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【岡本綾子 ゴルフの、ほんとう】Vol.850「意図して得意距離を残すという発想は、わたしのプランにありませんでした」

米国人以外で初めて米女子ツアーの賞金女王となった日本女子ゴルフのレジェンド・岡本綾子が、読者からの質問に対して自身の経験をもとに答えていく。

TEXT/M.Matsumoto

>>前回のお話はこちら


私はPWできっちり115ヤードを打つ自信があるので、パー5でこの距離を残せばいいのに、欲が出て2打目をグリーン近くまで打ってミスをします(笑)。プロは意図して得意な距離を残すのでしょうか?(匿名希望・41歳・ベストスコア83)


よく良いコースは、持てるすべてのクラブとテクニックを要求してくるチャレンジングなレイアウト構成を持っている、と言われます。

プレーヤーは、単調なレイアウトや池やバンカーなどの配置が同じパターンの繰り返しでは、想像することや考えることが少なくなるため、コースを攻略する意欲がかき立てられないことがあるからです。

ホールごとに違う番手のアイアンや状況に応じた打ち方が必要とされることで、力量や経験が試されることになります。

前回ラウンドしたコースと、今回ラウンドしたコースでスコアが同じだったとしても、内容はまったく別のものであり、結果としてのスコアに対するあなたの満足度や悔しさも違うはずです。

そう考えると、ゴルフとは毎回、毎ショット、新しい経験を重ねていくものなのではないかとも思います。

「プロは意図して得意距離を残すのですか?」という質問を改めて考えてみました。

少なくとも、わたしの攻略プランの中にそういうアイデアはありませんでした。


ピンまでの距離をこれだけ残そう、と考えて刻む状況がまったくないとは言いません。

しかし、残り距離だけを問題にしてのクラブ選択ではなく、ライや風向き、コースの地形や障害物などあらゆる要素を考え合わせたうえで、もっとも期待できる選択をするということです。

この距離ならこの番手ということではありません。コース攻略法に関しては、ピンの位置から逆算して考えると言います。

簡単なことから言えば、ピンを狙うショットのとき、どのエリアにボールを運べばいいか。

そのためには、ティーショットでどこを狙えばいいのか、ということです。

といっても、ピンを狙う距離が短ければ短いほど、ショットはやさしくなり有利になります。

「115ヤードを完璧に打てるPW」があるということですが、たとえば距離のあるパー4で、第2打がピンまで190ヤード残っているとしましょう。

グリーンに乗らないからといって、75ヤード打って刻むでしょうか?

FWやUT、もしくはロングアイアンを使って打てば、グリーンオンもしくはグリーン近くまで運ぶことが可能かと思います。いくらPWで115ヤード打てる自信があったとしても、グリーン周りからのアプローチよりは距離が長いぶんリスクがありますよね。

ゴルフは、自分に挑戦することでもあると思います。

PWで115ヤード打てる自信があることはとても良いことです。

しかし、もっとピン近くへ寄せる方法を考えたり、もっと得意な距離を身に付けるほうがプレーの幅が広がるのではないでしょうか。

最近、多くのプロがバッグの中にウェッジを4本入れて、グリーン周りはもちろん、100ヤード以内の対応をしています。

今のゴルフは、それだけ番手の役割分担がハッキリしているということでしょうか。

1本のクラブで自分なりの距離の幅を持つ技術を身に付ければ、さらにプレーの幅が広がると思います。

コントロールの精度は、その日の調子に影響を受けやすいものかもしれません。

だからこそ、得意なクラブと好きな距離だけにこだわりすぎないほうがいいと思います。

固執するのではなく、いつでも代替できるような技術と発想を持つことが、ゴルフの上達につながってくると思いますよ。

「わたしの経験上、人の話を聞ける人は成長するスピードが速いですね」(PHOTO by Ayako Okamoto)

週刊ゴルフダイジェスト2025年2月18日号より