【たま~に80台で回りたいッ!】Vol.3「刻みゴルフの神髄を究めよう」

飛距離が出なくても、練習量が少なくても、たま~に80台で回るゴルフは十分に可能! コラムニストの木村和久がシニアのための89ビジョンを指南。
ILLUST/Shinichi Hoshi

>>前回のお話はこちら
- 飛距離が出なくても、練習量が少なくても、たま~に80台で回るゴルフは十分に可能! コラムニストの木村和久がシニアのための89ビジョンを指南。 ILLUST/Shinichi Hoshi >>前回のお話はこちら バンカーショットはソールして打ちましょうだって? いきなりルール違反の話を推奨されて、戸惑うと思います……
皆さん、難しい戦略的なホールに遭遇すると「ここは刻んで」と思いますよね。でも実際、何をどう刻むのか、そこがよく分かっておられない。今回、改めて“刻みゴルフ”を考察したいと思います。
まず“刻み”の概念ですが、実際の距離よりも短い距離を打つことを意味します。ここでアマチュアにとって、最も大事なことがあります。せっかく刻むのですから、ボールを絶対曲げないことです。
先日、こんなことをやらかしました。狭いホールに遭遇し、このティーショットは丁寧に刻もうと思い、スプーンで打ちました。しかし、スプーンは普段さほど使っておらず、打ったボールはスライスして林の奥のOBへ、ガビ~ン。結果そのホールは大叩きでした。
本当は打ち慣れている5番ウッドが正解でした。私はスプーンで180ヤード、5番ウッドで170ヤードほどの飛距離です。わずか10ヤード余計に稼ごうとして、結果的には飛距離をマイナスにしてしまったんです。
その時の心境を見事に表してくれた諺というか教訓があります。
「飛距離は捨てても9割残る、方向性を捨てたら何も残らない」
これはビング・クロスビーの息子でプロゴルファーのナサニエル・クロスビーの言葉です。この言葉が刻みの概念や哲学のすべてを言い表しています。
というわけで、今度はシチュエーション別の刻み方法を考えます。
ドライバーの刻み
「ドライバーで刻みも何もあるかい!」と言う方がいますが、ドライバーショットにこそ刻みの神髄があるのです。たとえば400ヤードのパー4をどう打つか? 20年前の筋力ならパーオンの可能性あり。「ここはマン振りだ」。当時はそれで結構。
しかし現在、ドライバーの飛距離が190ヤードほど、400ヤードは絶対2オンしない距離です。では、できるだけグリーンに近づくためにフルスウィングするか? これが絶対ダメな発想です。長い距離に遭遇したら、飛ばしをさっさと諦めて刻む。この逆転の発想が大事です。まずグリップを短く持ち、指2~3本分余すぐらいにして、自分の心の中で、短めの“ミニドライバー”を作りましょう。今は正確性重視のミニドライバーがブームです。スコアメイクをするならこれを真似るべき。
次にパワーですが、アマチュアは10割のマン振りだと、アドレナリンが出て12割で打ってしまいます。結果、スウィングが乱れてミスショットをすることも。理想は8割ショットで打ち、結果的に9割パワーとなり、ナイスショットの確率がぐんと高まることに。
だから日頃練習場でドライバーの8割ショットを打っておくべきです。藤田寛之プロもいつもアマチュアに対して言ってますよ。
俗に言う「置きにいく」ショットができ、好ポジションにつけられるというわけです。
グリーン周りの刻み
400ヤードのパー4をドライバーと5番ウッドで360ヤード地点まで運んで、そこから寄せればボギーは堅い。通常はそう考えますが、池や樹木、バンカーなどのハザードが邪魔をしていることも。
そのときは、思い切ってグリーン手前100ヤードぐらいに刻むのもありです。常にグリーンすぐ手前がベストとは限りませんよ。
40ヤードを乗せるのは簡単ですが、ピンそばにつけねばと別なプレッシャーが生じます。残り100ヤードはただグリーンに乗せれば良い。そう考えて残り100ヤードを打つほうが精神的に楽です。
今は飛び系の優秀なアイアンが出回っていますから、100ヤードはPWの8割ショットで、ちょうど良い距離じゃないですか。
パー3での刻み
パー3でグリーンを狙わないなんて味気ない。クリープを入れないコーヒーみたいなものって、いつの時代のCMだよ~。ですが戦略的にはありです。パー3ホールこそ、ボギーで十分、あわよくばパーで良いのです。
180ヤードぐらいのパー3に出くわして、打つクラブがないと言ってドライバーを振り回し、「暴れはっちゃく」になっていませんか? 180ヤードだったら、170ヤード飛ぶ5番ウッド、あるいは150ヤードの4番UTで刻み、寄せやすい場所に置けば十分。
ただ最初からパー3ホールで刻むと、格好悪いので「あれ~案外距離あるな」と捨てゼリフを残しましょう。さすればグリーンを狙ったように見えます。
どうです、歳を取ったからこそできる刻み戦略、ぜひお試しあれ。

教える人/木村和久
「89ビジョン」をはじめ様々なゴルフの楽しみ方を提案するコラムニスト。ベストスコア75。01年鶴舞CCキャプテン杯優勝。ゴルフ歴は35年。現在は扶桑CCのメンバー
週刊ゴルフダイジェスト2025年4月8日号より