑美保一人だった。
怒りは稽古事、鍛錬事、修行事、継続事に大切なものであった。
最後のひと山越える時、必要なのは怒りであった。
こんな事も出来ないのか、との己への怒りである。
同期の者が活躍する。
自分は同期から離れて眺め続ける日々。
そんな屈辱で悲しさ募る時、同期の活躍に腹が立つ、こんな筈ではなかった、情けない、今に見ておれ、その内、必ず最終日最終組で回ってやる、そして優勝する、と己に誓う。
この怒りが何よりも大切である。
性格が優し過ぎるの言葉は慰め言葉なんかじゃない。
否定の言葉だ。
同期の活躍、腹が立って腹が立って仕方ないと思う。
この怒りあれば明日は変る。
なければ終りだ。
怒りの練習は歯を傷つける。
奥歯が縦割れする事もある。
縦割れを経験した者は屈辱から脱して来た。
怒りの球を打て、と塾生に教えて来た。
妥協の球を打つなと教えた。
私は怒り持てぬゴルファーだった。
怒りの球は打てなかった。
今、戦う最中の人よ。
怒りを持て。
怒りを隠すな。
怒り持つ気持ちを恥じるな。
その怒りは戦い人にとって最も必要なる気持ちである。
周りはゴルフの話、成績の話をしようとせず、遠慮の姿勢を見せるであろう。
周りをそんな気にさせた己を恥じよ。
そして怒りの球を打て。
プロで成功するには怒りの球、打ち続けなければならないのです。
プロ向きの性格、それは怒りいつ迄持ち続けるかである。
己への怒りであるから周りに迷惑掛ける事はない。
笑顔の裏の悲しさと怒りを私は尊ぶ。
1ストローク足りずの予選落ち7回続けた時、私は空を見た。
秋の空だった。
怒りはなかった。
子供達よ、素直であれ。
そして、己への怒り持つ大人を目指して、突き進んで行け。
アプローチの練習をせよ。
ゴルフクラブ14本の中で自信強める練習はアプローチだけである。
今日5月20日、木曜日。
福岡は雨。
500メートル先が乳白色の中に消える梅雨の雨。
私に足りていなかったもの何かと思った。
400メートル先のビルの端の赤い灯り、消え始めている。
雨、強くなった。
現在時、午後12時35分。
急に一気に街が乳白色の中に消えて行く。上空から消え行く雨霧の街。明日も雨か。
家から出ない日が続いています。
それでも体調良好。
それでは来週。

坂田信弘
昭和22年熊本生まれ。京大中退。50年プロ合格

週刊ゴルフダイジェスト2021年6月8日号より