マキロイの新コーチ、ピート・コーウェンってどんな人?
TEXT/Masaaki Furuya ILLUST/Koji Watanabe
松山英樹のコーチを務める目澤秀憲、松田鈴英のコーチを務める黒宮幹仁。新進気鋭の2人のコーチが、最先端のゴルフ理論について語る当連載。第37回は、マキロイの新コーチに就任したピート・コーウェンについて聞いた。
GD ローリー・マキロイがピート・コーウェン(※1)に師事したことが話題になっています。
目澤 プレーヤーズ選手権の時にローリーの練習ラウンドを見たんですが、元々シャローだったスウィングがかなりスティープになっていたので驚きました。
GD 昨年の全米オープンでデシャンボーが驚異的な飛距離で優勝したのに触発され、飛距離アップを目指してスウィングバランスを崩してしまったと言っていますよね。
目澤 彼ほどのレベルの選手でも、スウィングを自分だけで管理することはなかなか難しいのかなと思いました。選手は、スウィングも含めて自分のベースとなるものがあると思うんですけど、その基本的な部分に狂いが生じた時に、自分で直していくのが難しいとローリーは判断したのだと思いますね。それで、ジュニア時代から親交のあるピートに見てもらうことを決断したのだと思います。
GD コロナ禍もあって、長年のコーチのマイケル・バノン(※2)となかなか会えない時期があったといいますから、ブランクを作りたくなかったのでしょうかね。
目澤 その辺の判断はすごく早かったと思いますね。
GD ピート・コーウェンと面識は?
目澤 松山プロに紹介してもらって少し話したことはあります。PGAツアーのコーチは教え方も個性的な人が多いんですが、ピートの場合は、ドライビングレンジで見ていると、自分が持っている理論をしっかりと選手に伝える指導方法だと感じました。これはレッドベターも似ている部分があって、自分の教え方にプライドを持っているのだと思います。ヨーロピアンツアーの選手はピートを信頼している選手も多いし、そういうやり方もコーチとしての一つのやり方だなとは思います。
GD いわゆる“カリスマコーチ”的な存在ですね。一方では選手それぞれに合わせ、その個性を伸ばしていく“カメレオン”的手法のコーチもいます。
目澤 僕は“カメレオン”のほうですね(笑)。実際の教え方も違っていますよね。ピートを見ていると、あまりトラックマンなどを見ている雰囲気もなく、身振り手振りでデモンストレーションしています。ヘンリク・ステンソンがプレーヤーズ選手権初日に13オーバーを叩いた後に、ドラインギングレンジでステンソンのクラブや体を触りながら「こうやって打つんだ」と熱血指導をしていました。僕にはなかなか同じことはできない。13オーバーも打たせてゴメンと思っちゃいます(笑)。いずれにせよ、PGAツアーに来てみて、コーチも個性があって面白いな、そして個性があってもいいんだなと思いましたね。
(※1)ピート・コーウェン……15歳の時にサッカーで大怪我を負いプロを断念。その後ゴルフ場のアシスタントプロを目指しコーチとなる。胸骨・骨盤・両足の3つの部位をバランスよくらせん状に動かす『スパイラル打法』を考案。リー・ウエストウッド、ダレン・クラーク、ルイ・ウエストハイゼンなど、多くの欧州選手のコーチを務める。(※2)マイケル・バノン……2011年度の欧州PGA・コーチ・オブ・ザ・イヤー受賞。バノンはローリー・マキロイの父親ジェリーと親友であり、『第二の父親』として技術的、精神的にローリーを支えてきた
目澤秀憲
めざわひでのり。1991年2月17日生まれ。13歳からゴルフを始め、日大ゴルフ部を経てプロコーチに。TPIレベル3を取得。2021年1月より松山英樹のコーチに就任
黒宮幹仁
くろみやみきひと。1991年4月25日生まれ。10歳からゴルフを始める。09年中部ジュニア優勝。12年関東学生優勝。日大ゴルフ部出身。松田鈴英、梅山知宏らを指導
週刊ゴルフダイジェスト2021年5月11・18日合併号より