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【岡本綾子 ゴルフの、ほんとう】Vol.813「良いところを真似たいと思う気持ちはアナタを成長させると思います」

KEYWORD 岡本綾子

米国人以外で初めて米女子ツアーの賞金女王となった日本女子ゴルフのレジェンド・岡本綾子が、読者からの質問に対して自身の経験をもとに答えていく。

TEXT/M.Matsumoto

前回のお話はこちら


タイガーやマキロイと同じように振っているつもりでも、ビデオを見ると全く似ていません(笑)。私は本気なのですが、どうして動きを似せられないのでしょうか。真似をするのはそもそも良いことなのでしょうか?(匿名希望HC15・47歳) 


真似るということは、ゴルフなどスポーツに限らず芸能の分野でも古くからあるものですよね。

そこにいるはずのないその人が、いかにもその場にいるようにその人らしく見える動きをして見せるには、特別な才能が必要になるとわたしは思います。

真似をするには、まずその人の特徴をつかみ抽出する観察力が必要ですよ。

次に、そのポイントを分かりやすく伝えるために表現力が必要になり、最後にそれを実行する体をコントロールする運動神経が求められると思います。

自分ではタイガー・ウッズになったつもり、ローリー・マキロイそっくりのスウィングをしたつもりなのに、実際は似ても似つかない体の動きになっている……。

自分の体を思い描いた通りには動かせない、体の隅々まで完全にコントロールできない……。

そのようなことは、誰しも経験するよくある話だと思います。

すべてイメージしたその通りに自分の体が動かせたら、みんなすぐにゴルフの達人になれるはずですからね(笑)。

ですが、たまにプロゴルファーで他の選手のスウィングの真似が得意な人がいます。


たぶん、その人はクラブの動きや体の使い方をコントロールできる能力があるということなのかもしれません。

それが正しいスウィングかどうは別として、真似をすること自体はけっして悪いことではありません。

笹生優花選手は、以前インタビューでマキロイ選手のスウィングを目標にスウィング作りをしてきたと語っていました。

確かに彼女のスウィングはマキロイ選手のフォームに似ていて、海外のテレビで紹介されたこともありました。

彼女はマキロイ選手の真似をするなかで、真似をするために必要な体作りから始まり、体の各部の筋肉がどう動いているかを分解して学び、リズム&テンポを取り入れたうえでボールを打つという練習を繰り返してきたのでしょう。

その結果、マキロイを参考にすることによって自分のスウィングを形成してきたのだと思います。

真似がキッカケでもいいんです。

しっかりレベルアップできれば、真似が上達の手段になることもあるということです。

笹生選手の場合、「上手くなりたい」「カッコいいマキロイの真似をしたい」という憧れの気持ちがスタートだったのではないかしら。

ただ、スウィングやルーティン、仕草や物腰の真似はできても『飛距離を真似ることはできません』。

動きはコピーできたとしても、体格や筋力には格差があるのですから、フォームが似ているからといって同じ距離が出るわけではありません。

もちろん、コース攻略法が理解できていなければスコアが良くなる保証もありませんよね。

真似をしながら、ゴルフの本質を自分のものとしてつかんでいくこと。

それが重要なのです。

わたしはゴルフを始めた当初から、誰かこの人の真似をしたいと思ったことはありませんでした。

しかし、上手い人のプレーを見て「この部分はいいな。スウィングのここが好きだな」と気の付いたところを自分の動きに取り入れるなどしながら練習をしてきました。

それが、わたしなりの真似だったのかもしれませんね。

考えてみれば、言葉の学習も子どもが親の話すのを真似ることが最初です。

そう考えると、真似はいいところだけを見習いたいものですね。

真似しなくてもいい振る舞いやクセが身に付いてしまうとしたら、悔やんでも悔やみ切れませんからね。

「スウィングは真似できたとしても“飛距離”はなかなか真似できませんね」(PHOTO/Ayako Okamoto)

週刊ゴルフダイジェスト2024年5月21日号より

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