中部銀次郎「3オン1パットのパーでも、スコアカードには4としか書かない」

レジェンドと呼ばれるゴルフの名手たちは、その言葉にも重みがある。ゴルフに限らず、仕事や人生におけるヒントが詰まった「名手の名言」。今回は「プロより強いアマ」と称された伝説のゴルファー・中部銀次郎の言葉を2つご紹介!

3オン1パットのパーでも
スコアカードには4としか書かない
中部銀次郎
パーオンのパーを狙うのはゴルファーの性であろう。かっこよくパーオンして2パットでのパーをとると胸を張ってみせる。
反して、ドライバーも次打もミスして、しかしアプローチが寄ったり、それでなくてもロングパットが入ったりすると、正当のパーをとったほうからは「汚ったねえパー」と歯ぎしりして悔しがられるものだ。そんな時、中部は
「スコアカードには汚いパーとか、ドライバーショットをチョロしたなどとは書きませんよね。3.5とも4.5とも書かず、ただの4なんですよ。どんな方法でもいいから4にする。それには安全なほうへわざと外したりする。それも4への道なんです。パーには綺麗も汚いもなく、数字の4だけなんです」
スコアカードに書く「4」を知ること。
それこそが、マネジメントの概念を知ることだと、中部は我々に諭してくれていたのである。
すべてのストロークは等価である
中部銀次郎
プレー中に無駄話は一切しない中部だったが、酒場で酒が進むにつれて、ゴルフ談義になってくると、中部にはいくつかの口癖があった。
冒頭の言葉もそのうちのひとつである。
よくトーナメント中継で、「このパットは大事ですね」「このショットが勝敗を決めますよ」などと、アナウンサーや解説者が言う。
特に最終日、中継ホールの後半、16、17、18番になってくると、こんな解説のオンパレードになる。
そんな話題になると、
「一体、大事ではない1打ってないですよ。初日の1打も最終日の1打も同じワンストロークという価値では同じです」
と、中部は述懐するのだった。だから、中部にとっては、日本アマでもアベレージゴルファーとラウンドするときでもプレーする姿勢は同じだった。
「大きな試合とか遊びのラウンドとか、大事なショットかどうでもいいショットとか区別すること自体が、ゴルフをおとしめることになります。どんな試合でも、どんなショットでも価値は同じです。1回でも手抜きをすると、それが負い目になって次の同じ状況では失敗することにもなってきます」
中部イズムのこもった名言である。
■中部銀次郎(1942~2001年)
なかべ・ぎんじろう。山口県下関市に大洋漁業を営む一族の御曹司として生まれる。虚弱な体質のため、幼少より父の手ほどきでゴルフを始める。長ずるにしたがって、腕をあげ天才の出現と騒がれた。甲南大卒。60年、18歳で日本アマに出場。62年、20歳で日本アマ初優勝。以後64、66、67、74、78年と17年にわたり、通算6勝の金字塔をうちたてた。67年には西日本オープンでプロを退けて優勝。プロより強いアマといわれた。しかし、プロ入りはせず、生涯アマチュアイズムを貫いた。01年、永眠。
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