【岡本綾子 ゴルフの、ほんとう】Vol.810「現状を打破したいと思っているなら“悩むな、考えろ!”」
米国人以外で初めて米女子ツアーの賞金女王となった日本女子ゴルフのレジェンド・岡本綾子が、読者からの質問に対して自身の経験をもとに答えていく。
岡本プロは、ゴルフに対する考え方やコース攻略法について、こうでなくちゃならないというこだわりはありますか。また、ゴルフ以外の面でも、普段から何かに強くこだわっている部分があれば教えてください。(匿名希望・51歳)
「こだわり」という言葉を耳にして、みなさんの頭にまず浮かぶのはどんなイメージかしら。
なにか職人的な仕事に対する強い思い入れ、生き方に関するポリシー、信条信念といった心のありようのようなものではないでしょうか。
どちらかといえば、いい意味でその人の意地や生きざまを表している気がします。
こだわるというのは、何かに強く引き付けられ脇目も振らない状態ですよね。
人間は自分のルールを作ってこだわりたがる性質があるからこそ、こだわるという言葉はいい意味で使われていることが多いでしょう。
しかし、こだわる、こだわりがあるといえば、特別なことに深く思いを傾けている状態に理解されますが、実は執着しすぎるあまり一概に良いことだけとは言えないのかもしれません。
だからというわけではありませんが、わたしはどちらかといえば深く「こだわりは持たない」ように意識しています。
少なくとも、こだわる以上は自分の中で何らかのルールを決めているということなので、そのルールから外れたヒトやモノ、コトは除外しなければならなくなります。
ひとつのことに執着して視野を狭め、選択肢を少なくするのはもったいないことです。
ゴルフでも生き方でも、人はもっと自由で柔軟でいるべきだとわたしは思います。
自分で決めたことなのだから従わなくてはならない、そんなことはありません。
約束を守ることとかではなく、些細なことにとらわれすぎているということです。
最初にルールを決め、その内容が間違っていたら、柔軟に考えて変えていけばいいと思うのです。
たとえば、上司や先生、先輩、お世話になった人など、反論しにくい相手から与えられたルールに、自分の考えはなしに知らず知らず従っていることありませんか。
自分が決めたルールではないのに、いつの間にか外から押し付けられた枠からはみ出せないでいるケースはあります。
では、どうすればいいのか。
自分が大切だと信じて譲れないと思っている決め事が、本当に理にかなっていて重要なものなのかどうか。
それが重要だと客観的に確認できれば、そのルールは単なるこだわりではなく、全身全霊を懸けて貫き通すべき信念でありポリシーです。
それはあなたが無視できないほど大きなものであって、本気で向き合うべき何かだと思います。
こだわる対象は、常に些細なもので、小さくて取るに足らないものです。
ですから、あなたはもっと大きく、大切なものを信じて努力を重ねていってほしいと思います。
ただ、最近の若い選手たちを眺めていて思うのですが、彼女たちはちょっと何事にもこだわりがなさ過ぎて、そのせいか目移りが多く早過ぎて、練習やトレーニングのやり方に一貫性に欠けるようにも感じることがあります。
それは目先の流行りのスウィング理論だけを追いかける本人、もしくは教える側にも言えることでではないでしょうか。
本質はなにか。
自問自答して自分で考えて答えを出し、それが間違っていたらまた考えて実行すればいいと思いますよ。
「頭を巡らせ行動に移すことが自分を進化させる唯一の方法です」
週刊ゴルフダイジェスト2024年4月23日号より
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