【たま~に80台で回りたいッ!】Vol.5「飛び系アイアンの使い勝手を検証」

飛距離が出なくても、練習量が少なくても、たま~に80台で回るゴルフは十分に可能! コラムニストの木村和久がシニアのための89ビジョンを指南。
ILLUST/Shinichi Hoshi

>>前回のお話はこちら
- 飛距離が出なくても、練習量が少なくても、たま~に80台で回るゴルフは十分に可能! コラムニストの木村和久がシニアのための89ビジョンを指南。 ILLUST/Shinichi Hoshi >>前回のお話はこちら 80台を出すにはまずスリーパットをしないこと、アマチュアゴルファーはこれに尽きます。とはいえ現実には出……
飛距離の落ちたシニアゴルファーの目の前に、黒船のように現れたのが『飛び系アイアン』です。2010年代後半からでしょうか、2番手飛距離がアップする触れ込みで、メーカーが続々作りだし、一躍人気となりました。
何しろPWを軽く振って100ヤード以上飛びますから、往年の飛距離が戻ってきたと、シニア層に大絶賛されました。パー3の番手競争では、ライバルに負けないと評判にもなりました。けれど競争するのはスコアで、番手じゃないんですけど。
というわけで個人的にも1~2本キャディバッグに入れています。その飛び系アイアンの善し悪しを検証したいと思います。
まずスペックから検証
飛び系アイアンは飛距離がアップすると評判ですが、そもそもロフトが立っているから当然です。従来のPWのロフトは48度ほど、AWで52~53度なのに、飛び系ブランド『Y』のPWは38度、AWは43度、飛び系ブランド『P』のAS(アプローチサンド)は45度ですから従来より約10度も違います。
だから飛んで当たり前。では低い球かというとそうでもない。不思議とボールは高めで、グリーンでちゃんと止まります。100ヤードを打つのに、従来は9番アイアンのフルショットでやっと乗る感じでした。しかもショートアイアンのフルショットはミスが多い。それが飛び系ウェッジ使用なら、抑えめのショットで乗るのですから、ミス率がだいぶ減ります。PWでもスリークオーターで100ヤード、ハーフショットで80ヤード打てます。100ヤード以内の寄せに抜群の効果ですね。
フルショットには不向き
飛び系アイアンは、そもそも難しいアイアンを簡単に飛ばすように考案されたもので、アベレージ向けのマーケットです。だからカーボンシャフトが主流だし、フレックスもSRやRが多いし、あとなぜかグリップが細く、やや長めが多いです。だからがっつり握って打てばグリップが滑ったり、振り遅れたり、シャフトのしなり過ぎなどミスが目立つことも。あくまでゆったり振るのがよろしいです。
じゃあ、7~8番アイアンあたりで、ガツンと打ちたい場合はどうするか? スチールシャフトにして、グリップを太めに替えて打つがよろしいでしょう。偶然、中古ショップで7番と8番のスチールシャフト版を見つけて購入しました。これが深いラフやバンカーショットで抜群の効果をもたらしました。1本入れておくのはありです。中古ショップにもたくさん在庫があるし、オークションサイトで出回っている単品を買うのも手です。
パター風転がし
冬のライで重宝したのがパターのようにして打つ、転がし技です。従来7~9番アイアンで転がしていたのですが、飛び系アイアンはロフトが立っているのでPWが良いあんばいです。パターで20ヤードを転がすなら、飛び系のPWでパターと同じような振り幅でスライド打ちすると、ちょうど同じ距離が転がるわけ。ベアグラウンドやディボット跡などのライから転がすのに重宝しました。これは年中使えるので、9IかPWあたりを使うのが良いでしょう。
何を入れて何を残すか?
シニア世代にとって飛び系アイアンが良いと言っても、全部それで揃えるのは、難しい選択となります。昔から慣れ親しんだ番手のロフトを替えると、頭の中が混乱するからです。まずは1本お助けクラブとして、番手を意識せずに導入してみることをお勧めします。
個人的には苦手な50~100ヤードをAWに任せて仕事をさせています。その代わりに9番アイアンを抜くか、はたまたPWを抜くかで現在悩み中です。何かを入れるには、何かを抜かねばならない。これが案外難しいのです。
繊細な寄せは従来のクラブ
飛び系アイアンは、短い距離を上げて打つのが苦手です。ロフトが立ってるのでバンカー越えの20ヤードをピンデッドに狙い、ボールを止めるなんてのは至難の業。そこは従来のロフトのSWやAWで高いボールを打ち、上からドスンと落とすしかありません。
飛び系アイアンは、ペットで言えば可愛い新入り猫みたいなもの。多頭飼育している旧ロフトのクラブ群に、瞬発力のある人気のクラブが1本入って来た感じですか。魅力的な飛び系アイアンに、旧型アイアンがスネ夫にならないように、満遍なく愛情を注いであげましょう。そうゆうこと?

教える人/木村和久
「89ビジョン」をはじめ様々なゴルフの楽しみ方を提案するコラムニスト。ベストスコア75。01年鶴舞CCキャプテン杯優勝。ゴルフ歴は35年。現在は扶桑CCのメンバー
週刊ゴルフダイジェスト2025年4月22日号より