【ゴルフはつづくよどこまでも】Vol.195「持ち球の勘違い」
高松志門の一番弟子として、感性を重んじるゴルフで長く活躍を続ける奥田靖己。今週もゴルフの奥深い世界へと足を踏み入れていく。
PHOTO/Masaaki Nishimoto
たとえば右サイドが池で、ピンが右ギリギリに切ってあったとします。通常考えたら、グリーンの左を狙ってセンターに乗せるのが当たり前の攻め方です。
まあフェード系が得意なら真ん中を狙ってピンの左に止めるいう攻め方もするでしょう。フック系の人の場合は、右ピンでも風が左からやったら寄る可能性はあるけど、基本的にはフック系が持ち球やという人は右のピンは難しいです。右のピンで右の風やったら、フックではよっぽどやないとプレッシャーのかかるような場面では狙えんのです。
それでも世界のトップは狙ってくるんやろうけどね。アメリカはおかしいくらいピンを振ってきよるから。学生の試合でもえげつないところにピンを切るから、慣れとるいうこともあるんでしょう。
ところで、みなさん簡単に「持ち球」って言いますけど、僕はあまり好きやないです。たとえばフックが持ち球なら、そのフックを1ピンずつ打てるんか、いう話なんですよ。
打てん人は先ほど言ったように右ピンは怖いんです。右ピンだけじゃなしに、左ピンもコントロールされないフックが出るから怖い。だからそれは持ち球やなしに、「なってしまう球」なんです。
持ち球いうんは、自分が打てる球のことを言う。そこはえらい勘違いです。
多くの場合、自然に振るとアウトインでカット打ちになるのでフェードになる。それは意図して打っているフェードじゃなしに、なってしまっているフェードなんやなということです。
フックも、あおりスウィングで球がすっぽ抜けるんが怖いから、無意識に左に引っかけているということが多い球です。
じゃあ、持ち球を持っているプロは池絡みのホールは怖くないんかと言われると、僕なんかはピート・ダイのコースは嫌いやったからね。プロの試合で、210ヤード先のピンが5ヤード手前は池。というとこに切られていて、そこを狙っていかんといけない。そらなかなか大変ですよ。ちょっと当たりが薄かったらチャポンやからね。
まあ、アマチュアの人が池を前にして緊張するのはわからんでもないです。ゴルフは「行ってはいけない」と強く思うと、なぜかそこへ行ってしまう。コレはプロも同じです。
「自分が打てる球と、なってしまう球は大違いですよ」
奥田靖己
おくだせいき。1960年、大阪生まれ。93年日本オープンなど6勝。シニアで2勝。ゴルフの侘び寂び、温故知新を追求する
週刊ゴルフダイジェスト2024年10月1日号より