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【岡本綾子 ゴルフの、ほんとう】Vol.899「武器となるワザを一つでいいから身に付ける練習をしてほしい」

米国人以外で初めて米女子ツアーの賞金女王となった日本女子ゴルフのレジェンド・岡本綾子が、読者からの質問に対して自身の経験をもとに答えていく。

TEXT/M.Matsumoto

>>前回のお話はこちら


冬場の芝は薄く寝ていて湿っぽいので、アプローチで少しでも手前から入るとチャックリします。ウェッジでチャックリしないためにはどういう点に気を付けるべきか、その練習方法も教えてください。(匿名希望・49歳・HC2)


冬から春先のコースでよくあるシチュエーションとして、芝の密度が低く葉先が地面に寝た状態の所にボールが止まっていることがあります。

ほぼ地面の上に直接置かれている状態に近いこのケースからのアプローチでは、プロでもチャックリのミスをしてしまうことがあるほど。

こういう時期や状況下では、なるべくランニングで攻めるのが妥当だと思います。

極端にいえば、バンカー越えの状況でなければパターの選択もありですが、ウェッジを使って寄せたいという気持ちも分かります。

そこでまず、そういう状況で起こるチャックリの原因と現象とは何か。

多くはやみくもにウェッジを握り、さらに手首を使って打ってしまうためだと思います。

芝が薄くボールがほぼ地面に密着しているため、地面とボールの間にほぼ隙間がありません。なるべくボールの真下ギリギリにヘッドを入れる必要がありますが、少しでもボールの手前にヘッドが入ったらチャックリしてしまいます。


でも、もしヘッドと地面の接点が少なかったらどうでしょうか。地面の抵抗が減ってある程度ヘッドがスッと抜けてくれます。そこで考案されたのが、ヒールアップして構えトウ側でボールを打つという対応策です。

インパクトのときだけトウで打つのは難しいので、アドレスからヒールを浮かせて構えるのがポイント。ソール全体を接地して通常通りに構えるより、ヘッドが地面に引っかかるチャックリのミスが出に
くくなります。

このヒールアップして寄せる打ち方をこれまで数え切れないほど使ってきました。

それほど便利で確率が高く信頼のおける方法だったのは確かで、1980年代前半にわたしが単身渡米してLPGAツアーでプレーし始めた頃から使っていました。

粘っこい芝、逆目などの状況や着弾する地点が急激に下っているというデリケートで微妙なケースで、わたしはこのヒールアップアプローチを応用して戦ってきました。

この打ち方をどうやって身に付けたのかハッキリ思い出せませんが、アメリカへ渡ってツアーを転戦するなかでいろんな選手のプレーや練習方法から大きな刺激を受けました。

彼女たちがどんなふうに右ひじを下ろしてくるか、フェースをどう抜いているかといった細かな部分に目を凝らして観察していました。

そこから優れた技術やリズムのいいとこ取りをしてきました。その意味でこのアプローチは、わたしがアメリカで出合い手に入れたひとつでもあり、使っていくうちにバリエーションも増えていった気がします。

この打ち方は、意図的に芯を外す打ち方でもあるので、スタンスは通常より狭く、ボールに近く立ちグリップもいつもより短く握りますし、状況によってパターと同じグリップで握ることもありました。

初めは見よう見まねで身に付けた技術でしたが、実践するうちに自分のモノになる。

ゴルフに限らず技術というものは、人に教えてもらうよりも自分で見つけ、工夫してこそ身に付くものだとも思います。

今年も世界へ飛び立っていく若い選手たちがいます。

息つく間もないツアー生活にもまれる彼女たちの姿をまぶしく眺めながら、そのなかでかけがえのない“宝物”をひとつでもつかみ取ってほしいと思っています。

工夫を重ねて培った技術は、ほんとうに困ったとき自分を助けてくれます」(Illustration by Ayako Okamoto)

週刊ゴルフダイジェスト2026年3月17日号より