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熊本地震から5年。歴史ある名コース「湯の谷」が再生中

熊本地震で大打撃を受けた熊本最古のコース「くまもと阿蘇CC湯の谷C」。あれから5年、コースは再開され、ゴルファーたちの笑顔が戻ってきている。元の素晴らしい景観を取り戻すべく尽力するコースのいまを取材した。

12番ホールはつつじがきれいなホールだったが、土砂崩れで全滅。「徐々に戻したい。このコースは名前通り山谷が多い。難しいですがやりがいがあります」と平尾支配人

2016年4月14日、16日、震度7の地震が熊本を襲った。4月14日は女子ツアーKKT杯バンテリンレディス開催前日。ゴルフ王国・熊本のプロたちは家族や地元の被害に心を痛め、仲間のプロたちも心身でその恐ろしさを実感したのだ。

そのゴルフ王国のルーツともいえるのが熊本最古のコース「くまもと阿蘇CC湯の谷C」である。1952年開場。名匠・保田与天と井上誠一が携わった美しい景観と戦略性を兼ね備えるコースは、16年末に訪ねたとき、本来の姿をまったく失くしていた。当時の支配人、甲斐文康氏は、その惨状を案内してくれながら、「国立公園のなかのコースですし、再生の願いは大きい。メンバーさんのためにも、億単位の費用や数年の月日はかかるかもしれないが頑張って復興したい。なるべく自然のままを残すようにはしたいんです」と語っていた。



あれから5年――。先月末、再びコースを訪ねると、現支配人の平尾南生子氏が迎えてくれた。

「昨年の5月15日にようやく再オープンできました。数億の資金がかかったと聞いています。建物ではないので補助金申請にも苦労し、あとは自己資金で何とか。預託金だけで入会していただく新規の会員さんも募りました。現在1850人前後のメンバーさんがいます。再開時は“コロナ禍”の始まりで、かなり慎重に検討しましたが、野外スポーツでもあるし、細々とでもやらないと永久にオープンできなくなる。でも、その後も、大雨の被害、今冬の雪など次から次に……雨が降るたび『やめて!』と思います。でも、心待ちにしていた皆さんに喜んでいただけると嬉しい。元のコースがよかったものですから、なかなか追いつかない部分もある。時間はかかりますが、ご意見やご理解をいただきながら、応援してもらっている状況です」

名物ホール・3番パー5、通称「馬の背」の変貌を見て、少し驚いた。

「ここは手がつけられないほど酷かったんですが、“馬の背”の麓をグリーンにして、現在パー3で運営中。4番はパー3でしたが、丘の頂上をティーイングエリアにした右ドッグレッグのパー4にして、パー71で営業。でも、3番は前のほうがよかったという声が大多数で。米澤誠会長(経営母体=ドゥ.ヨネザワ)が、やはり元に戻そうと決め、今年秋、馬の背は元の姿に、コースはパー72になって皆さんを迎える予定です。地震後、至るところにあった地割れを考えればこの復活はすごいこと。夢のようです。会長の熱意は並大抵のものではないですし、メンバーさんや地元の方々の気持ちも入って頑張れたと思います」

再生中のコースで阿蘇の雄大な自然に囲まれラウンドするゴルファーの楽しそうな姿がまぶしい。

自然の地形をありのまま生かしてつくられたコースは、自然の力でいったん破壊された。しかし、人々の想いと力で生まれ変わる。そうして、歴史は紡がれてゆく。

3番「馬の背」は
パー3を経て今秋、元の姿に

3番は以前はパー5だったが、現在は丘の手前部分をグリーンにしてパー3にしている

かつての3番パー5、通称「馬の背」。美しくも難度の高い日本屈指の名ホールだった(2005年撮影。PHOTO/Hiroaki Yokoyama)

丘の1本松はずっと見守っている

元の3番グリーンは地震で崩れた。パー5に戻すため少し右に新しく造成。「管理の方も少数精鋭で日々試行錯誤しています。グリーンも砂の段階から種を蒔いてやり替え、大分落ち着いてきました」

「四季折々、飽きない景色を
皆さんにも見てほしい」

19年4月に支配人として迎えられた平尾南生子氏は熊本県天草出身、ツアー1勝のプロゴルファーでもある。

「ここにはジュニア時代から清本登子プロに連れてきていただいたり、よく来ていました。女子シニア、火の国レジェンズにご協賛いただいたのがきっかけで会長と知り合い、今に至ります。同じゴルフでもまったく違う仕事。でも、お客様が喜んでくださると楽しい。怒られもしますが、心を通わせれば素敵なお話をいただけるので、積極的に交流します。プロでもあり女性でもあるので、自分のスタイルで新しい挑戦をしていきたい。古さと新しさを融合して運営できたらいいなと勝手に思っています。現在、月・金はセルフプレーですし、スループレーや2サム、空いていれば1人プレーも可能。若い方も増えましたし、女性もこれからもっと増やしたい。ショップも充実させたいですね」

クラブハウスの損傷は少なかったが、よりモダンに生まれ変わった。カードでの自動チェックイン、自動精算などセルフシステムにした

LPGAのレジェンズツアーでは「現役」の平尾プロ。今年もQTを16位で通過、4月末の太陽生命元気・長生きカップに出場するという。

「QTでホールインワンしたんです! シニアは同窓会みたいで楽しい。練習不足ですが、皆応援してくれますからこちらも頑張りたいですね」

“馬の背”に立って望む360度パノラマが好きで飽きないと平尾プロ。

「こういう景色やコースのつくりはなかなか日本にはない。海外のようなコースです。ぜひ来てほしいですね」

自然の地形を上手に使った飽きの来ないホール構成。「熊本市内からは車で1時間ほど。今年3月には、崩落した阿蘇大橋も開通しました」

週刊ゴルフダイジェスト2021年4月27日号より