【岡本綾子 ゴルフの、ほんとう】Vol.868「穏やかで面倒見のいい“おふさバア”との思い出」
岡本綾子「ゴルフの、ほんとう。」
米国人以外で初めて米女子ツアーの賞金女王となった日本女子ゴルフのレジェンド・岡本綾子が、読者からの質問に対して自身の経験をもとに答えていく。
TEXT/M.Matsumoto
>>前回のお話はこちら
- 米国人以外で初めて米女子ツアーの賞金女王となった日本女子ゴルフのレジェンド・岡本綾子が、読者からの質問に対して自身の経験をもとに答えていく。 TEXT/M.Matsumoto >>前回のお話はこちら コンペの朝、左足をねじってしまったのですが、痛みを我慢してそのままスタートしました。後半は腫れも出ましたが何とか最後までプレーで……
先月6月15日に永田富佐子さんがお亡くなりになりましたが、岡本さんとは親交が深かったと昔記事で拝見いたしました。永田プロとは、どのような交流があったのでしょうか。(匿名希望・65歳)
この年齢になって一番こたえるのは、しばらく顔を見なくなっていた親しい友人の突然の訃報に接することです。
わたしたちの仲間内では、彼女のことをいつも「おふさバア」って呼んでいた間柄でした。
思えば、おふさバアとはほんとうに長い付き合いでした。
プロテスト合格の同期ではありませんが、同い年でウマが合う彼女とは行動を共にすることが多くありました。若い頃からおっとりと落ち着いた振る舞いで、パッと見、老け顔をしているので、付いたあだ名が「おふさバア」でした。
本人は気に入らなかったと思うけど、気の置けない仲間からそう呼ばれても嫌がることもなく、いつも優しく話を聞いてくれる頼りになる相棒的存在でした。
九州は長崎の佐世保出身で、ソフトボールの経験があったというんだけど、対戦したことはありません。
ですが、その頃の女子プロ選手でソフトボールの前歴を持つプレーヤーは結構多くて、ゴルフ場を離れたところで仲良くなるきっかけになっていたようにも思います。
永田さんはその後、お兄さんが勤めていらした東京・青梅CCに入社して、一般業務に加えてキャディの仕事をしながら練習を重ね、プロテストを経て女子プロゴルファーになり、わたしの2期後輩に当たります。
試合を移動する選手たちは寄り合い、何となく惹かれ合った仲良しグループみたいなものができ、わたしの周りにも永田富佐子さんや伊藤礼さん、小林洋子さん、生駒佳与子さんといった仲間がいました。
永田さんと伊藤さんはプロテスト合格の同期で、伊藤さんは私の1学年上でソフトボールをやって、小林さんも4つ下ですがソフトボールをやっていた経歴がありました。
その頃の体育会系出身としての感覚が共通していたんだと思います。
もう一人、佳与ちゃんは少し年下だけど、どこか似た者同士の要素があったんでしょうね、そんな感じでした(笑)。
食事やお茶になるとにぎやかにしゃべってたな〜って、何を話していたのか覚えていませんが他愛のない世間話だったと思います。
ですから、ゴルフの話をした記憶はほぼなかったです。きっとみんな、迷いや悩みは自分で解決するしかないと分かっていたんでしょうね。
ただ、課題と格闘している仲間のため少しでもヒントになればと相談に乗ったり、力になったりする間柄ではありました。
とくに永田さんには、彼女流の面倒見の良さがあって、わたしもいろんな面でお世話になった記憶があります。
まだビジネスホテルなんてものが多くはなかった時代に流行りのペンションを彼女が探してきて予約を取り、試合の時にみんなで宿泊したこともありました。
ホールアウトしても日は高く、娯楽が少ない時代でもありました。
地方での試合ではときにみんなで観光地を回ったり、釣りに出かけたり。
そういえば、わたしを初めてパチンコ屋さんに連れていってくれたのも、おふさバアだったったような(笑)。
154センチと小柄でしたが、がっちりした体格で柔軟性もある。
クセのないスウィングで淡々とプレーをこなす永田さんは、堅実なショットメーカー。プロ2年目の1978年から93年までの連続16シーズン、シード権を失ったことはありませんでした。
決して派手なタイプではありませんが、1987年には日本女子プロ選手権を含む年間3勝を挙げて賞金ランク7位にもなりました。
やや地味に感じる彼女ではありますが、彼女のがんばりは凄みを感じさせます。
こうしたやや控えめな実績は、テーブルを囲んだ一団の中でいつも静かな笑顔を浮かべていた永田さんらしいと言えるかもしれません。
その人徳はツアー全体に伝わっていたと思います。
それにしてもまだ73歳、早すぎる。
なんで、わたしより先に逝っちゃうんだとも思う。
かつてわたしがアメリカでプレーすることを決めた時、
「こっちのチャンスが増えるかも」
なんて言って笑わせてくれた、おふさバアの軽口が懐かしいです。
天国でも仲間とのんびりゴルフを楽しんでほしいと願っています。

「話していて気持ちいい人のもとに、人は集まってくるのだと思います」(PHOTO by Ayako Okamoto)
週刊ゴルフダイジェスト2025年7月22日号より


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