【ゴルフせんとや生まれけむ】長谷川滋利<前編>「MLBでは昼間ラウンドして夜登板というのもよくありました」
ゴルフをこよなく愛する著名人に、ゴルフとの出合いや現在のゴルフライフについて語ってもらうリレー連載「ゴルフせんとや生まれけむ」。今回の語り手は、元プロ野球選手の長谷川滋利氏。
ゴルフを始めたのはプロ野球に入ってから。というよりプロ野球選手はゴルフをやらなきゃいけないと思っていた(笑)。だからすぐ道具を買って練習もせずコースに出て160幾つか叩いてね。でも、すぐにハマりましたよ。ハマった理由は、難しいからですよ。ボクに限らずプロ野球に入るような人は運動神経がいいから、何でもだいたいは上手くこなせる。ボク自身、テニスもバスケもそこそこできた。ゴルフはそれができなかったんです。そんななかでも何発かは目の覚めるようないい球が打てて。それには感動したんだけど、それとスコアの差があまりにも大きかった。何発かはプロゴルファーみたいなすごくいい球が打てるのに、スコアは160。何じゃこりゃ、とムキになってハマりましたね(笑)。
ゴルフは難しいから面白い。それ本当なんです。野球はね、何回かに1回は完璧に抑えられる。とくにリリーフをやっていると、あのバッターはこうやってここを突いたらきっと空振りするぞと、頭の中で描いた通りの投球をして完璧に抑えられることがある。ゴルフにはそれがないんです。プロのトーナメントだって、優勝したプロでもミスをしている。そのミスがたまたま致命傷にならなかっただけで、たとえハーフでもミスをしないで完璧に回ろうとしたら、9ホールはめっちゃ長いですよ。そういうところに惹かれました。
それでも日本のプロ野球界にいたときは、オフの3カ月間しかクラブを握れなかった。ボクが住んでいた神戸はゴルフ場まで近いので、半日でラウンドできた。といっても一緒に回る相手が見つからなかったのでコースに出るのは週に1〜2回。だからスコアも80前後で、好きだけど、そんなに毎日はやらなかったですね。キャンプ中も休みの日はゴルフをした記憶がありますよ。特に当時、オリックスはキャンプ地が沖縄だったから、休みになるとゴルフ。でも、それほど一生懸命じゃなかったんですよ。本格的に始めたのはやはりMLBに入って渡米してからです。
MLBはシーズン中もラウンドOK。遠征先にもチャーター便にキャディバッグを持ち込んでいたからね。キャディバッグ持ち込みOKといったら、遠征先でもどうぞ、ってことでしょう。野手は難しいけど、先発や中継ぎは、昼間ラウンドして、夜、登板するなんてしょっちゅうだった。その代わり、打たれたら悪いので、ゴルフをした夜は逆に力が出たよね(笑)。
アメリカのゴルフ場は1人でも受け付けてくれるし、いいコースだと2時間で回れる。それから昼寝して球場入りする。デーゲーム明けのナイトゲームの日はもちろん、デーゲームの日も夕方4時に試合が終わってから十分ラウンドできました。アメリカの夏時間は暮れるのが遅くて、シアトルは午後10時ごろまで明るいしね。で、MLBを引退してからは、あちこちの大会に参加してゴルフを楽しみ、そこで何度か優勝したら「シゲ、お前はもうチャンピオンズツアーに行け」って。自分でもそろそろかなって思っていたからプロ宣言をして、2019年からプロゴルファーとして活動中です。
長谷川滋利
はせがわしげとし。1968年生まれ。元プロ野球投手。1990年からオリックスブルーウェーブで活躍したのち、MLBのアナハイムエンゼルス、シアトルマリナーズで主にリリーフとして活躍。2019年からは米国でプロゴルファーとして活動を開始。現在は野球解説者のほかYouTubeで「長谷川滋利ゴルフチャンネル」配信中
週刊ゴルフダイジェスト2024年5月28日号より