【ゴルフせんとや生まれけむ】阿波野秀幸<前編>「コースの芝は茶色が普通だと思っていました」
ゴルフをこよなく愛する著名人に、ゴルフとの出合いや現在のゴルフライフについて語ってもらうリレー連載「ゴルフせんとや生まれけむ」。今回の語り手は、元プロ野球選手の阿波野秀幸氏。
プロ野球選手はたいてい入団1年目のオフにクラブを握ります。僕もそうでしたが、オフには球団や選
手会主催のコンペがあるからです。球団が主催するコンペは選手にとって参加必須の行事。故障などがなく体が元気だったら、基本的には出なくてはいけなかったんですよ。ですから僕もゴルフ年数だけはかなり長いんですけど、人様に誇れるほどうまくはありません。
ベストスコアだって83だし、ゴルフダイジェストさんに書いてもらえるような腕前じゃないんですよ(笑)。ただ、ちょっと自慢できることがあるとすれば、初ラウンドのスコアが108だったということですかね。自分では何もわからなかった時だからそんなもんだろうと思っていたんですけど、後で周りの人から「普通、初めてなら130とか140とか叩くもんだよ。108はすごい」って言われて、なんなら「天才」みたいに言われて……。「もしかしたらゴルフの才能があるのかな」と思ったぐらい。しかし、そこから泥沼の時代が始まって、3歩進んで2歩下がるみたいな感じで今日まで来ちゃいましたね。
現役時代はそういう感じで、シーズンオフだけコンペとか、あと仲間で行ったりとかっていうのが続くわけですね。プレー期間はだいたい11月の半ばくらいから1月までの寒い時。芝がすっかり枯れちゃっている時期で、ゴルフ場はそれが普通だと思っていました。
それが入団5年目くらいでしたかね、1年目から毎年出場していたオールスター戦に初めて出ないっていう年があったんですよ。それで、せっかく時間があるからゴルフに行こうということになったんです。ゴルフ場に行ったら、フェアウェイが青々とした緑の芝生じゃないですか。最初に目にした時、思わずワーッて叫んじゃいましたね、あまりに見事で美しくて。あと、それまではいつも冬の重装備でしたから、ゴルフがポロシャツ1枚でできるスポーツなんだということもその時、知りました(笑)。楽しかったですね。いいもんですよね、あの景色は。
僕は現役、コーチを通じて近鉄、巨人、横浜、中日といくつかの球団でお世話になりました。どこの球団でも選手もコーチもだいたいゴルフ好きでしたが、ゴルフ文化というのかな、それは各々の球団で違っていましたね。やっぱり巨人は人気チームだけに、あちこちからラウンドのお誘いの声がかかるんですよ。オフともなると、こんなにもゴルフするんだってビックリしたくらい毎日のようにゴルフの予定が入るんです。
さらに、球団主催のコンペともなるといろいろとスポンサー関係やゲストの方も来るじゃないですか。普段から応援してくださる方と一緒に回るんだから失礼があっちゃいけない、選手もきちんとしないといけないということで、シーズン終盤になってくると特に若手の選手を中心に、ゴルフのルールやマナーだけでなく、言葉遣いとか態度、服装とかのレクチャーもありました。今でもやっているかどうかはわかりませんけど、そんなことまでやるんだと感心させられたことを覚えていますね。
阿波野 秀幸
1964年生まれ。亜細亜大学からドラフト1位で近鉄に入団。1年目から15勝を挙げ新人王を獲得。「トレンディエース」と呼ばれ人気者に。球史に残る川崎球場の「10・19」(1988年)ダブルヘッダーで連投していることでも知られる。巨人、横浜で活躍後はコーチを歴任。現在は野球評論家。ベストスコア83
週刊ゴルフダイジェスト2024年11月19日号より