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【岡本綾子 ゴルフの、ほんとう】Vol.846「どのティーが飛ぶのか? 正直言えば変わらないとは思いますけどロマンがありますね」

米国人以外で初めて米女子ツアーの賞金女王となった日本女子ゴルフのレジェンド・岡本綾子が、読者からの質問に対して自身の経験をもとに答えていく。

TEXT/M.Matsumoto

前回のお話はこちら


最近、「ツアーティー」というティーが流行っているみたいです。プロにも好みがあるようですが、ティーによってショットに違いは出るのでしょうか。また、プロはティーが折れたり、飛んで見失ったりすることはないのでしょうか?(匿名希望・39歳)


これまで、どのくらいのティーを地面に刺し込んできたのかしら(笑)?

見当もつきませんが、さまざまなティーが出回っているなか、わたしはいつもだいたい同じティーを使っているのかなと思います。

この機会にティーの歴史を考えてみようと、わかる範囲でいろいろ調べてみました。

間違っている部分もあるかもしれませんが、そのあたりご了承くださいませ(笑)。

ティーが登場したのは19世紀末になってからのことだったらしいですね。

それ以前は、かつてのラグビーのように砂や土を集めてボールを乗せる台を作っていたそうです。

知っている方もいるかと思いますが、イギリスのローラ・デービース選手はいつも砂を盛り上げた自家製ティーアップをしていたのを思い出します。


1889年にスコットランドで「改良型ティー台座」が特許申請された記録が残っているそうで、筒の上にボールを乗せる仕組みだったみたいです。

いまのような地面に刺すクギ型の頭にボールを乗せる皿が付いたティーが現れたのは、1921年にアメリカのニューヨークで発売されたセルロイド製が最初だったそうです。

それから100年、世の中で販売されたティーの種類は星の数ほどあります。材質は木製、プラスチックやポリマーなどを含む合成樹脂かゴム製で、クギ型(ペグ)、地面に置く台状のタイプ、また本体と台座が分離するものなどデザインも多種多様。

もっとも一般的なのは、木製の台座のヘッドがお皿のような形に加工されたものでしょう。

「プロはティーが折れたり、飛んで見失ったり」しないのだろう推察の質問がありましたが、そんなことはありませんよ。

プロでもティーを打って折ってしまうことはあるし、大きく飛んでいってしまうこともよくあります。

ただ、打った後のティーが飛ぶ方向に関して、ナイスショットだから必ずこっちへ飛ぶ、ミスするとこっち方向へ飛ぶという法則はないのではないでしょうか。

ティーイングエリアの地面が固く締まっている場合は、後方に飛ぶことが多い印象はあります。

わたしがアメリカでプレーするようになった1980年当時のこと。

プラスチック製で軸の途中で太さが変わり段になっているティーがありますよね。

たまたま、それを使ったところを見ていたアメリカのプレーヤーから「ニホンジンは賢いわねー」と笑われたことがありました。

深く刺したり浅く刺したり、ティーの高さを調節しやすいように2段になっている。

彼女は、その細かな工夫やプラスチック製だったことを、いかにも日本人的なものと揶揄したかったのか……。

プラスチックのティーは確かに、拾わないと芝刈り機に巻き込まれて刃先を傷つけたり故障させる可能性があるし、パーシモン時代はヘッドにキズをつける恐れもありました。

だからプロは敬遠したんだと思います。

台座にボールを乗せるモノ、剣山のようなもので支えてリフトアップするモノ、ブラシで支えるモノとアイデアは数々あれど、打った時の抵抗はそこまで変わらないのでは、というのがわたしの正直な意見です。

ツアープロの多くが使っているツアーティーが飛距離が伸びると評判だそうですが、ティーの違いで飛距離が伸びるなんてことはそこまではないとわたしは思います。

でも、いつの時代も「あのティー飛ぶわよ」とかいう話は、どんなプロでも必ずしていますし、当時の私もしていましたっけ(笑)。

ティーを替えるだけで飛距離が伸びるなら、使わないという選択肢はありませんものね!

週刊ゴルフダイジェスト2025年1月21日号より

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