質より量。でも“量”も大切です
TEXT/SHOTANOW
メジャーチャンプ・渋野日向子を育てた青木翔が“コーチング”のこだわりを語る連載「笑顔のレシピ」。ゴルフだけでなく、仕事や育児などでも役立つヒントが満載!
最近は計測機器が一般化したことで、ジュニアでも早い段階から数値を使ってスウィングの分析などがされているようです。昔は球を打ちながら手探りで答えを探していたものが、動画と数値でやるべきことが明確にわかるため、効率的に練習できるようになったのです。それにより上達するまでにかかる時間が短くなっていて、ゴルフを始めてからわりと早い段階で、スウィングが完成されている子が結構いるなという印象があります。
もちろん、それ自体は悪いことではありません。でも、時間をかけなかったことで、得られていないことがあります。それは「自信」です。
自分に自信が持てないと、プレッシャーがかかる場面で、「これだけやったんだから」と思えず、力を発揮しきれないということが起こります。試合では信じられるのは自分だけですが、強い気持ちがなければ、身につけた技術力を発揮することができなくなってしまうのです。
僕がまだ20代前半の選手だったころには、1日1000球打ったり、立てなくなるまでスクワットをやったりしていました。
これは基礎を身につけたり、体力の向上という目的もありましたが、「自信になるものが欲しい」、「自分を変えたい」という狙いもありました。練習後は体が動かなくなって翌日も使い物になりませんが、「あれだけやったんだから」という自信は持てるようになります。
今はさすがにそこまではしませんが、僕のコーチングでは練習の“量”も大切にしています。あえて時間をかけることで、強い気持ちを育てるのです。非科学的と思われるかもしれないけれど、結局は多くの球を打つことができなければ、長時間練習をする体力もつかず、グッとアクセルを踏んで取り組むべきタイミングでやりきれないという問題も起こります。
「球をたくさん打って身につける」というのは今の時代には古めかしく泥臭くも思えますが、気持ちの面でも、体力の面でもとっても大事なことなのです。
青木翔
あおきしょう。1983年生まれ。福岡県出身。渋野日向子をメジャーチャンプに導き、三ヶ島かななどツアープロや、全国トップレベルのジュニアゴルファーの育成に努めている
週刊ゴルフダイジェスト2021年4月6日号より
青木翔の著書『打ち方は教えない。』好評発売中!