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【ゴルフせんとや生まれけむ】古今亭伝輔<前編>「最初は師匠に内緒でやっていたんですが…」

ゴルフをこよなく愛する著名人に、ゴルフとの出合いや現在のゴルフライフについて語ってもらうリレー連載「ゴルフせんとや生まれけむ」。今回の語り手は、落語家の古今亭伝輔氏。

私の実家は埼玉県の鶴ヶ島市にあり、近所にはゴルフ場や練習場が山ほどあります。東京オリンピックの会場にもなった霞ヶ関CCまでも自転車で10分ほど。その環境のおかげもあり中学の頃から遊びでボールを打っていましたが、本格的にやるようになったのは、以前このコーナーに登場した先輩の春風亭一蔵兄さんの存在が大きいというか、すべてと言ってもいいでしょうね(笑)。 

一蔵兄さんには入門当時からかわいがってもらっていて、しょっちゅう飲みに行っていたんです。そんなある日、兄さんがそれまでゴルフの話なんか一度もしたことがなかったのに突然「伝輔、お前、ゴルフやんない?」って誘ってきたんですよ。私も興味がなかったわけでもなかったので、すぐに「いいですよ。やりましょう」と返事をしました。確か二ツ目になって2年目の頃でしたね。そもそも前座の時はゴルフなんてとんでもない。やる時間もお金もありませんでしたし、弟子がゴルフをすることを禁止している師匠もいるくらいですからね。 

ウチの師匠の志ん輔はどうかというと、ゴルフにはまったく興味がなくて、家にクラブもありませんでした。私がゴルフを始めることを知ったら絶対に「ダメ」って言うと思ったので、最初は師匠には内緒でやっていました。 

落語界には「余一コンペ」という由緒正しいコンペがあります。大のゴルフ好きで知られた古今亭志ん朝師匠が始められたコンペがそもそものスタートで、当時は志ん朝師匠が住んでいた神楽坂の矢来町にちなんで「矢来コンペ」と呼ばれていたんです。で、ゴルフを本格的に始めるようになった私も、しばらくすると一蔵兄さんと一緒にそのコンペに参加するようになりましたが、その時「ウチの師匠にはくれぐれも内緒でお願いします」ってみんなに言いましたよ。何しろ落語界は師匠と弟子、先輩と後輩の関係が厳しい縦社会。ちゃんと根回ししておかないと後がいろいろと大変ですから(笑)。

でも、狭い業界なので、いつしか話が回って師匠の耳にも届いたらしく結局バレてしまいました。「お前、ゴルフやってんのか」「はい。付き合いでちょっとやってます」「やるのはいいけど仕事につながるとは思うなよ。そのためにやるのはよくないから」「私はスポーツとして一蔵兄さんに誘われて楽しくやっています」「そうか、それならいい」そんなやり取りがあって怒られることもなく今に続いています。 

ところで、一蔵兄さんが私をゴルフに誘ったそもそもの理由には余一コンペが関係しているんです。しつこいようですが、落語界は縦社会です(笑)。師匠の送り迎えや打ち上げの用意など細々とした仕事がたくさんあって、すべて下っ端がやらなくちゃいけない。その頃、ゴルフをやる若手がほとんどいなくて兄さんが一番の下っ端だったんですよ。それで何とかその役目から逃れようと白羽の矢を立てたのが私だったというわけです。今にして思えば、その頃の兄さんは妙に優しくて何か変だなあと思ったんです(笑)。でも、そのおかげで今楽しくゴルフをやらせてもらっているので兄さんにはもちろん感謝です。

>>後編につ


古今亭 伝輔

ここんてい・でんすけ。84年7月2日生まれ。埼玉県鶴ヶ島市出身。高校卒業後、介護職を経て09年、古今亭志ん輔に入門。14年、二ツ目、24年、真打に昇進。ベストスコアは98

週刊ゴルフダイジェスト2025年7月15日号より