【ゴルフはつづくよどこまでも】Vol.233「自分にはセンスがない、と思い込んでいたら何も変われません」

高松志門の一番弟子として、感性を重んじるゴルフで長く活躍を続ける奥田靖己。今週もゴルフの奥深い世界へと足を踏み入れていく。
PHOTO/Tadashi Anezaki
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- 高松志門の一番弟子として、感性を重んじるゴルフで長く活躍を続ける奥田靖己。今週もゴルフの奥深い世界へと足を踏み入れていく。 >>前回のお話はこちら ゴルフで必要なのは、技術とかパワーもですけど、やっぱりセンスです。音楽も一緒で、譜面通りにきっちり弾く技術があっても、その曲のイメージとか雰囲気とかに合った演奏ができなければ、そらもう全然ボツで……
高松志門さんと僕と小島謙太郎の3人でやっている曲打ち集団『アーティスティックゴルフ』のイベントを時々開いてます。
見に来たほとんどの人が、曲打ちみたいな打ち方を初めて見たと驚かれますが、バーディを取るための打ち方やなしに、2球を交互に打って同じところに落としたりするなど、「こんなことやったら皆が驚いてくれるんちゃうか」いう遊び心で始めたことなので、驚いていただけると嬉しいですね。
曲打ちは年齢いってもできるんですかと聞かれることがありますけど、テクニックは使うんですが、パワーはあまり要りませんからね。逆に言うたら、全力で打つパワーの70%くらいの余力を持った状態でコントロールしないと、いろんな打ち方はできないいうことなんです。
アマチュアの人は、コースで打つショットのときでも、ガチガチに力が入っておる人が多いですから、こういう人には曲打ちは難しい。言い方換えれば、曲打ちができるようになれば、コースでのショットのときも力が抜けるようになるいうことです。
あと、曲打ちをやるにはセンスがないとできないんですかというんもよく聞かれます。そういう場合に言いたいんは、みんなセンスはあるんやけど、やろうとしないだけ、ということ。センスがないとできないとか、生まれつき自分にはセンスがないと思い込んで、そこで終わってしまうというのがほとんどの人で、これではせっかく持っているセンスも磨かれません。そしたら人間は、生まれたときから死ぬまでずっと変わらずにいくんかいうことです。
音楽家の家に生まれた人は、やっぱり小さい頃から音楽を聴きながら育つなかで、リズム感やらなんやらを育んでいくわけですよね。そら遺伝もあるやろうけど、環境とか、そこに自分の気持ちが入るかどうかということが大事やと思います。
やってみて、「あ、これおもろいな」と思うだけでよくて、最初はそんなに深く入らなくていいんです。前にも言いましたけど、センスを磨くのに邪魔になるのが常識とかマニュアルです。クラブをここに上げて、なんてことばかりやってたら、曲打ちなんかできません。自分で工夫をするというんもセンスです。

「曲打ちを、特別なことと思うんやなくて、“やってみる”いうことが大事です」

奥田靖己
おくだせいき。1960年、大阪生まれ。93年日本オープンなど6勝。シニアで2勝。ゴルフの侘び寂び、温故知新を追求する
週刊ゴルフダイジェスト2025年7月15日号より