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【岡本綾子 ゴルフの、ほんとう】Vol.881「ゴルフにおける呼吸についてすごく考えていますし活用もしてます!」

米国人以外で初めて米女子ツアーの賞金女王となった日本女子ゴルフのレジェンド・岡本綾子が、読者からの質問に対して自身の経験をもとに答えていく。

TEXT/M.Matsumoto

>>前回のお話はこちら


呼吸について質問です。スウィング中、ずっと息は止めている、それともインパクトだけ止める? そんなこと考えたことないという人も多いですが、とても大事なことだと思うので教えてもらえませんでしょうか。(匿名希望・ベストスコア97) 


陸上競技の100メートル走、選手はスタートで構えの態勢に入り「位置について」で呼吸を整え、「よーい」で息を止め、「ドン!(銃声)」で飛び出してからはゴールを迎えるまで息は吐きも吸いもしないそうです。

ゴルフスウィングはどうか。

そんなこと考えたことなかったという人もいるかと思います。

それでも振り返ってみたら、アドレスに入りスタンスを決めてワッグルをしながら呼吸を整え、セットアップしたら息を止めたまま、というのが多いのではないでしょうか。

野球など向かってくるボールをバットで打つという瞬間は息を止めていると思いますし、テニスや卓球なども同様かと思います。

インパクトの瞬間に集中して力を込めるため、プレーヤーが打つ瞬間の呼吸は止まっていると思います。


呼吸を続けながらショットしてみたこともありますが、スウィング全体の流れを見失うというか動きのメリハリが曖昧で力の入れ場所が分からなくなる感じで不思議なほど上手く打つことができませんでした。

自分では意識していないようでもインパクトの瞬間には呼吸を止めているのでしょうね。

ただ、スムーズな動きを体に馴染ませるため、あえて意識して呼吸するのも有効です。

スウィングしている1秒ちょっとの間、自分がどんな呼吸をしているのか立ち止まって見直してみるのも、客観的に自分を知ることができ、良いことだと思います。

実は、わたしが若い選手の練習を見ていた頃、呼吸法については結構細かく指導していました。

アドレスの入り方、目標やスタンスの取り方、ルーティンの動きなども含めて、呼吸法はスウィングのリズムとテンポに深く関わる重要な要素だと考えているからです。

こんな感じです。

ティーアップしたボールの後方から目標を設定したら、そこからアドレスに入るのですが、呼吸を意識するのはここが始まり。

アドレスで鼻から吐いて吸ってを2回ほど繰り返し、3回目で息を吐いて吸ったら止めてテークバックを始動する方法です。

「はい、鼻から息を軽く吸ってー、止めて」「止めたらテークバックを始動する」というふうに、相手の動きや力の入り具合を観察しながら、かなり綿密に声をかけ徹底指導していました。

最初は意識して吸ったり吐いたりしないと身に付きません。

とはいえ、いったん覚えれば無意識にできるようになるのが呼吸法というものだと思います。

でも慣れるまでは「吸うってどのくらい」「肺いっぱいだと苦しくなる」「軽く吐くときはどれだけ残すの」と、言葉で示すのが難しい質疑応答の連続です。

人によって感覚はまちまちなので大変でした(笑)。

結局、息の深さや吸ったり吐いたりする程度、タイミングの感覚は本人の試行錯誤で自分に合った加減を見つけるほかありません。

そのリズムを繰り返し確認して、自分のスタイルを確立してキープしていくわけです。

わたしの場合は、フルショットではアドレスで肺の6割を満たして止め、フォロースルーで溜めた息が自然にゆっくりと吐き出されるイメージかな。

息を吸い込む際に気をつけているのは、アゴを上げたまま息を吸わないこと。

上を向いて吸うと、思った以上に肺の中が空気でいっぱいになって体の動きが鈍くなってしまうことがあるからです。

こうしたチェックポイントは、経験のなかで少しずつ自分にしか分からない感覚を養っていく必要があります。

ちなみに、肺を空気でいっぱいにすれば大きく振り上げたくてもできません。

だから緊張しているなと思ったら、思い切って息を吐くなど工夫して、呼吸とスウィングの相関関係を自分なりに探求するのも面白いと思いますよ!

「少しでも上手くなりたいという気持ちがある人ほど、細部へのこだわりが強いと思います」(PHOTO by AYAKO OKAMOTO)

週刊ゴルフダイジェスト2025年10月28日号より